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ラルドさんの口から、物騒な言葉ばかり流れてくる。
もしそれが現実に起こってしまったら、明日出発する勇者様と王女様が狙われるかもしれないってこと?なんで?どうして?
「とまあ、つらつらと思いつくまま言ってみましたが、私だったらそうする、というだけの話です。さすがにそこまで性悪ではないでしょう。」
― 自分で言うんだ!
「へぇ、自覚あったのか。」
「『やっぱり』と言ったリュウさんだって、性悪ですからね?ほら、ミサトさんなんて、『なんでそんなことになるの!あんまりじゃない!』って顔してましたし。」
― ・・・・・・。
「とはいえ、今までの私の話に少しでも合致するところがあれば、可能性はゼロではないでしょう。ま、そこそこ頭の回る参謀がいるってことです。」
― それも自分で言っちゃうの・・・。
「一つ教えてください。その勇者様御一行のお披露目はしたのですか?近隣諸国のゲストを呼んだ、大々的なパーティーとか。」
「開催した場合は?」
「そうなると、近隣との関係はあまりよろしくないですね。もしくは、こちらが仕掛ける側か。勇者様の行き先は、おそらく国境沿いの最前線ってところでしょう。自国からの刺客の心配は少ないが、渦中に放り込まれることは必至。安穏とした生活はそう続かないでしょうねぇ、お可哀想に。」
― 可能性が少ないって、ゼロじゃないってことだ。
リュウ先生は、なにを考えているのか、ラルドさんの意見に反論もしない。
いつもなら、エンドレス論争に発展するのに。
リュウ先生も、勇者様がなにか別の大きなものに巻き込まれていくのは予想してたんだ。
「よくわかった。貴重な経験談のご提供ありがとう。じゃ、そういうことで。」
「えええ~、たったこれだけですか?もっといろいろありますよ?例えば、そうですねえ・・・」
「悪いが今は必要ない。俺は少し外すから、あとはよろしくな、ミサ。」
― ・・・・は?え、ちょっと待っ・・・
言い返す暇もなく、リュウ先生は立ち上がり、三室から出て行った。
「おやおや、よほどお急ぎの用事があるようですね~。それじゃ、ミサトさん、私の話し相手になってくださいね。」
― 私に、務まるわけがないでしょうに!
「いやいや、私なんかと話をしても面白いことなんてありませんって。」
「またまた、そんなご謙遜を~。」
― そんなニコニコしてこっち見ないでくれる!
てか、仕事は?仕事してないの?スイーツで国を制する仕事はどうなったの?
「そ、そういえば、ラルドさんの本来のお仕事である、スイーツ作りは順調なんですか?」
「ミサトさん、私を誰だと思ってるのですか?そりゃもう!と、言いたいところなんですがねぇ。」
― あら?うまくいってないんだろうか。
あんなに自信満々に言っていたくせに、原材料が違うとうまく進まなかったりするのかしら?
「なかなか市井に流通しないんですよねぇ・・・はぁ、まさかこんな障害があろうとは、私も予想だにしませんでした。」
「障害ですか?それは材料とかオーブンとかの問題ですか?」
「そんなものはどうとでもなります。いや実は・・・うちの上司どもがねぇ・・・」
「上司?それって、ジン様とかキャリー様ですか?」
「ええ、そいつらが試食という名目で、ほぼ食べ尽くすんですよ。まだケーキ職人も少ないし、ただでさえ生産量が追い付かないっていうのに。困ったものです。」
「あ、ああ~、そういう・・・。」
― どさくさに紛れて、『そいつら』って言いましたよね。
そんなことより、あのジン様を虜にするケーキ、食べてみたいな~・・・あ、そうだ!
「ジン様を魅了するそのケーキ、私も食べてみたいですね。ということで、次回のハーブティーの対価はそのケーキで手を打ちましょう!」
ラルドさんの目が少し見開いた・・・ように感じた。
「あれ?あれあれあれあれ?まさかの商談ですか?ミサトさんが、この私に!一流の商人でもあるこの私に!なんだ~、やっぱり謙遜してたんですねぇ。ミサトさん、面白い話もできるじゃないですか!」
ラルドさんの目が、次はスッと細くなった。
久々に、自爆スイッチを押した瞬間だった。




