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第3話 田所さん

「ところで全員で行くんですか?」と僕は聞いた。


「なにか問題でも」と推川さん。


「いきなり5人で押しかけられても向こうも困るでしょう」と僕が言う。


「何、気にするな。全ては調査の為だ」推川さんがそう言って、早く行くぞという素振りを見せる。


歩きながら「そういえば15年近く経ってるから、引っ越ししてるとかないですかね」と僕が言うと、


「引っ越ししてないよ」と電灯さん。


すでに確認済みであった。


途中見上さんが「今すれ違ったサラリーマン。左袖のボタンが1つ無い」とか、


「今の主婦、スカートの後ろに醤油か何かの染みがある」など言ってきた。


「そういうことは、いちいち報告しなくていいですよ」と僕が言うと、見上さんは不満そうな顔になった。


20分ほど歩いただろうか。


田所さんの家に着いた。


一軒家である。


庭はないが、2階建てのよくある家といった感じだ。


玄関の前に強引に自転車が1台収めてある。


僕がチャイムを押そうか迷っていると「進倉何やってんだ」と推川さんがチャイムを押す。


しばらくすると30代前半くらいの女性がドアから顔を出した。


肩までの黒い髪とやさしそうな人だなと僕は思った。


僕ら5人を見て「あの……なんでしょうか?」と聞いてくる。


いきなり制服姿の高校生5人が家にきたのである。


不思議がるのも無理はない。


その女性は、我妻さんを見ている。


それに気づき我妻さんが「突然押しかけてすいません。私は我妻向日葵と申します」


「えっ」と言って女性は驚く。


「田所さん。昔同級生だった、我妻愛美の娘です」


「ああ、やっぱり。面影(おもかげ)がある」そう言った後に僕ら4人を見る。


「この人達はミステリー研究会の人たちです。私が調査を依頼しました」


「ミステリー?依頼?」


「はい。母のことを教えて下さい」と我妻さんが頭を下げる。


田所さんは「中に入って話しましょう」と言って、僕らを家に上げてくれた。


「私の部屋でいいかな?」と田所さん。


「はい。ありがとうございます」と我妻さん。


部屋に入り、麦茶をいただいた。


部屋はわりかしシンプルである。


テーブル、洋服ダンスに本棚があるが、ベッドはない。


全体的に女性の部屋という感じがしない。


かわいらしいものや、明るい色合いのものがないからであろう。


僕が部屋を見ていると、田所さんが喋り出した。


「まずは、どうやって私のことわかったの?」」


「僕がね。あなたの昔の呟きサイトを見つけたんだよ」と電灯さん。


「ああ。昔やってた。それで特定したの?」


「公開されてる情報を辿っただけだよ」と電灯さん。


「すごいのね。それで何を聞きたいの?」と我妻さんを見る。


「母について知っていることを全部」


「う~ん。愛美はどっちかというと美人だったね。そして何処かぽわんとしていた」


「そうなんですか」


「私は彼女と仲が良かったけど、あんなことをするなんて気づけなかった」


「あんなことは、身投げですか」


「そう。それと妊娠」


我妻さんがだまってしまう。


「でも妊娠に関しては今から思うと思い当たるな。1年の3学期は、ちょくちょく気持ち悪いって言ってたもん」


「その頃には私を妊娠していたんですね」


「そうだね。そして2年になったら学校に来なくなった。何度か家にいったんだけど、会ってくれなくなった。そして3年の時に突然学校に来たらしく……」


「そこで身投げをした」


「そうね。だから1年の時しか知らないの」


「私、父親が誰か知らないんです。心当たりはありますか?」


田所さんはちょっと驚いた後考え込んだ。


「愛美に彼氏がいたって話は聞いたことがない。でも美人だしもててただろうからね。いいよって来る人は何人もいたんじゃないかな」


そう言った後、我妻さんを見て「ごめんなさい。その……」


「いいんです。父のことは誰だっていいんです。私を捨てた人なんですから、そういう人なんでしょう」


それから2人はだまってしまった。


「あの、他に仲がよかった人っていますか」と僕が聞いた。


「金沢さんと細川さん。当時4人で固まってた」


「金沢さんと細川さんの住所を教えていただけませんか」と僕が聞く。


「う~んこういうのは個人情報で」


「お願いします」と我妻さん。


「でもやっぱり教えるわけには」


「私は母の真相が知りたいんです!」


田所さんは困ったように目を伏せた。


「でも勝手に住所を教えるのは……」


「お願いします」


しばらく沈黙が続いた。


「……わかった。ただし、私が教えたことは内緒にして」


そう言ってメモ用紙に住所を書いた。


「あと、2人とも結婚してるから。」


「ありがとうございます」


こうして田所さんの家を後にした。


今から2人のところへ行くには、時間も遅いので、部室に戻ることになった。


「正直、進展はなしでしたね」と僕が言う。


「いえ、交友関係がわかったので大収穫ですよ」と我妻さん。


電灯さんはさっそくパソコンでいろいろと調べている。


見上さんは田所さんの部屋の印象を語っていた。


推川さんは腕を組みながら考え込んでいる。


「推川さん、何を考えているんですか?」と僕が聞く。


「いや、田所さんのことをね」


「良い人でしたね」


「だが、誰であろうとまずは疑ってかかるべきだな」


「田所さんが怪しいと?」


「まあ可能性の話だよ」そう言って再び腕を組んで考え込んだ。


明日は金沢さんか細川さんの家に行ってみよう。


進展があるといいなと僕は思った。

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