番外編 『虚無僧の学園スパイは美少女を悪戯するだけの可愛い独身です。』
某の名前は武者小路汁男でござる。
某は齢三十九の独り身の立場でござるが、この学び舎の長にDOGEZAで拝みに拝み倒して何とかこの少女の園に闖入できたのでござる。くんかくんか……うーん、思春期の少女の独特のかほりが鼻孔の奥にこびりつく……某はいまとっても幸せでござる。
「(な、なんで、あそこにホームレスがいるんだ?)」
「(こ、虚無僧じゃない……? 物請いかな……?)」
某の正装は衣笠に印籠と相場が決まっておる。
そして尺八を武器にスパイとして日本各地を練り歩く。一見何てことのない僧のように見えるこの姿で学舎の生徒に交じって、美少女のちょうほう活動を行うのでござる。某のご立派な尺八でそこら中にいる美少女をヨがらせてやりたいのでござる。ちなみに、ヨがらせるとはヨガをやらせるという意味でござる。
「ギャハハハ! 何それ、マジありえなくなーい? ヤバス! やばいっしょ!」
某が自席で大人しく尺八をぴうぴう吹いていた時のことでござる。
やばいやばいと鳴き喚き、奇奇怪怪な黒電話(※スマホ)をしながら某の目の前を通り過ぎるこぎゃるがいるでござる。黒塗りの山姥のような妖怪肌そして鼻の孔や唇に輪っかを装備し、まるで牛のような姿に某の心は泣いてしまったでござる……嗚呼、おいたわしや、おいたわしや。今時のゆとり親はナニをしているのでござろうか。兎にも角にも美処女を崇拝する某はこの醜態を見過ごすわけにはイキません!
「喝ッ!」
「ビクッ……うっ、な、なんだよ……おっさん! 人が喋ってるときにいきなりシャウトすんなよな! ったく、もしもし……由美ごめ」
「カァああアッツ!」
バシッ
「いたっ、イタイって! な、なんだよその笛! 叩くなよ! 何なのこの変なおっさん! マジムカつくんだけど!」
「おいたわしや、おいたわしや……。某の心が泣いてござる。いや、某の心だけでは無い……御手前の肌や鼻、唇も『イタイイタイ』と泣いておる。そう、某の心にぽっかりと空いた黒点のように……」
「は、はあ? ナニ訳の分かんねぇこといってんだよ……ていうか、返せよ! あたしのスマホ!」
バキッ
「デュクシ!」
某は黒毛雌牛に乱暴に頭をドつかれたでござる。
そして、黒毛雌牛は怒り心頭の様子で某から去っていったのでござる。お、おのれ……折角、某が人の道という道徳をその身にこれでもかと云う程に教えてしんぜようとしたのに。いつか御手前を物理的にしゃぶしゃぶにして喰ろうてやる。
「あ、あの……大丈夫ですか?」
引っくり返ってしまったので、起き上がろうとしたその時のことでござる。
今度は別のクラスメイツ……黒縁メガネの巨乳いいんちょが心配そうな表情で声を掛けてきてくれたでござる。おお、まさに某のお好みの美処女でござる。名前は……何といったか。所詮名前など某にとっては記号に過ぎない故、クラスメイツの名前など忘却曲線に乗ってしまったでござる。ムムム、仕方のない……便宜上、『香澄』とでも呼ぶことにするでござる。「清らかな心」「無邪気」「親切」「幸福」を体現したような彼女の心は某の濁った心に潤いを与えてくれる……。
「香澄殿……感謝の極みでござる」
「は、はい……。あ、あの……私の名前は花菜、なんですけれど」
若輩者の某の手を引っ張り、起き上がるのを手伝ってくれる香住。
某、これまで三十九年、女という生き物に触れずに生きてきた故に緊張で手汗がだくだくでござる。
「香澄殿、本当にありがとうでござる。ところで……」
「あの、花菜……はい? 何でしょう?」
「でっかいのとちいさいの……どちらがお好きでござるか?」
「…………えっ?」
香住はキョトンとした様子で某を見つめておる。
しまったでござる、目的語が抜けていたでござる……ああ、いとおかし。
「な、何の話……ですか?」
「ああ、すまぬ。尺八の事でござるよ」
「しゃく……はち? 何の事ですか?」
「これでござるよ」
某は装備している笛を取り出し、香澄の前に掲げる。
香住はああと得心が行った様子でこくりと顔を頷ける。
「笛ですよね? この笛って大きさに色んな種類があるのですか?」
「ああ。違う違う……ちょうど今の某の尺八が大きくなっておるから見せてしんぜよう」
ポロンッ
「……きっ、きゃああああああーー!!」
バッキッ
「クッポォ!」
某が大きくなった尺八という名のちん●見せようとモロ出しすると、目の前の黒髪メガネおっぱい殿は我の鳩尾に思いきり良い蹴りを喰らわせそのままこの場から立ち去ってしまった。グフッ、グフフフ、そ、某もまだまだでござる。しかし、いつかこの学舎の雌犬どもに某の尺八を喰らわせてやるのでござる。そのためにも立派なスパイもといいけめんにならなければならないのでござる……(つづかない)。




