第25話 ほんの僅かな進展
「前回と印象が違う?」と金沢さん。
「はい。前回は、何に対してもしっかりしていたと言っていました。しかし今回は何に対しても危なっかしい面があったと逆のことを言っています」
「へえ。よく覚えてたね」
「はい。母のことについてですから」
「それについてはね。どっちも愛美のことだよ。基本は何に対してもしっかりしていた。でもねそれはみんなといる時。1人になると何に対しても危なっかしかった」
「人前とじゃ違うってことですか?」
「そうだね。私はそう感じたよ」
我妻さんは考え込んだ。
「愛美はね、自分のこと人に話さないから、詳しいことはよくわからない」
「そうなんですか」
「こんなところでもういいでしょ。これから家事とかしなきゃいけないし」
「最後に、デンバーって名前に心当たりは?」と僕が聞く。
「デンバー?誰それ?」
どうやら全く知らないようだ。
そこへ金沢さんのスマホが鳴ったので、僕たちは礼を言って出ていった。
外へ出た僕たちは、学校へ向かって歩き出した。
「収穫があったようなないような」と僕が言う。
「友人たちの特徴は聞けましたけど、小早川さんの情報は皆無に等しいですね」と我妻さん。
「最後スマホが鳴ったでしょ。相手は田所さんだったよ。まだ横の繋がりがあるみたいだね」と見上さん。
「えっ、田所さんってわかったんですか。すごい」と僕が言う。
「でも名前だけだよ。内容は当然わかんないから、今日会いに行ったことも、みんなに回ってるのかもしれないね」と見上さん。
「そうなると、今日の話もどこまで信用していいやら」と僕が言う。
「それぞれの話は信じて大丈夫だよ。私が見てる限り嘘を言ってる感じはしなかった。たぶん、根はいい人なんだと思う。ただ……」と見上さん。
「ただ?」
「最後のデンバーはについて聞いた時の反応が気になる。デンバーの名前を聞いた瞬間、一回だけ表情が変わった」
「デンバーのことを知っている?」
「わからない。でも知らない人の名前を聞いた反応じゃなかった。……断言はできないけど、引っかかった」
部室に戻ると、推川さんと電灯さんがいた。
今日の報告を2人にする。
「ふむ。小早川については、進展なしか」と推川さん。
「推川さんはどうでした?」
「君、何の情報も無しで見つかると思っていたのか?」
「では何しに行ったんですか」
「住宅街をぶらりと歩いて、表札を見て回ったり……」
「そんな当てずっぽうな」
「なかなか楽しかったぞ。通りすがりのおじちゃんおばちゃんにも聞いたりしてな」
「それはご苦労様でした」
「電灯さんは?」
「当時の事件のことを書いている生徒のSNSを見て回ってた。特に進展はないね」
「どんな感じでした?」
「みんなびっくりとか、衝撃だ!とか悲しいとかそんなのばかりだな」
これに対して我妻さんは少し複雑な表情をした。
「唯一の収穫は金沢がデンバーのことを知ってそうなことぐらいですか」と僕が言う。
「いや、もう1つある」と推川さん
「なんですか?」
「田所と金沢が、今でも連絡を取っている」
「それがどうしました?」
「普通は、卒業したらそこまで密に繋がらない。特に“あの頃の関係”ならな」




