第17話 推川さん
大洗から帰って来たがその後の進展がなかった。
そんな時にふと、僕がミステリー研究会に入部した時のことを思い出した。
高校の入学式、校門付近では激しい部活勧誘が行われていた。
運動部も文化部も初日が勝負と、1年生の勧誘にみんな必死だ。
僕は運動部という柄ではない。
なにか面白そうな文化部はないかと思っていた。
校門での勧誘合戦には行きたくなかったので、掲示板を見てみる。
科学部、生物部などが良さそうだ。
そう思った時、1つの部活が目に入った。
ミステリー研究会。
来たれ!未来の探偵諸氏!
これだけである。
しかし僕の気を引くには充分だ。
さっそく見学をしに行った。
ドアをノックし中に入る。
本を読んでいる者。
窓を開け外の人だかりを見ている者。
パソコンをいじっている者。
本を読んでた者がこちらを見る。
「ふむ。部活見学かな」
「はいそうです」
「君が得意な分野はなにかね?」
「得意な分野とは」
「もちろん探偵におけるだよ。例えば彼女はあらゆるものを観察する。そして見落とさない。彼はネット系に強い。言ってみれば現代型の探偵だ」
「あなたは?」
「私か。強いて言うなら万能型探偵といったところか。時には現場に駆け付け、証拠品を見つけたり、時には部屋から出ずに推理だけで解決。つまり安楽椅子探偵。事件によって使い分けるといったところだな」
「すごいですね」
「それほどでもないよ」
「それで今までどんな事件を解決してきたんです?」
「いろいろだな」
「具体的には」
「いろいろだ」
「なんか怪しくなってきました」
「落とし物を……」
「落とし物?」
「落とし物を探したことがある」
「えっ?地味ですね」
「君、まさか学校を揺るがす大事件とか想像してた訳じゃないだろうね。実際の探偵事務所だって、依頼されるのは、ほとんど浮気調査だよ」
「そうなんですか」
「それで君は得意分野はなんだね?」
「ありません。推理小説をたまに読んだり、ミステリードラマを観るぐらいです」
「探偵じゃないじゃないか」
「探偵じゃなきゃダメなんですか?」
「まあ別にそういうわけでもないが」
「では見学させて下さい」
「ふむ。わかった。好きにしたまえ」
そう言ってその人はまた本を読み始めた。
チラリと見るとモルグ街の殺人と書かれていた。
確か世界最初の推理小説だったような。
結構ベタなの読んでいるんだな。
ミステリー研究会に何度か足を運んで数日経った頃、ミステリー研究会に来訪者がきた。
「あのここで探し物をしてくれると聞いたんですが」と背が高くがっしりした運動部といった感じの生徒がやってきた。
「ふむ。それで何を探して欲しいんだ?」と本を読んでいる者が言った。
「僕はサッカー部なんですが、スパイクがなくなってしまって」
「ほう。いつ?どこで?」
「昨日から。部室に置いていたんですが。あと僕以外にも、もう1人スパイクがなくなっています」
「それは不思議だ。よろしい、捜査しよう」
そう言って本を読む者はその人と一緒に部屋を出ようとした。
「そこの見学者。ちょうどいい機会だから一緒に来たまえ」
「僕もですか。わかりました」そう言って2人についていく。
サッカー部の部室に来ると本を読む人はあたりを観て回る。
部室は校庭の端にある。
そしていくつか質問したのち、部員はミーティングがあるからと去ってしまった。
「そういえば名前を聞いてませんでした」と僕が気づいて言う。
「推川だ」
「推川さん、どう探すんですか?」
部室を出たあと、地面を見ながら「足跡をみてだな」
「この足跡だらけで区別がつくのですか」僕は驚いた。
「いや、足跡多いなと思っただけだ」
「では他には」
「こういうときは基本的な事をする」そう言って地面に這いつくばる。
「何をしてるんですか?」
「タイヤの跡を探している。そこから犯人をだな」
「校庭は車や自転車の乗り入れは禁止です」
推川さんが困った顔で僕を見る。
「君、僕の捜査方針にケチを付ける気かい?」
「いえそういうわけでは」
一通り見た後満足したらしく「不可能なものを取り除けば、残ったものがどんなにありそうになくても真実である」
「ということは」
「あり得ない場所を先に除外し、残った可能性を順番に検証すればいい」
「なるほど」
「校庭にはない。部室内にもない。となると次に探すのは教室か」
推川さんは教室へ行こうと校舎に向かう。
そこへ、あたりをキョロキョロしながら女生徒がやってきた。
ミステリー研究会で外を見ていた人だ。
「見上か」
「捜査の状況は?」
推川さんはここまでの経緯を簡単に説明した。
そしてそのまま3人で校舎へ向かい教室を目指すと、見上さんが「スパイク」といった。
見るとジャージを着た女生徒がスパイクを乾かしていた。
「君、何をしているんだ?」と推川さん
「スパイクが汚れてたので洗ってたんだけど」
僕はまさかと思い「サッカー部のマネージャー?」
「そうだけど。それが?」
事件は片付いた。
サッカー部のマネージャーが汚れたスパイクを洗っていただけであった。
推川さんの渋い顔が印象的だった。
そこで記憶は途切れた。
「進倉何を笑っているんだ?」推川さんが聞いてきた。
「ちょっと少し前のことを思い出して」
「それより小早川の居場所を探すぞ。あり得ない場所を先に除外し、残った可能性を順番に検証すればいい」
「そうですね」
僕と推川さんは地図をみながら意見を言い合った。




