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バイタリティ溢れる赤薔薇の君は、女性向けのお店の経営までしているという。
一見、中世の貴族のようなドレスだし、あのギューッと締められるコルセットが存在してるのかも。
コルセットなしでも着られるワンピースとかドレスとか、もしかしたら可愛らしいランジェリーなんかも作っているのかな。
・・・アリィさんと意気投合しそうだな!
「へー、女性向けのお店をやってるなんて、僕も初めて聞きましたー。店に通えてるってことは、なかなか順調みたいですね!」
「ふふふ。まあ、それなりかしらね。」
その得意気な、自信満々の笑顔から、仕事が理由ではないことが伺える。
だとすると、原因はなんだろう?
仕事でなければ・・・恋愛方面、人間関係、だろうか。
召喚された転移者の方は、外見も美しい方が多い。
花で例えるなら、薔薇とか百合のような、存在感のある美しさだ。
優れた能力と美貌、それに異世界人というミステリアスな存在の女性を、世界のメンズが放っておくとは思えない。
ストーカーまがいの被害を受けてるとか、そうでなければいいけど。
― ・・・そういえば、私は野草だったな~。
はっ、いけないいけない!また自虐ネタをかますところだった!
・・・もしかして、意にそぐわない政略結婚とかさせられそうになってるとか!?
侯爵家といえば、身分は2番目に高いわけだし、あってもおかしくない。
まさか、ナンバー2の黒服さんのことを本気で慕っていて、でも叶わなくて・・・それで思いつめちゃってる?
もしそうなら、そんなデリケートな話題、どうやって切り出したらいいんだ!?
「お仕事、とても充実してるのですね。でも、無理されてませんか?先ほど、魔力の提供と仰ってましたけど、負担が大きいのではありませんか?」
結局、仕事の話題を続けるしか道を見出せなかった私であった。
「あら、おかしなことを言うのね。そのために召喚されたのでしょう?」
― ・・・・・・え?
「そのため・・・とは、魔力で結界を維持するためということですか?」
赤薔薇の君は、フッと笑った。
「それ以外、なにがあるっていうのよ。魔力なしの娘の代わりに私を召喚したのでしょう?物語を破綻させないために。」
そう言った彼女の手袋に、また皺が寄った。
― 物語を破綻させないためって、なにを、言って・・・。
「ちょ、ちょっとお待ちください。物語って・・・」
「私の猶予はあと2年。2年後には断罪されるのよ。それまで、せめて好きなことして自由に生きたっていいじゃない。あなたたちは、それを知っていて私を送り出したんでしょう?」
― そんなわけあるかい!
そんな世界だって知ってたら、行きたいって言ったって止めてるってば!
「私たちは、転移者の方を召喚した世界のことは、最低限のことしか知りません。」
「え・・・?」
「ミサトさんの言ってることは間違いないですよ。行くか行かないかは本人の希望を尊重するけど、そんな世界だって知ってたら、絶対止めてますって。」
レイ君からすかさず合いの手が入る。
「・・・別にあなたたちに怒ってるわけじゃないわ。私はね、それで構わないの。だって、とっても美しい物語なんですもの。」
赤薔薇の君は、うっとりとした表情を浮かべた。
― そんなわけない。
それが本心からの言葉なら、自由に好きなことしたいって思わないし、手袋に皺がよるほど手を握り締めたりしない。
今まで、それなりの数の転移者の方と接してきたけど、『物語の世界に召喚されましたー』なんて人、見たことも聞いたこともない。
断罪されるってことは、物語の中では、悪役令嬢みたいな役どころだろうか。
召喚されたときのあの態度・・・もともとそういう素質がありそうな気もしないでもないけど・・・。
いやいや、私情を挟むな、私。
赤薔薇の君は、無理して悪役令嬢を演じているようだ。




