↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/46

推せと言われた僕。何か知りませんが偽物が現れました

好きなアイドルすらいなかった私ですが、好きなVtuberさんはおります

 皆さんは“推しマ”というものをご存知だろうか? 知らない人の為にザックリと解説すると推しマとは推しマークの略でVtuberに限らずその配信者を推していると分かりやすくアピールするマークだね。ほら、SNSなんかで見かけるでしょ? 名前の後ろにゴチャゴチャ絵文字付けてる人。全部ってわけじゃないから絶対とは言えないけどね。で、どうして僕が推しマについて話してるかと言うと……


「陽人、園田綾ってVtuber推そうぜ!」


 お調子者の甲谷蓮が唐突に理解不能な事を言ってきたからだ


「推さないんだけど……」

「え? 推さないのか? 可愛くて言葉遣いも丁寧でこれぞ大人の女性! って感じなのに?」

「いや、知らないよ。というか、いきなり何?」


 昼休みの教室。ポカポカとした陽気を感じながら昼食の焼きそばパンを頬張っていたところにこの男が弁当を片手にやって来たと思ったらいきなり園田綾さん────麻子さんを推せときたものだ。はぁ……


「いやぁ~、最近Vtuber各界でリスナーの取り合いが頻繁に勃発しててな、園田綾然り、水越みか然り、争ってるんだよ」

「ふーん。それで少しでも園田さんのファンを得ようとあんな事言ったんだ」

「おうよ! 一人のファンとしては推しには頑張ってほしいしな!」


 コイツの場合、一人のファンとしてというより園田綾の彼氏としてファンを増やしたいってところだろう。ファンを増やしたい気持ちは理解できなくもないけど、推すとなると何か違うような気がする。人から言われたから推すんじゃなくて自分が心からその人を応援したいから推すものだと思う


「そっか……でも、僕に声掛ける前に他の人達はどうなの? オタク趣味の人達なんか喜んで食いつきそうだけど?」


 僕みたいなVtuberに興味ありませんみたいな奴よりもオタクやボッチの方が食いつきはいいと思う。別にオタクやボッチをバカにしてるわけじゃない。ただ、実況しているゲームの中に好きな作品があったら意気投合しやすいかなと思っただけで他意はない


「そっち方面の奴にはもう声掛けた。つーか、クラス全員園田綾推しだ。お前を除いてな」


 彼の衝撃的な発言に思考が追い付かない。どこから突っ込めばいいの? 


「そ、そうなの?」

「おうよ! 他の連中に陽人がイチオシしてるのは園田綾だ! って言ったら全員推すって言ってくれたぞ」


 コイツ殴っていいかな? なに人の名前勝手に出してんの? バカなの?


「人の名前勝手に使わないでよ……」


 学校という瑞樹さんの目が届かない場所で彼女が推してと言ってないからいいけど、バレたら何を言われるか……どんなVtuberに自分を推せって言われても僕は誰も推さないんだけどさ


「悪い悪い。こうでも言わないと推しが増えなかったんだよ」


 彼は平謝りした後で「Vtuberってオタク臭いだろ?」と続けた。僕的にはVtuberをオタク臭いとは思わないけど……どうなんだろう? 視点を変えればオタク臭い事もなくはない。Vtuberなんて所詮は絵のクオリティが重視だし


「あのねぇ……もういいや。それで? 僕が園田綾を推せばいいの?」

「おう! 陽人が綾を推してくれればこのクラスは全制覇だからな! 頼む!」


 そう言って頭を下げる甲谷。五味陽人的にもブジャル的にも推しを作るのは……ねぇ……かと言って彼の頼みを無碍に断ると心象が悪くなる。うーん……どうしよう……推すべきか推さざるべきか……悩むなぁ……まぁ、SNSアカウントのプロフィールに推しマ入れろって言ってるわけじゃないからいいか


「はぁ……分かったよ」

「は、陽人……!」


 頭を上げた甲谷は感激の眼差しで僕を見る。今回ばかりは仕方ない。本当は園田綾の配信を一度も見た事はないけど、とりあえず推しにしておこう。SNSアカウントをどうこうしろって言われてるわけじゃないからいいよね?


「僕も園田綾を推すよ」

「じゃ、じゃあ────」

「ただし、SNSアカウントのプロフィールに推しマを付けろっていうのはナシ。理由も聞かないで。厄介な事になったら困るからね」

「お、おう……」


 僕のSNSアカウントはブジャル垢のみでアンジュに常日頃監視されていて推しマなんて付けたらアンジュに粘着される恐れがある。アイツの言う事なんて大半が被害妄想。誹謗中傷されたと喚いてるけど、実際は注意しただけだったり、文句があるなら直接言いに来いと言ったり、勘違いを指摘しただけ。誹謗中傷とは程遠い内容なんだけど……アイツ人の話聞かないからなぁ……甲谷は狙いを見破られ、断られたからか肩を落としている


「園田綾さんは推すけど、推し事しろっていうのもナシ。いいね?」

「わ、分かった……」

「よろしい」


 甲谷を強引に納得させ、僕は焼きそばパンを放り込んだ




 甲谷に園田綾を推せと言われた日から数日の日曜日────


「陽くん! 今日あたし達の初配信だよ!」

「もちろん陽人は側で見守ってくれるわよね?」


 リビングでコーヒーを啜るという優雅なティータイムを満喫していると義姉二人がみょうちきりんな事を言い出した。僕は二人から何も聞いてないんだけど……どうして僕が二人の初配信を見守らなきゃいけないんだか……それと、恋紋さんと凛瑠葉さんが初配信するという事は何? コラボでもするの? それとも、姉妹Vtuberとして売り出すの?


