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横四楓院絞男はスイーツがお好き

 五限目の極秘任務を無事無傷で生還した僕は六限目の極秘任務に向けて準備をするに伴いある準備も進めている。ところで、このスクールは授……極秘任務の合間に五分間の中休みがある。ある男子は便所でうんうんキバッたり、ある女子は妖怪のような厚化粧を整え直したり、ある男子か女子よく分からない宇宙人は狸寝入りしたりと各々が好き勝手な無法時間と化すのである。


 無論、諜報員である僕はそのような無駄な時間の使い方はせず、ある時は自慢のトカレフを舐め回すように見つめたり、またある時は美処女を諜報したり、またまたある時は有害汚染兵器(※ゴキ太郎)を発狂しながら暗殺したりと有意義な時間の使い方をしている。そして、この五限目と六限目の授ぎ……極秘任務の合間の中休み、いわゆる午後三時前のこの短いひとときは僕にとって特別な時間なのである。


 よゐこの『スイーツタイム』である。


 …………。

誰だ、今、スパイの身分でスイーツ(笑)とかダッサワロリンヌwとか心の中で僕を嘲笑った不謹慎者は。ちょっと、そのスイーツ脳に鉛玉を喰らわせてやるから廊下で勃っていなさい。確かに大のスパイである僕がスイーツを喰っている姿はちょっとアレな感じに見えるかもしれない。だが、ちょっと待って欲しい。スイーツを喰い散らかす行為が如何にスパイにとって重要な任務であるか誤解無きように語っておくことにしよう。


 スイーツとか子供っぽくてヤダネーとか思われるかもしれないが、だいたい世知辛いこの世の中をスパイが生き抜く上で糖分摂取は重要な栄養摂取であることをもっと我々は認識するべきなのである。糖分摂取は日々の疲れを癒す効果があると巷で聞いたことがないだろうか?その通りなのである。スパイだってにんげんだもの(相田みつ●風)。日々の難関な極秘任務の中で角砂糖と言った手軽に摂取できる糖分は貴重なエネルギー源なのである。だから上記の言い分を盾に女子力マンパワーな親の仇のようにクソ甘いケーキを喰い散らかしたいだとか、女子のとっても甘い蜜を比喩的に吸いたいだとか決してそういうのではないことを追記しておくことにしよう。


「フフフフフフ」


 自席の机の下に保管しておいた保冷バッグから本日のスイーツであるプリンを取り出しながら僕はついほくそ笑んでしまった。今から食すこの何の変哲も無いこのプリンが楽しみなのもそうだが、今日はもう一つ喜ぶべき記念日になり得るからである。そう!脱☆田中某!ようやくあのスイーツ女から解放される日が来たのである。


 我が妹、睦海の処女を犠牲にな!


 いや、別にあのゆりんゆりんな空気が羨ましいとか僕も混ざりたかったですとかそういうのは全然考えていない。と、とにかくである。今日はスイーツ片手にお祝いと洒落込もうではないか。そうだ、普段のストレス発散の為にも思い切り笑っておこう。そして僕はジャパニーズ行儀も忘れず、プリンの前で手を合わせる。


「フゥーッハッハハッハハハッ…げふごふっ(←蒸せた)……い、いただき」

「おりょー。佐藤くん、狂気的に笑いながら何やってんの」


 ……なんでなんだぜ?

何だかテンションが上がってマッドサイエンティスト的に笑いながら(ちょっと失敗しちゃったけれど)プリンを口に運ぼうとしたその瞬間である。普通に僕の目の前に田中某が何事もなくそして何の前振りもなくいきなり姿を現した。こ、この女、もしかしてくノ一か?畜生め、前回の睦海の愛らしさで快感の海に溺れたのではないのか。何だかテンションがダダ下がりな僕はプリンを食す手を止めた。


「あー! ぷっりんー! 今日はプリンなんだねー、ありがと佐藤くん! 私、プリンには目が無いんだよねー……プリンの事なら任せなさい! 私の事は今からdr.プリンと呼んでくれたまい! えっへん!」


 目ざとく僕の机に置いてあるプリンを見つけたdr.プリンは瞳を輝かせて嬉しそうにウンウンと腕を組む。だ、誰がお前にこのプリンをくれてやると言ったんだよ。ち、畜生が。こ、このままでは確実にこの僕の愛らしいプリンは目の前のプリン狂の胃の中にゴールインしてしまうぞ。な、何とか追っ払わなければ。こんなスイーツ女は思い切り無視したいのはやまやまであるが、そうも言っていられない。僕のこの可愛らしいプリンを死守しなければ!


