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翌日、赤薔薇の君を迎える日がやって来た。
レイ君がリュウ先生に相談したところ、普段は立ち会わない自分がいるとかえって警戒されるから、物陰からこっそり様子を見る、ということになった。
確かに、いきなり3人がずらっと目の前に並んだら不審に思われる。
何事も、段階を踏んで徐々に・・・ということで、まずは普段通り、レイ君と私が対応することになった。
「転移者の方をお連れしました。」
天界の方が、赤薔薇の君を三室に案内してきた。
レイ君に言われて気付いたが、確かに以前より痩せているように感じる。
それに、化粧が濃い。
今までは、黒服さんに会うために念入りに仕上げてきているのだと思っていた。
彼女が転移した先は、中世ヨーロッパのようなところで、着ている服もそんな感じ。
私が着ているニットにスカートというものではなく、いつもドレスを着ている。
そして、ドレスの色に合わせた手袋をつけている。
私の二次元知識では、貴族のお嬢様は手袋をつけている場面も多かったから、まったく違和感を感じなかった。
レイ君が受付から診察室まで案内し、私がハーブティーを淹れ彼女の前に出す。
「今日は、こっちでゆっくり話しましょー。お店に行っても全然僕と話してくれないしー。」
「そうだったかしら?でも、私早く行きたいのよね。最近いろいろ忙しくて来れなかったんですもの。」
「えー、たまには僕ともお話してくださいよ。僕も仕事しないと上司に怒られちゃうし!」
「仕方ないわね~。少しだけよ?」
などと会話しながら、レイ君が近況を尋ねていたりする。
― そういえば、赤薔薇の君は向こうでどういったお仕事をしてるんだっけ・・・?
確か成人ギリギリの年齢だって言ってたし、学生とかじゃないはず。
それに、着ている服だってどこぞのお貴族様のような華やかなものだ。
無理していなければ、きっといい暮らしをしているに違いない。
そうでなければ、師匠のお店に足繫く通うことなんてできないもの。
改めて赤薔薇の君の資料をめくってみる。
転移先はっと・・・え、貴族の家?侯爵家?
これまた二次元の知識しかないけど、侯爵家といえば、けっこうなご身分なのでは?
どうしてまたそんなところに・・・なんの目的で召喚されたんだ?
聖女様業をしているわけではなさそうだし、それじゃあ普段なにしてるの?
元の世界では・・・あぁ~、こちらもけっこうな格式高いお家のお嬢様だったのか。
それなら、お貴族様の暮らしに馴染むのも早いわけだ。
サラリーマン家庭の、ど平民の私がそんなところに召喚されたら、本来の目的を果たす前に、マナーの壁で心折れちゃう。
そんなお嬢様が、どうして召喚に応じたんだろう?
でもな、リュウ先生だって総合病院のお坊ちゃまだけど、ここにいるんだもんね。
いろいろ・・・あったのかもしれないよね。
ここでは、元の世界のことを尋ねるのはご法度だ。
転移者の方から話す分には構わないが、こちらから聞くことは絶対にしない。
新しい世界での生活は、決して順風満帆なわけではない。
うまくいかないこともあるし、元の世界に帰りたいって思うことだってある。
そんな時に、二度と帰れない世界のことを持ち出したら、転移者の方の決断を揺るがす事態になる。
私たちは、転移者の方が新しい世界で暮らしていけるようにサポートする側なのだから。
「そうなんですねー。ちゃんと仕事してるようで、安心しましたよ。」
― え、仕事してるんだ!
「当たり前じゃない。いくら家が裕福だからって、お店の費用まで出させるわけにはいかないでしょう?でも、時々ちょっと助けてもらうけどね。」
「ご利用は計画的に、ですよ?最近、お元気がないようだったから心配してたんですよね。」
「・・・あら、そうだったかしら?私、いつもと変わらないけど?」
そう言った赤薔薇の君の手袋に、ぎゅっと皺が寄った。




