第53話 2人
「もうダメだわ。あの高校生たち、真相に気づき始めている。私たちのことも大分わかってるみたい」
「なに弱気になってるの。私たちが喋らなきゃ大丈夫」
「でも、質問がどんどん確信をついてくる」
「今どうなってんの?」
「事件当日までのことはバレている。恐喝したことも、日記を改ざんしたことも」
「あなたまさか喋ったの?」
「違う。恐喝写真とかが出てきたの」
「どこから?」
「写真部からだって」
「あんた処分してなかったの?」
「ごめん」
「ちっ。そこまで?」
「私が愛美と会ったのを見た人がいたみたい」
「その時私のことは?」
「まだ知られていない」
「では黙りなさい。あなただって家庭を壊したくないでしょ」
「もちろん。私は今までだって喋っていない」
「あれは自殺よ。屋上は鍵が閉まっていた。それは警察だって認めている。大丈夫。15年近くも経っているし、相手は高校生。国家権力は使えない」
「そうね。あの日は、田所も金沢もいなかった。仮に誰かとすれ違ったとしても私たちだとはわからない。私たちだってすれ違ったかもしれない人たちを覚えていない」
「そう。喋らなければ、向こうもわからない。証拠もない」
「憎むべきは愛美の娘ね」
「あいつのせいでこんなことに」
「みなさん捜査は大詰めですね」と僕が言う。
「ふむ。後は当日なにがあったのかだな」と推川さん。
「それでこれからどうすんのさ」と電灯さん。
「それがなにから手をつければいいのか。藤原に会うぐらいかな」
「とりあえず、恐喝と改ざんを突きつけるの?」と見上さん。
「それぐらいしかない。他は証拠も無いし、目撃情報もない」
4人はう~んと考え込んだ。
「あの、渡辺さんと最初に会った時のこと覚えています?」と我妻さん。
「ああ、みんなで渡辺の家に行きましたね。それが?」
「その時、補習を受けてて、そこで母と友達2人を見たと言っていましたが」
4人はそれぞれ顔を見合わせる。
「渡辺に聞きに行きましょう」
「はい」と我妻さん。
「我妻さんはダメだ。まだあいつはとてもじゃないが信用をおけない。進倉行くぞ」
「はい。渡辺の家に行きましょう」
「進倉。今は親が渡辺の行動を制限してるだろう。だから行くのは実家だ」
こうして2人で再び渡辺の元に向かった。
実家につくとチャイムを鳴らす。
渡辺の父親が出てきた。
「僕たち○○高校のものですが……」
「うちの息子がすいませんでした」と謝る父親
「あの、じつは1つ聞きたいことがありまして」
「そうですか。どうぞ上がって下さい」
僕と推川さんが家に上がる。
父親がノックをして「お客さんだ」と言う。
中から渡辺がドアを開けた。
僕らを見て驚いている。
「実は1つ聞きたいことがあって」
「なに……なんでしょう」
「事件当日、補習を受けている時に愛美さんと友達2人を見たと言っていましたが、そこのところを詳しくお願いします」
「ああ。友達ってのは、細川と、藤原って名前だったかな。写真部の部室にいた。その後屋上にもいた」
僕と推川さんは目を合わせた。
「ありがとう」と礼を言って、部屋を出る。
「愛美さんがどうだったか真実がわかるのか?」と渡辺が言う。
「私の名に懸けて事件を解決してみせます」と推川さん。
2人で父親に礼を言い、家を出た。
やはり愛美さんの死に、2人は深く関わっている。




