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契約逆転 オーガと魔物使いの主従生活  作者: 山田二郎


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第二十六章 装備の見直し

よろしくお願いします

地上への道すがら、俺たちは今後について話し合った。


「ダンジョンって、思ったより広いですね……迷いそうです。地図があった方がいいかもしれません」


マリーがそう切り出した。俺も同感だった。あの入り組んだ二階の様子を思えば、闇雲に進むのは得策ではない。


(それと、お前に合った武器も必要だ)


俺がそう伝えると、マリーは少し困ったような顔をした。剣がうまく扱えなかったことを、まだ気にしているらしい。しかし、雑魚相手に、いちいち魔法を使うのは正直勿体ない。深い階層に潜れば潜るほど、魔力を温存しておく必要も出てくるだろう。もし奥地で魔力が切れれば、それこそ命取りになりかねない。


(組合で、ダンジョンの攻略法についても詳しく調べておいた方がいい)


そう伝えると、マリーは神妙な顔で頷いた。


地上に出ると、太陽はまだ高い位置にあった。昼を幾分か過ぎた頃合いだろうか。まずは出張所に立ち寄り、集めた魔石を換金した。だが、低階層の小さな魔石数個では、入場時に支払った料金にすら届かない額だった。


「まあ、最初はこんなもんよ」


受付にいた恰幅のいいおばさんが、慣れた様子でそう言った。


「あの臭いとモンスターの見た目が嫌で、二度と来ない冒険者もいるくらいだからね。あんたたちも、無理はしないでね」


「あの……地図って、売ってたりしますか?」


マリーがそう尋ねると、おばさんは少し考えるように顎に手を当てた。


「地図ね……ここでは扱ってないけど、街の方にある組合の本部なら、十階層までのが売られてるはずよ。多少値は張るけどね」


礼を言って出張所を出ると、俺たちはその足で街の中にある武器屋へと向かった。


武器屋に入り店内を見回していると、「いらっしゃい、初めて見る顔だね」と、三十歳くらいの女店主が出迎えた。日に焼けた肌に引き締まった体つき、髪は無造作に一つに束ねられている。壁に並んだ武器の手入れ具合からして、腕は確かなのだろう。


「あんたら何がいるんだい?」


女店主に聞かれ、マリーはダンジョンに潜ること、メインは魔法を使うこと、低い階層では魔力を節約したいことを説明した。女店主はしばし考え込んだ。


「うーん。バックラーがあるなら片手は塞がるね」


店の奥から次々と片手武器が出てくる。メイス、ショートスピア、片手剣、ウォーハンマー、フレイル、ムチ――手渡されるそれを、マリーは戸惑いながらも一つずつ構えて、軽く振ってみせた。


「お嬢ちゃんは武器の扱いはどれもひどいもんだけど、見た目より力があるね」


女店主にそう言われて、マリーは「そうですか?」と首を傾げた。


「そうだね……アタシも少し考えてみるよ。明日また来られるかい?」


マリーは俺の方を振り返り、確認するような目を向けてきた。


(構わない)


念話でそう伝えると、マリーは頷いた。


「分かりました。明日、また来ます」


武器屋を出た後、俺たちは組合の本部へと向かい、地図を購入することにした。地図は一階層ごとに価格が設定されており、最大で十階層分まで買えるという。ただし、転売は禁止。五階層以上の地図は、実際に六階層に到達したことがある者にしか売らない決まりになっているらしい。俺たちはひとまず、五階層分までの地図を購入して、宿へと戻った。


その夜、部屋で今後の方針を話し合った。


(次は六階層を目指す)


念話でそう伝えると、マリーは頷いた。ダンジョン内では水や食料が手に入らない。荷はケリュネに多めに背負わせることにした。戦闘は基本的に俺とマリーが受け持ち、ケリュネには荷運びに専念させる。


六階層に到達するか、あるいは水や食料が半分ほどに減ったところで、地上へと引き返す。どこまで進むかは、その都度出会う敵の強さで判断していくことにした。


――


翌日、この日は一日、ダンジョン攻略の準備にあてることにした。市場で水と食料を買い込み、その後に昨日の武器屋へ向かった。


「いらっしゃい。あぁ、昨日のお嬢ちゃん待ってたよ」


女店主はそう言って棚からシンプルなメイスを取り出した。長さは約八十センチ、重さ三キロほどで、柄は赤く、先端に丸い鉄球の付いたものだった。


「色々考えたんだけどね、サブの武器で身を守るためならこれがベストだと思うよ」


「攻撃時に刃を立てなくて良いしバックラーとの相性も良い。お嬢ちゃんの力を生かすならこれがベストだと思うよ」


マリーは何とも言えない表情でメイスを見つめた後、女店主に「ありがとうございます」とお礼を言った。


「それで、もし良ければ簡単に使い方を教えてあげるけど、これから時間はある?」


俺はマリーに、


(教えてもらえ)


と念話で伝え、マリーは女店主に頷いた。


俺たちはそのまま武器屋の奥に通された。建物の裏に庭があり、端の方に洗濯物が干されている。


「よし、ここでやろうか。まずそのメイスについて説明するよ。柄は隣の領地で取れた軽くて丈夫な赤木を使ってる。汗をかいても滑らないように加工もしてるよ。先端は、まぁ見ての通り丸い鉄球だ」


「メイスの利点は刃が無いことさ。刃が無いから刃毀れの心配はないし、メンテナンスもほとんど必要無い。刃を立てなくても良いから、とにかく当てる事だけ考えればいい。上げて振り下ろす。ただそれだけだから難しい事は何も無いよ」


女店主は武器が好きなのだろうか、途切れなくメイスの説明をしていく。


「さぁお嬢ちゃん、メイスの振り方を教えるよ。慣れるまでは、基本は振り下ろしで攻撃しな。剣みたいに下から上に振り上げたり突いたりではあまり威力が出ないよ。柄の部分を当ててもダメージは少ないから、とにかく先端の鉄球を振り回して当てるイメージを意識して。途中で止めず最後まで振り抜くんだよ」


マリーは真剣な表情で話を聞きながら頷いた。


しばらく時間がかかりそうなので、俺とケリュネは宿に戻る事にした。ケリュネとは意思の疎通は取れないが、何とかなるだろう。帰り道の露店で、美味そうな匂いのする串焼きをいくつか買う。その途中の店の前で、ケリュネが止まった。首筋を軽く引いて促しても、一点を見つめたまま動かない。視線の先を見ると、乾燥させた果物を売る店だった。ソードエルクの迫力に、店主の婆さんが怯えた表情でこちらを見ている。俺は店先の果物らしき物をいくつか指差し、購入した。量の割に安いそれを婆さんから受け取ると、ケリュネは再び宿屋の方へ歩き出した。


宿屋でケリュネに乾燥させた果物を与え、俺も串焼きを食べる。迷路の地図を覚えながら部屋で過ごす。マリーが帰って来たのは夕方頃だった。明日の準備を終わらせて、その日は早めに眠った。

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