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勇者様が領地に旅立ってからきっちり二週間後、天界経由で無事に着いたことを知らされた。
先日のラルドさんの話を聞いて、かなり心配していたが、その報告を受け取って心底ほっとした。
ラルドさんの話を中断したリュウ先生は、すぐにマイケル先生に相談し、天界に護衛依頼を出したそうだ。
道中、何者かに襲われて命の危険が迫った場合には、すぐ保護できるように。
もちろん、妻である王女様と共に。
落ち着いたら面接に、ということにしたが、落ち着かなくてもいいから無事な姿を見せてほしいと願うばかりである。
ちなみに、ラルドさんとの商談は無事に成立した。
余計なものまでセットで押し付けられそうになり、ハーブティー以外の物まで要求されたところで、リュウ先生が戻ってきたため、どうにかケーキだけで済んだのだった。
リュウ先生が帰って来た時、ラルドさんが舌打ちしていたことは忘れない。
「ラルド君に取引を持ち掛けるなんて、バカなのか?」と、リュウ先生にはこってりネチネチとお説教をいただいた。
・・・でもさ、食べたかったんだもん、『一流』とかいうパティシエのケーキ!
次回のラルドさんの訪問を楽しみに待っている間、通常のお仕事は待ってくれない。
日々の仕事をなんとかこなしている中、レイ君から相談があった。
「ねぇ、ミサトちゃん。ちょっと相談があるんだけど、いいかなー?」
「どうしたの?レイ君が相談って珍しいね。」
― 前はマダムこと、アズ師匠(お姉ちゃんVer.)への恋煩い?だったけど、まさか、また!?
「俺が担当してる女性がいるでしょう?」
― ええっと、誰のこと?全員女性だから誰のことだかわかんないよ。
「レイ君の担当の女性って、たくさんいるから・・・誰?」
「あっ、ごめんごめん。明日来る女性だよ。」
明日と言われてスケジュール表を見ると、確かに予約が入っている。
― あ・・・赤薔薇の君・・・。
緋色の髪が特徴的な、お姉ちゃん師匠に少し雰囲気の似ている、あの華やかな女性。
ジュエル先生が旅立った後間もなく召喚された女性で、その対応が原因でリュウ先生と大ゲンカになったっけ。
その後、レイ君が引き継いでお店に案内してからは、リュウ先生へのお誘いはパッタリとなくなった。
お店の、ナンバー2の黒服様をいたくご贔屓にされているようだけど・・・、女王様のような赤薔薇の君が、いったいどうしたというのだろう。
散財しすぎて、向こうの世界でよろしくない事態にでもなったというのだろうか。
「その彼女がどうかしたの?この前来た時・・・って、いつもロクに面接もしないですぐお店に行くよね。」
「あはは、ミサトちゃんもキビシイな~。ちょっと私怨入ってなーい?」
― ギクっ!
「そ、そんなことないよ!あるわけないじゃん、仕事だし。」
「ほんとー?ま、いっか。そういうことにしてあげる。その彼女だけどさ、最近様子がおかしいんだよね。」
「様子がおかしい?どんなふうに?」
「なんていうのかなー。お店の中で一人になる瞬間ってあるじゃない?トイレ行くときとか。」
― さすがにトイレに行くまで付き添わないよね、狭いお店だし。
「そのとき、無表情になるんだよ。最初見た時はびっくりした。」
『無表情』と聞いて思い出すのは、ウィリアム先生だ。
あれは、ほんっとうに心臓に悪い。
「でさ、トイレに入ってる時間も長くなってきて。それに最近は、少し痩せような気がするんだよねー。」
「レイ君が心配になるくらいだから、ダイエットってわけじゃなさそうだね。」
「そうそう。痩せたって言うより、やつれてるって感じ?」
「それは確かに心配だね。ね、明日はちゃんと面接して、リュウ先生にも診てもらったほうがよくない?」
「だよねー。ミサトちゃんは・・・それで大丈夫?」
「公私混同はしないから、大丈夫だよ。」
・・・多分ね!




