第28話 再び渡辺
翌日の放課後、昨日の細川さんを訪問した時のことを話していた。
見上さんが部室を出ていく。
いつもの確認だろうと思った。
少し経ってから戻って来て「今日は正門だね」と言った。
渡辺の居場所の確認である。
この場合は我妻さんは裏門から出て帰ることになる。
しかし……
「どうだろう諸君。渡辺に会ってみないかね」と推川さん。
「それはいいですけど」と僕が答える。
「ではちょっと渡辺の所に行ってみようじゃないか」
「わかりました」と我妻さん。
「今回は私と進倉で行く。我妻さんを連れて行くわけにはいかないだろう」
「私も行かないの?」と見上さん
「そうだ。やはり女性は危険だ。男2人で行く」
「僕も行かないんだ」と電灯さん。
「うむ。ここで待機していてくれ。例えば何かあったら連絡する。その時は教師などを呼んで欲しい」
「わかった。何かって暴力とか?2人とも……心配だな」と電灯さん。
「何を言う。私は護身術を心得ているじゃないか」
「推川さん本当ですか?」
「ああ。以前電灯にまとめ動画を作ってもらった。世界一有名なベイカー街の探偵のバリツみたいなものが出来ないようでは、一流の探偵とは言えぬ」
「まとめ動画?」
「うむ。そういうのがたくさんあるからな」
「例えばどんな技ですか?」
「進倉は何か勘違いしていないか?護身術は空手とかとは違うんだよ」
「そうなんですか」
「例えば、相手が近づいて来たら逃げる。殴る気配をみせたら逃げる。怪しいと思ったら近づかない。囲まれたりしたら大声で助けを呼ぶ」
「確かに護身術かもしれませんが……」
「一応右ストレートだけは買った」
「買ったとは?」
「技が切り売りで売っているんだよ。一技300円でな。フォーム解説・コツ・実戦例などが解説されている」
「なんか微妙ですね」
「微妙なものか。護身術と右ストレートで対応できる……と思う」
「では、期待してますねー」と棒読みで僕が言う。
「ちなみにコザックダンスなら200回出来るぞ。強靭な足腰の持ち主でもある」
「もういいです」と僕が言う。
「では進倉行くぞ」
「はい」
正門から出て、住宅街のわき道に行く。
そこに渡辺がいた。
「お前らだけか?」
「お前の行動など全てお見通しだからな」と推川さん。
「ちっ!」
「今日はお前と話すために来た」
「こっちは話すことなんてねーよ」
「愛美さんの友達について教えてくれないか?」
「んなもん知らねーよ。愛美しか興味がない」
「では」と言って推川さんは愛美さんのクラスの写真を見せる。
集合写真ではないがクラスのみんなと愛美さんが写っている。
渡辺は写真を見て「愛美……」と呟く。
「この中の誰でもいい。何か知らないか?愛美さんの供養のためだ」
渡辺が目を細めて写真を見る。
「こいつらはよく愛美といたな」と田所さん、金沢さん、細川さんを指す。
「その人たちについてなにかないか?」
「なんにもねーな。俺にとっては邪魔なやつらだった」
「他は?」
「この男は愛美に色目を使っていやがった。ちょっと脅したらびびって二度と色目を使わなくなったけどな」
「他には?」
「この女、愛美に突っかかっていたな」と藤原さんを指した。
「そうなのか?」
「ああ。それに一年の終わり頃にはかなり羽振りが良くなってたな」
「羽振りが良くなった?」
「男にでも貢がせたんだろ。物好きもいたもんだ」
「他には?」
「もうねーよ。それより娘はなんで来ない?」
「もう帰ったよ」
「ちっ!」
そう言うと渡辺は帰っていった。




