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ようこそ異世界転移センターへ  作者: カイ


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「今日は少し話し過ぎてしまったわ。そろそろいい時間よね?レイさん、お店に連れて行って。」

赤薔薇の君が、ソワソワしだした。

面接の時間は、緊急事態でもなければ1時間が目安。

いつもは10分もしないでお店に向かう彼女だが、今日は30分以上時間が経っていた。


「えー、もう少しここでお話聞かせてほしいなー。1か月に1度しか会えないのに。」

「1か月に1度だから、早くあの人に会いたいの。」

― 『あの人』とは黒服さんのことかな。

「寂しいこと言わないでくださいよ。たまには、僕を指名してくれてもいいんですよ?」

「ふふっ、気が向いたらね。レイさんはもう少し包容力を磨いたほうがいいわよ。」

― おっと、これはなかなか手厳しい!

ナンバー1のアズ師匠は裏表のない言葉で、ちょっと強引なオレ様タイプ、ナンバー2の黒服さんは、全てを許して受け入れてくれるような穏やかな紳士タイプ、ナンバー3のレイ君は、甘えんぼタイプ・・・って感じなのかな。

しっかり棲み分けしてんだなー。


さて、あまり引き留めても彼女のご機嫌を損ねるだけ。

今日はこのくらいで引き下がったほうがいいかもしれない。

『物語の世界に召喚された』なんて、にわかには信じられないけど、でもそれを否定してはダメだ。

まずは転移者の言葉を受け入れ、話を聞く。

一番最初にジュエル先生が教えてくれたことだ。


「それでは、次にいらした時には、その物語のことを教えてくださいね。美しい物語って、どんな内容なのかぜひ知りたいので。」

赤薔薇の君が、驚いた表情をしている。

「・・・意外ね。てっきり頭ごなしに否定されると思ってたのに。」

「あー、ミサトさん、そういう物語が大好きだもんねー。なんだっけ、この前まで読んでた本、『公爵令嬢のティーパーティー』だっけ?」

― なぜ、レイ君までそれを知ってるの!

「・・・なによそれ。」

「このセンターの中央に図書室があるのは知っているでしょう?あそこにはけっこうな蔵書があって、小説なんかも充実してるんですよ。ミサトさん、仕事中なのに読書してるんですよー。」

「ちょっと、レイ先生!ここで言うことじゃないでしょう!それに読んでたのは休憩時間だから!」

― そんなことまで開示するんじゃないわよ、まるで私がサボってるみたいじゃないの!


「ふっ、ふふっ。」

私たちのやり取りを聞いていた彼女が、笑い出した。

「ミサトさんって、ほんと・・・。」

― ほんと・・・なに?その後は、なに?

「あっ、すみません。でも本当に面白いんですよ?お時間があるときにぜひ読んでみてください。図書室はいつでも解放してますから。」

「ええ、そうね。時間があったら、ね。仕方ないから次に来た時には私の物語を教えてあげる。これでいいかしら?」

― お、表情が少し柔らかくなった。

「ぜひ!次にお会いできるのを楽しみにしていますね。」


赤薔薇の君とレイ君が、椅子から立ち上がる。

レイ君は息をするように自然な所作で、彼女をエスコートする。

「じゃあ、お店に行きましょうか。それでは、また1か月後。」

「そうね。また1か月後にここに来るわ。」


私は、ハーブティーが入った紙袋をレイ君に渡した。

『洗面所の様子をできるかぎり観察して』というメモを添えて。


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