第10話 渡辺
調査は進展しなかった。
他にも電灯さんは、とにかく調べるところが多すぎて、苦戦している。
そんな時「私、細川さんにもう1度聞いてみます」と我妻さんが言った。
「なにを聞くの?」と僕が言うと
「細川さんは渡辺さんの名前を出しました。だから少しでも今の渡辺さんを知らないかと」
「やってみるのはいいんじゃないかな。でもあの素っ気なさからは期待できないと思うけど」と僕が言う。
「では、送ってみます」と言い、呟きサイト経由で細川さんにDMを送る。
「なんども申し訳ありません。母に告白したという渡辺さんのことを知っていたら教えて下さい。どんな些細なことでも構いません」
数時間後、返信があった。
「関わらないでっていったでしょ。渡辺なら○○に住んでいて今、働いていない。詳しい住所は○○だ。親のすねをかじって生きてる最低野郎だ。あともう連絡するな」
文句を言いながらも、教えてくれたことに我妻さんは感謝をした。
さっそくみんなに報告した。
電灯さんが住所を打ち込み地図をみると木造アパートが出てきた。
ここに住んでいるのだろう。
「いかにも働いていないで、親の仕送りで暮らしている住まいだな」と推川さん。
「まあ場所がわかったんでみんなで行きましょうか」と僕が言う。
「私1人でも大丈夫ですよ。後で結果を報告すれば」と我妻さん。
「何を言っているの?あなたの母に告白してふられたらストーカーになったような男だよ。あなたを1人で行かせたら危ないに決まっているでしょう」と珍しく声を荒げる見上さん。
「確かにそうですね」と我妻さん。
「ではみんなで行きましょうか」と僕が言った。
渡辺のアパートの前に来た。
郵便受けの名前から203号室だとわかった。
ギシギシと音が鳴る階段を上がっていく。
203と書かれたドアの前に行き、チャイムを鳴らす。
反応がない。
もう1度鳴らす。
奥でゴトって音がした。
どうやら居留守を使っているとわかった。
もう1度チャイムを鳴らすとドアが開いた。
ボサボサ頭のジャージ姿の男性が現れた。
「なんだおまえら?」僕たちを見て渡辺が言った。
「僕たちは……」
と言いかけた時「愛美!」と渡辺が叫んだ。
我妻さんに視線がいっている。
「やっぱり俺に会いに来てくれたのか」
僕は渡辺と我妻さんの間に入り「違います。別人です」と言った。
「ああん?」と言って僕をどかそうとする。
その伸ばした手を推川さんが掴み「別人だと言っているだろ」と言った。
「じゃあお前らは誰だ?」
「まずはお前は渡辺だな」と推川さん。
「ああそうだ」
「私たちは我妻愛美さんのことを調べているものだ」
「愛美を?」
「そうだ。知ってることを話してくれ」
「なんでお前らに」
「落ち着け。話を聞きたいだけだ」
「わかったよ。愛美はとにかくかわいかった。性格もよく、敵を作らないタイプだな」
「他には?」
「俺は愛美が好きだった。でも愛美は勘違いをしていたと思う。それで付き合う話が流れてしまった」
「ふられたんだろ?」
「違う。愛美も俺を意識していた。俺にはいつもやさしかった。俺にはいつも笑顔だった」
「都合のいい解釈だな」
「お前らになにがわかる。愛美と俺の問題だ。タイミングがほんの少し悪かったんだろ。嫌いな相手には接しようとしないだろ?」
「それは君の思い込みじゃないのか」
「違う。あのやさしさは俺にだけだ。それなのに愛美は……」
「彼女が亡くなる心当たりは?」
「俺のせいだろ。俺と付き合えなかったからだ」
「彼女の交友関係は?」
「4人ぐらいでいつも一緒にいたな」
「学校ではずっと4人で行動してたのか?」
「いや。1人の時も多かったな。部活は入っていない。帰る時間もバラバラだったな。すぐに家に帰る時もあれば、何処かへ寄り道することも多々あった。商店街を見て回ったり、本屋に寄ったり、スーパーへ行ったりな。食材をよく買ってたな。そうだ花屋に行ったこともあったな」
「なんで知ってるんだ?」
「そんなのおまえらが知ったことじゃない」
「ストーカーをしてたんだろ」
「違う。ああいうのはもてないやつがやるものだ。おれは告白されたこともある。小杉って女にな。あいつには悪いことをしたな」
「小杉?」
「俺のことを好きだった女だ。俺が相手にもしないと、愛美にあたるようになったので文句を言ったものだ」
推川さんは質問をやめて、僕らを見回した。
僕が「愛美さんが亡くなった時あなたは何をしていました?」と聞いた。
「俺は補習を受けていた。愛美と友達2人がいるのをみた。補習が終わるとあんなことになっていた。愛美は俺に会いに来ていたのかもしれない」
「この写真の男は誰だか知っていますか?」と僕はスマホで撮っておいた、この前金庫から出てきた男の写真を見せた。
「う~ん。こんな教師がいたような」
僕はみんなを見た。
みんなが首を振る。
「ではお邪魔しました」と僕が言って帰ろうとする。
「娘か?」と我妻さんを見て言う。
「……」我妻さんは怖がって答えられない。
「そうか。やっぱり似てるな」




