閑話【ラルドの見聞録】
みなさま、こうしてご挨拶させていただくのは、初めてですね。
ワタクシ、世界を巡る名もなき旅人であり、今は『ラルド』と名乗る者、以後、お見知りおきを。
実は私、15歳のときに召喚されましてね。
それから、とある国で宰相と軍師と外交・・・え?聞いてない?
ゴホン、大変失礼しました。
私の身の上を語りだしたら、軽く300ページは越える読み物になりますので、今日はやめておきましょう。
そんなこんなでいろいろとありまして、現在はジン様の世界でスイーツ職人の傍ら、外交官などという仕事をしております。
ジン様が一国の主なら、諸外国との交渉役として八面六臂の活躍を見せていたことでしょうが、残念ながらその世界では至高のお方であり、交渉する外国が存在しないのです。
という訳で、センター限定の外交官に甘んじております。
センターには天界、魔界、人界があることは知っています。
ですので、まずは手始めに新たなエリアを設置するべく奮闘しておりました。
お名前がジン様なだけに、神界!我ながらなんていいネーミングセンス!!
おや・・・・・・・あまりうけなかったようで・・・。
しかし、私の野望は魔界のルキウス様に阻止されてしまいました。
さすがの私もゴリ押しできなかった、あのルキウス様の迫力といったら・・・。
少し漏らしそうになったのは内緒ですよ?
エリィ様の口添えで、どうにか小売店程度の拠点は確保できましたが・・・このままで終わると思うなよ、であります。
このセンターを足掛かりに、いずれ異世界の各国と外交してみせますよ。
さて、私が今どこにいるかというと、リュウさんとミサトさんのいる三室の前です。
どこぞの勇者様がいらっしゃっているようですね。
今日来ているのは・・・ああ、魔王を討伐したという例の勇者ですね。
褒章として、王女様に領地に爵位でしたか。
それねぇ、王家の犬にする常套手段ですよねぇ~。
さすがにリュウさんは気付いたようですが、ミサトさんは・・・あの人に政治のことはわかりませんね。
なになに・・・?ほう、王家の犬になるのを了承したのですか。
ていうか、絶対意味わかってないですよね・・・はぁ、お人好しだなぁ、この勇者。
いてもいなくてもいい第三王女なんて、真っ先に切り捨てられる対象なのに。
え?なんで聞こえているかですって?
よくぞ聞いてくださいました!
何を隠そう、この私、ジン様のお力により魔法を扱えるようになったのです。
今は、魔法を使って、周囲の音を拾っている最中です。
この三室は防音もバッチリで、普通の方には中の音は聞こえないようになっていますが、ほら、そこは、魔法でチョチョット、ですよ。
これでもジン様の眷属となりましたから、魔法の封印は効かないんですよねぇ、ウフフフ。
タウンの教会にある天界派遣部にもちょくちょく通わせていただいてましてね。
そこで、面接にくる転移者のスケジュールなんかもチェックできますから、三室のお二人の予定を把握するのに魔法を使うまでもありません。
これも私の人心掌握のなせる業、ちょっとお願いすれば教えてくださいますよ、天界の下っ端さん。
おっと、面接が終わったようですね。
ここで見つかってはまずいのでひとまず退散しないと。
おや?リュウさんのあの顔・・・へぇ、珍しく他人の心配してる顔ですねぇ。
ん~、確証がほしいってところでしょうか。
仕方ないですねぇ・・・ここは私が一肌脱いて背中を押してあげましょうかね。
はぁ~・・・まったく、いつまでたっても世話の焼ける友人たちです。




