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赤薔薇の君の対策が決まったところで、まだもう一つの問題が残っていた。
それは、このやり方を、誰が彼女に伝えるか、だ。
プライドの高い彼女が、素直に言うことを聞いてくれるとは限らない。
最悪、不信感を抱かれ、面接にすら来てくれなくなるかもしれない。
「でもさ、別に否定はしてないんだから、言うこと聞いてくれるんじゃないかなー。」
「彼女の異変を最初に見つけた、ということになっているミサから切り出すのが自然だろう。」
「そうだよねー。それにさ、ミサトちゃんって小説好きじゃない?きっと話は合うと思うんだよね。ほら!俺、あんま好きじゃないし―、そういう小説読まないし―。」
― えええ・・・・・・、嫌な予感はしてたけど、やっぱり私なのぉ。
そりゃあ、彼女のことは心配だし、どうにかしてあげたいと思うよ?
でもさぁ・・・一番大変で面倒なとこ押し付けてないか、二人とも!
「二人とも・・・はぁ~・・・。フォローはしてくれるんですよね。私、彼女に良く思われてないだろうし、拒絶されたって知りませんからね。」
「う、うん!大丈夫だよ!いざとなったらお店に連れてくから!先輩に預けるから!」
「その時はその時だ。最悪強制保護だ。」
― なんつーテキトーな!
ああ、もう!この人たちに任せておけない、私がどうにかするしかない。
半ばヤケクソ気味ではあったが、なけなしの覚悟を決め、赤薔薇の君の面接に挑むことにした。
赤薔薇の君は、きっちり1か月後、また面接にやって来た。
彼女の性格からして、ハンドクリームがなくなっても時期を早めることはないだろうな、と思っていたけど、やはり予想したとおりだった。
リュウ先生には、例のハンドクリームとお肌に優しい石鹸を多めに作ってもらっている。
そして、彼女専用のキャンディも量産してもらった。
レイ君と話をしている彼女が、時折私の顔をチラチラ伺っている。
その様子に気付かないレイ君ではない。
「僕、気になってたことがあったんですよね。あの小説のラスト、赤のコーシャクレージョーってどうなるんですか?」
「え・・・?それは・・・」
主人公のラストシーンは、ハッピーエンドで華々しく描かれていたが、悪しき神に寝返った悪役令嬢のラストなんて、一行たりとも描写がなかった。
なんなら、ナレ死すらしていない。
彼女がレイ君の問いに答えられないのも、当然である。
私は深く息を吸い、お腹に力を籠め、彼女に話しかけた。
「一つ質問してよろしいですか?」
赤薔薇の君が、キッと私を睨みつける。
まるで、『余計なことは言うな』と言わんばかりの表情である。
「なにかしら、ミサトさん。」
「あなたは、物語を完成させるために召喚された、っておっしゃいましたよね。」
「そうよ、それがどうかしたの?」
「あなたが考える、物語のゴールってなんですか?」
「は?なにを言ってるの?王子と主人公が覚醒して、美しい魔法を展開し世界を守る。それが結末だってこの前言ったわよね。もう忘れたのかしら?」
「質問を変えますね。あなたのゴールは、世界を守ることですか?それとも王子様と平民の少女が覚醒することですか?」
「・・・それ・・・は・・・。」
赤薔薇の君は、私の問いに、明確な答えを持ち合わせていないようだった。
世界を守るには、王子とヒロインの覚醒がセットだと思っていたんだろう。
「前回来ていただいた時のこと、申し訳ありませんが上司に報告しました。あなたが、物語を破綻させないために無理をしているように見えたからです。」
「な・・・余計な・・・!」
彼女の怒りも当然なこと。
でも、これから例の対策を実行していくには、まずは彼女に本当のことを言わなければならない。
・・・先んじて物語を読んでいたこと以外は。
大丈夫、ここでたとえ私が拒絶されたとしても、リュウ先生とレイ君がいる。
私は・・・一人じゃない。
「お渡ししたハンドクリームは、リュウ先生でなければ作れません。あなたの美しい手がボロボロになっていくのを、私は見過ごすことができませんでした。」
こちらの不安や動揺を悟られてはいけない。
私はまっすぐ彼女を見つめ、話を続ける。




