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赤薔薇の君の面接までの1か月間、彼女が『美しい物語』だと言った、その本を読んだ。
・・・読んだよ、3回も。
それは、日本ではその手のアニメや小説でよく見かけるような、シンデレラストーリー。
魔法の力を隠し、ひっそりと暮らしていた平民の少女が駆け上がる、サクセスストーリー。
お約束でもある、王子様とのラブロマンスもある。
そして、王子様の婚約者は、赤き侯爵家の娘であり、その世代では一番の魔力を秘めていた女性。
そう、平民の少女が颯爽と現れるまでは。
それからは、おなじみの展開にて平民の少女にあれやこれやの嫌がらせの限りを尽くす。
そんな侯爵家の娘は断罪され、闇落ち。
結界を張る必要があったのは、悪しき神から国を守るため。
闇落ちしたご令嬢は、悪しき神の甘言にのっかり、国を裏切り、結界を破壊する。
悪しき神の軍勢が押し寄せてきて、もうだめか、と思ったその時、王子と少女が覚醒する。
そして、その軍勢を退け、二度と破ることのできない強力な結界をはり、ハッピーエンド。
とまあ、要約すれば、よくある物語の内容だった。
しかし、文章が重厚で壮大で・・・はっきり言って、小難しい。
ラノベやアニメのような、軽いタッチではなかった。
読み返さないと意味ががわからない部分が多々あったため、3回も読むハメになったのだった。
決して、読んでいる途中で寝落ちして記憶の欠落があったからでは・・・ゴホン。
だって、中身がこれしかないんだよ?
それを3巻分、引き伸ばしてるんだよ?飽きちゃうって!
しかし!その苦労の甲斐あって、完全読破しました!!
・・・リュウ先生は1回読んで、「ふぅ~ん」としか感想がなかったけどね。
「彼女は確かに高飛車だけど、こんな汚い手は使わないタイプだよなぁ。そりゃあ嫌になるわな。」
召喚された時、三日間ベーッタリお付き合いしたリュウ先生が言うんだから、間違いないだろう。
「清廉な少女との対比でしょうけど、やってることがあんまりですよね。これやろうとしてるんでしょうか、彼女。」
やっぱり、犯罪行為の描写があった。
人身売買や、己の高みを目指すため、新たな魔法の実験体として奴隷を犠牲にしたりと・・・手を洗いたくなる気持ちがよくよくわかった。
「なぜ、この通りの行動しなきゃダメなんですかね?闇落ちしなければいいだけじゃないですか。」
「ミサ、本当に完全読破したのか?あんだけ時間かかってたのに。ほら、ここ・・・」
「あっ・・・そうでした。旧式の結界だから、もうもたないんでした。だから王子と少女の覚醒が必要だったんでした。」
「逆に言えば、この悪役令嬢が闇落ちしなきゃ、覚醒イベントもないってことだ。」
「なるほど・・・、そう思い込んでるってことですね?」
「だろうな。魔法の実験してたのも、新たな結界のためだったんじゃないかな。」
「あっ、彼女は彼女なりの正義があったんですね。ただのサイコな趣味じゃなかったんだ。」
リュウ先生がとうとう残念そうな顔になった。
「ミサトさん・・・君、文系でしたよね。」
「文系でも、学科が違います。私、文学部じゃないし。」
「じゃあ、大学でなに勉強してたんだよ・・・」
「そんなことより!マイケル先生は、なんて仰ってたんですか?」
― 私の過去より、赤薔薇の君のことが大事!!
「はぁ~・・・まったく。まずは「なぜ」をきちんと確認しろ、だってさ。」
「なぜ、って・・・やりたくないことやってるからじゃないんですか?」
「それは俺たちの憶測だろう?もっと、別の理由があるかもしれないからな。」
「なるほど・・・それを私たちにやれって、マイケル先生も相変わらず無茶ぶりですね。私たちそっち方面は素人なんですよ?」
「素人だから、かえって本音を言いやすいんじゃないかって。ミサトさん、期待されてるみたいだぞ。」
― ・・・は、私?なんで?
マイケル先生の意図が、さっぱり理解できない私だった。