「僕は二人が初配信するだなんて初耳なんだけど? それに何? 初配信からコラボするの?」

「しないわ。私達はそれぞれのお部屋で一人で配信するのだから」

「そうだよ! あたし達は一人で配信するんだよ!」


 二人が何を言っているか分からない。何? これは恋紋さんか凛瑠葉さんのどちらかを選べって事? 嫌なんだけど……


「さっき今日が二人の初配信だって言ったじゃん。僕は一人しかいないから二人の初配信を同時に見守るのは無理なんだけど?」


 僕は配信した事ないから知らないけど、配信って自室に籠って一人でやるものじゃないの? 同じ部屋で配信してたらマイクが声拾って大変な事になると思うんだけど……


「陽人には私(・)の(・)初配信を側で見守ってもらうのよ」

「違うよ! 陽くんはあ(・)た(・)し(・)の(・)初配信を側で見守るんだよ!」


 恋紋さんと凛瑠葉さんは睨み合ってバチバチと火花を散らし合う。言いたい事はある。例えば、初配信するのはいいけど、SNSアカウントのフォロワー目標数に到達したのか? とかね


「あ、あはは……」


 二人の睨み合いを目の当たりにし、頭を抱える僕といつの間にか隣で苦笑を浮かべる瑞樹さん


「配信くらい一人でやってよ……」


 配信に関係なく初めての事が緊張するって気持ちが解からなくもないんだけど、配信に関しては一人でやった方がいいと個人的には思う。というかさ、配信者が自ら進んで身バレしていくのってどうなの? あっ、この場には僕を除いて配信者が三人いるから関係ないか


「陽人は私の配信を見守るのよ!」

「ちがう! あたし!」


 僕の悩みなどお構いなしに言い合いをしてる恋紋さんと凛瑠葉さんに溜息すら出ない。配信者って変人しかいないのかなぁ……


「配信者って変な人が多いなぁ……」

「それって私も?」

「そうだよ。当たり前じゃん」

「しょ、ショック……」


 ガックリと項垂れる瑞樹さんを傍目に僕はコーヒーを啜る。義姉二人の言い合いを程よいBGMにしながら



 コーヒーを飲み終え、後片付けを済ませてリビングへ戻ると恋紋さんと凛瑠葉さんの姿はなく、瑞樹さんがソファーに座っている。二人が戻ってくれたようでよかった


「やっと戻ったね……」

「うん。何だかんだで時間厳守だからね」

「だろうね。瑞樹は戻らなくていいの? 配信あるんじゃないの?」


 カップを洗っている間も二人の言い合いは聞こえていた。自分の初配信を見守るんだと言って一歩も譲らなかったけど、さすがに初配信から遅刻するわけにはいかないみたいで今回は引き分けという事で決着が着いたらしい。配信者が自分の配信を見守れとか多分前代未聞だと思う


「私は陽人に話があったから残ったんだ。今日の配信は夜からだから大丈夫」

「そっか。それで話って?」

「うん、これなんだけど……」

「これは……」


 瑞樹さんが見せてきたのはSNSのスクリーンショット。アンジュが僕を晒してるだなんて生易しいものじゃない。晒しよりも悪質なものだ


「うん……ブジャル君が別のⅤさんを誹謗中傷してるんだけど……陽人じゃないよね?」

「違うよ。僕はこのⅤさんを知らないし、興味もない」

「そっか……」


 スクリーンショットにあったのはブジャルが猫丸雲母(ねこまるきらら)というVtuberを誹謗中傷してる場面。だけど、僕は猫丸雲母というVtuberを知らないし、興味もない。第一IDが僕のじゃない


「IDが違うでしょ。何? 瑞樹は誹謗中傷してるブジャルが本物だと思ってたの?」

「ううん。ただ、この猫丸雲母ちゃんって私の友達だから何とかしたいなって思って……」


 瑞樹さんは悲しそうに目を伏せる。ブジャル本人からすると迷惑以外の何物でもない。だけど、インターネットという匿名性が高い環境下において本物と偽物を判別するのは非常に難しい。一度本物を名乗られると見分ける方法はないと言っても過言じゃない


「何とかしたいって言われてもこの人にこのブジャルは偽物ですって言ったところで信じられないと思う。そもそもブジャルは猫丸雲母に絡んだ事なんて一度もない。いきなり突撃して僕がブジャルですって名乗ったところで判別つかないでしょ」

「そうだよね……でも、この子、リスナーをすごく大事にする子でリスナーもいい子達ばかりだから助けてあげたいよ……」

「って言われても……」


 助けたいという気持ちは解かるけど、誹謗中傷してるブジャルが偽物だと証明する方法はない。せめてブジャルだけしか知り得ない事をどこかで共有できれば……


「どうにかならないかな?」

「こればかりはどうにもならないよ。雲母さんが僕と恋人────とまではいかないけど、配信者とリスナー以上の関係にならない限りはね」


 配信者は絶対に自分のモノにはならない。リスナーも然り。僕は水越みかのリスナーじゃないけど、猫丸雲母のリスナーでもない。配信者とリスナー以上の関係を狙っているわけじゃないけど、こればかりはねぇ……何かしらのチャットツールで僕と猫丸雲母しか知り得ない事を話すか合言葉みたいなものを決めなきゃ偽物か本物かの区別をするのは難しいと思う。ブジャルの正体バレた次は偽物ですか……全く、勘弁してよね




今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。