「あ、あの、dr.プリンさ」

「誰がdr.プリンなんだよー! 私の事は『めぐみん』って呼んでよネ!」


 田中某は頬を膨らませ、僕にそう声を荒げる。

このスイーツ女、本当に頭の中に腐ったキウイでも詰まっているんじゃあないのか?


「め、めぐみん、さん」

「…………よし、ちょっとタイム」


 めぐみんさんは何故かクルッと後ろを向いて僕から目を逸らし、身体をもじもじさせる。な、何なんだよこのスイーツ女は。スイーツ女の考えることは本当によう分からん。この女にまるでこの国の言語が通じそうにない。ましてや、僕がこの女を言い負かせる未来がとてもじゃないが見えない。言葉で追っ払えないのなら。


『そうぢゃ絞男、おっぱいプリンを揉みしだくのぢゃ!』 


 …………。

誰なんだよ、今のエロじじぃは。しかし、よくよく考えてみると目の前のスイーツ女の立派な二つのおっぱいプリンを揉みしだくという行為はこの女をここから追っ払うという作戦では案外と得策なのかもしれない。僕が目の前の女のおっぱいを揉む→女、悲鳴→女、逃げる→プリンは死守できました……よし、キタ、僕最高、これでいこう。


「よし、もうだいじょーぶだよさっとうくん! って……佐藤くん?」


 だが、ちょっとマテ。

最高な作戦なのだが、このおっぱいもみもみ作戦には一つ問題がある。それは僕の勇気と地位である。ハッキリ言って健全な僕は女子にそんな破廉恥な行為は出来ればしたくないし、田中某が悲鳴を上げれば僕はクラスで目立つ存在となる。スパイとしてこのスクールで目立つような行為はしたくない。


「おーい! 佐藤クーン! おーい、おぉーい!!」


 スパイが勤務地で悪目立ち。この事が僕の上司の耳に入れば僕は罰金者である。罰金どころか下手したらクビが飛ぶかもしれない……比喩ではなく、そのままの意味で、だ。クビタケコプター……こ、今回はやめとこうかな?


「わーたーしーをーむーしーすーるーなー!」

グリグリグリグリ

「ヒィッ……アッ、あぁああん!」ビクッ


 頭の中でパイ乙もみもみ作戦のデメリットを考えていると突然乳首に官能的な刺激が走り、思わず嬌声を上げてしまった。ハッとなって目の前の光景を見ると恨めしそうな目で僕を睨み付けながら、僕の乳首に人差し指を押し当てている田中某がいた。えっ、ナニッ、え゛っ、やだ、ナニコレ、ナニコノヒト、コワイ、デス!


「いやぁああああ、す、スケベ! や、やめて……やめてください!」

「何がスケベなんだよー! これはまた佐藤くんが私を無視したお仕置きなんだからね! もー、今日は……ペロンッ、にっしっし! これで許してあげる」


キーンコーンカーンコーン


「あっ、もうすぐ授業はじまるね。じゃあねー、佐藤くん!」

「…………」


 田中某は一瞬のうちに僕のプリンを半分食べて、僕の席から離れて行った。う、うっそでしょ。結局、プリン食べられちゃったぞ。しかも、乳首痴漢のおまけ付き。ま、まあ、ちょっと興奮したからいいけれ……いや、違うそうじゃない!し、仕方ないこの半分だけ残ったプリンを僕は!


「睦海に、あげようかな」


 女子が口をつけたというその事実に気恥ずかしくなった僕は食べかけのプリンを保冷バッグにしまい、妹にこのプリンを渡すと決めたのであった。

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