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リュウ先生の珍しく(!)ストレートな優しい言葉に、勇者様が泣き笑いのような、くしゃっとした顔になった。
勇者様が救った人は一人じゃない。
彼女さんのご両親も、商会の従業員も、その家族も、王家のゴタゴタに巻き込まれなくてすんだのだ。
縁談の相手の方も、積年の想いを実らせただろう。
二人の犠牲で、また多くの人を救ったのだ。
と言いたかったが、リュウ先生が彼女さんの話には触れなかったので、私も心の中でそっと思うことにした。
「はぁ~・・・、気が抜けました。俺・・・いろいろ頑張ってきたな~。」
「まだ気を抜くのは早いと思うけど。むしろここからが長いんだ。始まったばかりだろ。」
「えええ、また頑張らなきゃいけないんですか。」
「そうですよ。赤の他人と暮らす結婚生活って、案外大変なものですよ。お互い努力して歩み寄らないと幸せにはなれませんからね。」
「うわ~、ミサトさんまで厳しいな。まるで経験者みたいな口ぶり・・・って、え?」
勇者様の視線が、リュウ先生と私の顔を行ったり来たりした後、私たちの手元に移った。
― さすが勇者様、今まで気づかなかったとは!
「え・・・まさか・・・お二人って、え、そういうことですか!?」
「そういうこととは?」
― リュウ先生ったら、また意地の悪い言い方しちゃって。
勇者様のこと、けっこうお気に入りなんだな~。
「はぁ・・・リュウ先生って結婚するタイプじゃないと思ってたんだけどなぁ。相手がミサトさんだったとはびっくりです。」
― 勇者様もけっこう言うじゃない・・・それって、どういう意味かしら?
驚いた理由が、とってもとーっても気になるんですけど!
「あっ!失礼な意味じゃないですよ!ほ、ほら、リュウ先生って仕事の鬼って気がするし、女性のことをよくご存じだから、その・・・一人に執着する感じがしなくて、ですね。あはは。」
― あらぁ、女性の機微には疎そうだけど、ちゃんと人を見てるんだな~。
おおむねその通り、合ってる合ってる。
「へぇ。私は君に遊び人に見られてたんだな。」
― 実際、そうじゃないの。
「いやいや、そんな!それに、ミサトさんって・・・ええっと・・・」
― ・・・なによ、なに言い淀んでいるのよ。
どうせ、『普通の人だから、そんな普通の人と結婚するとは』とでも思ってるんでしょう?
ええ、ええ、わかってますよ。
それは自分が一番よくわかってますから。
「ふふ、そうですよね。私みたいな凡人と結婚するなんて、意外ですよね。」
「ああ、いえいえ!決してそういうわけじゃ!!」
「大丈夫ですよ。だいたい皆さんそういう反応ですから、慣れてます。」
「・・・・あ、なんか、すみません。」
― やっぱりそう思ってたんかい!
「いいえ~。これから王女様との結婚生活で、戸惑うことも多いでしょうから。そういう時には、一人で悩まず、私たちに相談してくださいね。」
「え・・・?いい、んですか?でも、王都は離れることになるし・・・。」
「センターでの面接がなくても大丈夫だと判断されるまでは、ここに通うことになる。君の行く領地の教会に新たな窓口が設置されるよ。申し訳ないが、君にはまだ通ってもらう必要があるね。特に女性の扱いについては、まだまだ指導が必要なようだ。」
「そんな手厚く・・・あ、ありがとうございます。知らない土地に行って、似合わない爵位貰って、これからどうしようって思ってたから、すごく心強いです。」
― どこまでもまっすぐで素直な勇者様だな~。
リュウ先生が放っておけないのもごもっともだ。
「ゴホン。では一つ私からアドバイスを。勇者様が不安なように、奥様である王女様も不安なはずです。だから、たくさんお話してください。それと、一人で突っ走って勝手に決めないこと。特に貴族に関することは王女様によく相談してくださいね。女性だって頼られると嬉しいものですから。」
「は、はい。わかりました。ミサトさん、けっこうしっかりしてるんですね。驚いた。」
― 素直すぎるのもどうかと思うよ、勇者様!




