奇跡はあいのことば
静かに震える僕をマティアスが優しく包み込む。
そっと耳元に、吐息とともに言葉を囁く。
「どうでもいいなど、思ったことはない。大切だからこそ、どう接したらいいか、わからなかった」
後悔をにじませた、懺悔の言葉。
「言葉にしなくとも、気付いていると思い込んでいたんだ」
「言葉にしなくちゃ、わからない…」
結局の所、僕たちは言葉が足りなかったのかもしれない。
「俺が今日、他の女といたのは確かだ。ルトに喜んでもらいたいと、その心だけでお前の誘いを断り、サプライズをするつもりだったんだ」
「サプライズ?」
「付き合ってから、まだお前の満面の笑顔を見たことがなかったから…ルトの笑顔が見たかった」
ポツリ、ポツリと語られたのは、今日の真実で。
「だけど…あの女の人、綺麗だった」
「彼女は俺の姉だ」
「お、ねえさん?」
言われてみれば、どことなくマティアスと雰囲気が似ていたような……
「もしかして、僕の勘違い?」
そうであれば、僕はとんでもないことをしたのでは。
焦る僕を横目に、マティアスは微笑む。
「だが、普段から言葉を、想いを告げていればこうはならなかった」
「でも、僕も君に思ったことを言ってないよ」
「お互い様だろう」
心底愛おしいと言わんばかりに耳を撫で、髪を梳き、抱きしめられる。
「愛している……」
かすれた吐息とともに告げられらのはとっても恥ずかしくて、とってもうれしい愛の言葉。
「僕、男だよ?」
「それを承知で好きになった」
「家族にはきっと受け入れてもらえない……」
「大丈夫だ、もうばれている」
「……うそ」
「うそじゃない。さっさと連れてきて会わせろと催促されている」
「女の人みたいに可愛くないし子供も産めないよ?」
「男でも十分ルトは可愛いし、子供に関しては気にしなくていい」
「なんで」
「俺は長男だが家を継ぐのは姉だ」
「え、それじゃあ…」
「俺とお前の交際を、反対しているのは、拒絶しているのは。ルトだけだ」
じゃあ。じゃあ……っ!
「僕は、君に想いを告げても許されるの…?」
「むしろ言ってくれ。俺だけに言わせて終わるつもりか?」
ずっと我慢してきたのは。僕が臆病であったせい。
もっと早くに本心を告げていれば、こうはならなかったのかもしれないけれ素ど。
きっと、これは。聖夜祭がくれた奇跡。僕に勇気を出させてくれた。
だから、もう隠さないよ。怯えない。
「愛してるよっ、マティアス……っ!」
だいぶ強引な感じがしますが、これにて完結です。
お付き合いいただきありがとうございました。




