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ここは、三室のミーティングルーム。
リュウ先生、レイ君、私、そしてマイケル先生を迎え、対策会議が行われている。
以前、ジン様突撃訪問事件の捜査会議を行った時のように、大きめの紙を張り合わせ、壁に貼るスタイルで話し合いが行われることになった。
物語の中に書かれてある、赤の侯爵令嬢の所業を抜粋したなんちゃってホワイトボードの前に立って、状況を説明しているのは・・・なんで私?
確か、担当はレイ君だったよね!
腑に落ちない気もしないでもないが、最初から最後まで物語を読んだのは私とリュウ先生であるから、仕方ない・・・のか?本当に?
リュウ先生が、マイケル先生に『物語の空白を埋める作業と、行動の置き換え』の提案をしたところ、導入としてはいいのではないか、という意見をいただいたので、マイケル先生監修のもと、意見のすり合わせをしようということになった。
「まずは、孤児をさらって人体実験を行う、というくだりです。」
具体的なグロイ描写こそないものの、子供に対し暴力的な行為を行い、命を奪っているようなことは匂わせている部分。
こんなこと、フィクションだから書けることであって、普通の人ができるわけがない。
「ここは、旧式の結界を強化するため、新たな魔法を構築しようと模索しているのだと思われます。」
そこに、リュウ先生が深読みをした解釈を加えていく。
「ふむ・・・やり方はどうかと思うが、そういう解釈もできるね。さて、それをどう置き換えるのかな?」
「要は、新たな魔法を開発すればいいのです。ならばセンターの蔵書でも事足ります。彼女は火の属性。天界か魔界の、火を扱う者に講師になってもらうことは可能でしょうか。」
「なるほどねぇ。行程はどうあれ、結果が同じになるように導くわけか。悪くないね。」
要は、ストーリーを破綻させなければいいのだ。
人体実験が、センターの蔵書と講師に置き換わる。
そして、やっぱりあった、性に奔放な描写は、というと・・・。
「ちょっといい男がいれば、見境なく誘惑してる部分はさ、店で引き受けるよ!いつもは一人だけど、それなりの数の従業員をあてがえば、同じことじゃない?」
「なるほどな。物語には、『誰と』やったかなんて具体的な記述はなかったな。」
― だから、リュウ先生、言い方!
「平民の少女に手を出す部分はどうするかね?あれは嫉妬からくる行動なんだろう?」
婚約者の座を奪われたくないための、ヒロインをいびり倒すテンプレ描写。
「最終的に、婚約者じゃなければいいのですから、こっちから破棄すればいいのではないかと思うんです。王子様に固執してなければ、ですが。」
「ふむ、続けて。」
「ヒロインは平民です。貴族としてのマナーや矜持を厳しく指導することで、『いじめている』ように見えるのではないでしょうか。」
― もともとお嬢様だし、マナーにはうるさそうだし、ここはあまり抵抗ないんじゃないかな。
「あー、王子様とくっつくのは自分じゃないって思い込んでるようだから、固執はしてないかもねー。」
「しかし、婚約破棄イベントでヤケを起こしたご令嬢が、魔法を暴発させて敵方に寝返るのだろう?そこはどう置き換えるのかね?」
「物語の結末は、覚醒した王子と少女の力で、悪しき神を退け、平和が守られた、だったな。」
「じゃあさ、万が一覚醒しなくても、平和が守られればいいわけ?」
「その悪しき神と仲良くなって、攻めさせないようにすれば、あるいは・・・?」
「ていうかさ、そもそも悪者が攻めてくるの?実際、そんなのが本当にいるのかなー?」
レイ君の純粋な疑問はもっともだ。
『物語の世界』に囚われていたのは、私たちも同じかもしれない。




