第18話 見上さん
「いるね」と見上さんは言った。
「今日もですか」と僕がいう。
見上さんは校門の近くに渡辺がいるのを発見していた。
「我妻さん。今日も裏門から帰った方がいいよ」と見上さん。
「わかりました。そうします」と我妻さんが裏門へ向かう。
「通報します?」と僕が言うと
「無理だな。何も事を起こしていない。ただ散歩をしていただけだと言われたら何も出来ない」と推川さん。
こういう時、見上さんはとても便利だ。
こういう相手を見つけてくれるから。
先んずれば人を制す。
相手よりも先に情報を得れば有利になる。
見上は観察することによって、相手より有利に立ってきた。
例えば、緊張・不安を感じているときには指をいじる、貧乏ゆすりをしたり、まばたきが増えたり、声のトーンや話すスピードが変わったりする。
嘘や隠し事をしているときには、不要な説明が増えたり、顔や鼻や口元を触る回数が増えたり、表情と話の内容が一致しなかったりする。
興味・好意があるときに見られやすいのは、会話中によく目が合ったり、髪や服を整える回数が増えたり、距離を少し縮めようとしたり、相手の話を細かく覚えていたりすることだ。
無論例外や、たまたまとった行動もあるだろうが、これらのサインを見逃さなければ、有利になる。
昔の見上は失敗ばかりだった。
学校で友達を作る時、相手が自分に好意があるのか興味がないのか事前にわかっていれば、友達選びに失敗しなかったであろう。
クジで決まったクラスのリーダーだったが、もしも観察さえできていれば、バラバラにならずまとめあげられたかもしれない。
そして恋愛においても……
観察こそ全て。
見上は年々そう感じるようになってきた。
中学の時ある女子のコンパクトミラーが無くなった。
仲のよい何人かであたりを探したが出てこない。
どうやら盗難にあったようだ。
その生徒は担任に相談した。
担任がホームルームで「誰かコンパクトミラーを見なかったか」と聞く。
みんな知らないという。
みんながその女子生徒を慰める。
昼休み、ある男子が席から離れない。
その女子生徒の近くの席の健太だ。
自分のカバンを握りしめている。
見上はその行動をジッと見ていた。
午後の授業の前に先生が、「放課後持ち物を検査するかもしれない」と言った。
その瞬間健太の表情が一瞬固まった。
見上はそのことを見逃さなかった。
授業が終わると見上は健太にメモを渡す。
「今すぐ、廊下に来なさい」
健太がカバンを持ちながら廊下に来た。
「どうしてこんなことをしたの?」
「なんのこと」
「わかっているのよ。今ここでみんなに言ってもいいのよ」
「それだけは。あいつのこと好きだからつい」
「わかった。悪いようにはしないから出しなさい」
健太からコンパクトミラーを預かる。
そして女子生徒の前に行き「廊下の隅に置いてあったわ。好きな人の前で髪型が崩れたのが恥ずかしくて、つい。ごめんなさい」と書いてあったメモも渡した。
見上はみんなからすごいと言われた。
「どうしてそんなところにあるってわかったの?」
「私なりの推理」
「すごいね。見上さん探偵になれるんじゃない」
「探偵?」
「そう。颯爽登場、女探偵・見上なんてね」
「なにそれ」
大事にならずに事件は解決した。
そしてこの時から探偵を意識するようになった。
観察こそ私の武器なんだ。




