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赤薔薇の君の1か月後の訪問を前にして、できる限りの準備をするため、三室において、リュウ先生、レイ君、私で対策会議が行われた。
まずは、レイ君からお店での様子を報告があった。
「お店ではいつもの通りだったかなー。俺はあんまり話聞けなかった。でも・・・」
― ご指名されなかったってことね。
「ミサトちゃんのお願いもあったから、トイレまでついていったよ!」
― うん、誤解される言い方やめようね!
「「・・・」」
「な、なにさー。いくらなんでも中まで入るわけないでしょ。近いことはしたけど。」
― ま、まさか、覗き・・・それは二室案件に・・・。
「彼女のトイレ時間が長い理由がわかったってのに、なに、その顔。」
「二室のお世話にならないといいなー、と思ってね。それで理由ってなに?」
そこで、レイ君が真面目な表情になった。
「彼女ね、ずーっと手を洗ってるんだよ。事情を話して、シャチョーにちょっと見てもらった。」
「アズ様に?」
― どうやって!やっぱり、魔法でチョチョット、なのかしら。
「うん。俺は直接見たわけじゃないけど、シャチョーもさすがに心配してたよ。なんかね、ブツブツ独り言いいながら、ずーっと手を洗ってるんだって。」
「・・・強迫観念・・・か。」
リュウ先生が、ぼそっと呟いた。
「室長センセー、それってどういうこと?」
「強い不安や不快感を打ち消すために繰り返し行われる行動のことだ。一般的に、手洗い行為は過度な汚染恐怖からくるものとされているが・・・。レイ、その独り言の内容ってわかるか?」
「えっと、シャチョーが聞いてたから、どこまで正確かわかんないけど、『このままじゃだめ』とか、『あんなことしたくなかったのに』とか、そんな感じみたい。」
その独り言の内容からして、物語の中の『悪役令嬢』の言動と、自分の言動の不一致に苦しんでいる様子が、私にも伝わる。
どれだけの悪行を重ねている悪役令嬢かわからないけど、赤薔薇の君でも『これは無理!』って思うこともあるのかもしれない。
リュウ先生は、『汚染恐怖』って言ってた。
『汚れている』と思う行為って、犯罪に手を染めたり、または性に奔放だったり・・・このあたりだろうか。
リュウ先生も、かなり難しい表情になっている。
「これは・・・俺たちの手に負えないかもしれないな。」
「手に負えないって・・・どういう・・・」
「三室の案件じゃないってことだよ。医師の介入が必要だって話。」
「つまり、マイケル先生の、一室の案件っていうことですか。」
― そこまで、深刻な事態なの・・・?
療養スペースで治療が必要なくらいの症状なの?
「ん~、でもさ、担当が変わったら、もっと不安になるんじゃないのー?ヘタしたら来なくなっちゃうよ、彼女。」
「今は手洗いで済んでるけどな、症状が進めば自傷行為になっていくんだぞ。今だって、一日何回手洗いしてるか、わかったもんじゃない。少なくともマイケル先生の指示を仰ぐ必要はある。」
センターに来ているわずかな時間の中でも、手を洗わずにいられない赤薔薇の君・・・。
毎日の生活の中で、ちょっとした言動の不一致の度に手を洗ってるなら、荒れるでしょうに・・・あ、あの手袋って、それを隠すため?
「レイ君、あの手袋・・・」
「あー、そういうことだったんだねー。」
レイ君も、手袋の意味に気付いたようだった。
「俺は、マイケル先生に相談してくる。レイは彼女が指名する店のヤツから詳しい話を聞いて。そして、ミサ。」
「は、はいっ!」
リュウ先生から渡されたのは、数冊の本。
「これ、完全読破しといて。」
「これって、まさか・・・」
ちょっとした伝手って、なに?なんで次の日に入荷になってんの?
どういう伝手なの!!




