第34話 小早川の話
小早川さんは僕たちを家に入れてくれた。
そして好きなようにくつろいでくれと言った。
視線は我妻さんをジッと見つめたままだ。
「まずはずばり聞きます。あなたは向日葵さんの父親ですか?」と推川さんがいきなり本題を聞く。
小早川さんはしばらく黙った後に「そうだ。ただ、父親を名乗る資格はない」
「どういう意味ですか?」
「確かに向日葵は私と愛美の娘だ。しかし、私は父親としての役目を放棄している。よって父親とは、とてもじゃないが呼べない」
「肝心なのは血のつながりがあるかどうかです。それでなんで放棄したんですか?」
「若かったんだよ。当時私は愛美が妊娠した時に、産むのを反対した。しかし愛美は1人ででも育てるという。私はそれは無理だと言った。16歳の女の子が、援助もなしに子供を育てられるわけがないと」
「あなたは援助しなかったんですか」
「私は産むのを諦めたと思っていたんだ。愛美が学校に来なくなったのは降ろしたショックだろうと思った。何度も連絡したが、降ろしたと言っていた」
「信じたんですか」
「ああ。さっきも言ったが16歳で育てられる訳がないと。本人も降ろしたと言っているんだ。信じたに決まっているだろ」
「それで?」
「愛美が来なくなったんで、私は気晴らしをしてしまった」
「今度は田所さんに手を出したと」
「そうだな」
「それでどうなったんです」
「田所たちが3年になった時に、突然愛美が学校に来た。そして私に言ったんだ。今、娘を育てていると」
「あなたはどうしたんですか?」
「怒ってしまった。何故産んだ?何故嘘を付いた?何故隠した?とね」
「それから?」
「愛美は私には迷惑はかけないと言って飛び出した。それから数時間後だ。愛美が飛び降りたのは」
「それではあなたのせいじゃないですか」
「私はショックで気が狂いそうになった。それから家に閉じこもり、教師を辞めた」
「警察は来たのですよね?」
「警察は当然私のもとに来た。事情を話した。法律上は無罪だ。だが愛美を死なせたのは私だ」
みんな黙り込んでしまった。
我妻さんはショックでうつむいたままだ。
「向日葵さんを引き取らなかったんですか?」と僕が言う。
「気力がなかった。全てに」
「最低だ」と僕が言う。
「ああ。最低だよ。何度死のうと思ったことか」
僕は小早川を殴ってやろうかと思って拳を握りしめた。
我妻さんが僕の手を抑える。
我妻さんは今にも泣きだしそうだった。
依頼は最悪の形で終わろうとしていた。
これで事件は解決したのだろうか。




