第21話 愛美グループ
部室はしばらく誰も喋らなくなった。
少し経ってから、僕がその沈黙を破った。
「次は愛美さんたちの話をお願いします」
小杉さんは少し困った顔をした。
そして「愛美さんに関しては話すことがないかな。当時の私は彼女にあたっていたからね。他の人の話ならするよ」
「では田所さんと金沢さんと細川さんについて」と僕が言う。
「話すのはいいけど、その人たちを知って意味あるの?」
「関係者は一応」と僕が言う。
「なら、そうだね。4人はよく一緒にいたね。お昼もトイレも一緒だったと思う」
「いつもですか」
「私は愛美さんが1人になるところを狙っていた。今考えると、愛美さんを1人にしないという意味もあったかも。まあ、私から守る為にね」
「なるほど」
「聞きたいのは1人1人の話でしょ?ではまず田所から。1番愛美さんと仲が良さそうだった。しょっちゅう文字通りべったりくっついていたかな」
「スキンシップってやつですか」
「ただし、私が愛美さんにあたった時は何もしなかった」
「それは意外ですね」
「私にとっては都合がよかったな。後は2年になったころに、小早川と怪しい関係になったってことぐらいかな」
「2人が怪しくなったのはどうしてでしょう」
「そんなの私がわかるわけないじゃん。ともかく、何回か街中で見たってだけだから。見たのは先生と生徒って関係に見えなかったけどね」
「と言うと?」
「そりゃ手を繋いで、歩いてりゃあね。そんな先生と生徒なんていないだろ?」
「まあそうですね」
「次は金沢。私が愛美さんにあたってた時に、たまに言い返してきた」
「そうなんですか」
「後は4人の中では1番地味だったな。他の3人の容姿がよかったからな」
「それについてはノーコメントで」
「ただし4人の中で1番交友関係が広かったんじゃないか。人が良さそうな見た目だからかもね」
「それはなんとなくわかります」
「最後は細川。私が愛美さんにあたってた時に、よく文句を言ってきた」
「細川さんが」
「そういう意味では細川が1番愛美さんのことを気にかけてたんじゃないかな」
「なるほど」
「あとはカメラをよく持ってたな。写真部だとか言ってたのを聞いた気がする」
「ちょっと意外ですね。前見たときは写真とか興味無さそうでした」
「ちなみに小早川のお気に入りの1人」
「お気に入りって……何人いるんですか、その人」と僕が言ったあとしまったと思った。
我妻さんに配慮するべきだったと。
当の我妻さんは下を向いてうつむいている。
「こんなところかな」
「ありがとうございます。他に気になったことはありますか?」
「う~ん……文化祭でね、愛美さんたちのクラスは喫茶店だったんだよ。そこに別の高校の男子生徒たちがお客として来て、意気投合したみたいなんだ。4人は、その男子たちと会うだの会わないだの話してたけど、どうなったんだろ」
「それは初耳ですね」
「電灯」と推川さんが言う。
「あいよ。調べてみる」と電灯さん。
「えっ?そんなのわかるの?」と驚く小杉さん。
「どうだろうね。一応調べるけど、誰かがその時のことをネットにあげてれば、あるいはね」と電灯さん。
「すごいのね。ではあなたは?」と小杉さんが見上さんに聞く。
「私は観察担当。ずっとあなたを見てましたけど、嘘は言っていませんね」と見上さん。
「そりゃそうよ。本当のことしか言っていないもん。でもすごいのね。そしてあなたは?」と小杉さんは推川さんを見る。
「私はありとあらゆるものを考える。動機はもちろん、様々な手口。物理的にも心理的にもね。そして可能性を常に考え、論理的に頭の中で整理する。つまり頭脳担当ですな」
僕は言葉が出なかった。
ツッコむのも馬鹿らしく思った。
小杉さんが僕を見たので「僕は見習いです」と言って誤魔化した。
説明が面倒くさかったし、まあ探偵でもないし。
時計を見るとそろそろ下校時刻になっていた。
僕と我妻さんが小杉さんに頭を下げてお礼を言った。
「また何かあったら、いつでも連絡ちょうだいね」
そう言って僕らは小杉さんと別れたのである。




