718
勇者様が、神殿を頼り王宮の外へ出たことを聞いた私は、勇者様がまた面会に来るものだと思っていた。
しかし、いつまで経っても面接の予約が入らない。
3日経ち、一週間が経ち・・・そろそろ祝勝会が開かれて褒章の授与が行われる日が迫る。
勇者様は、街に出て彼女さんと会ったのだろうか。
音沙汰がないということは、再会してやっぱり彼女しかいないとか思って、駆け落ちとかしちゃったんだろうか。
「リュウ先生、勇者様から連絡が来ませんね。そろそろ祝勝会の時期ですよね。」
「う~ん・・・街に出て彼女を見たら、面接に来ると思ってたんだけどな。」
「ルカ君とミカ君は、引き続き情報収集してるんですよね。聞いてみますか?」
一度、浦島太郎な勇者様の状況を知るため、二室に調査依頼を出したのだ。
メイド姿になったルカ君とミカ君が、詳細な情報を持ち帰ってくれた後も、引き続き任務にあたってくれており、定期的に報告してくれている。
その後の報告では、勇者様と王女様に与えられる領地は、王都から相当離れたところであり、とてものどかな・・・はっきり言って田舎、らしい。
大きな商店もない小さな街が点在していて、王都の華やかさとは正反対の土地なのだとか。
王女様にも、特に裏の顔などはなさそうだった。
対して彼女さんは、幼馴染の貴族の次男との縁談が着々と進められているとのこと。
これは、家同士で進められていることである。
こちらも、かなり外堀が埋められているようであった。
そうした中での、勇者様の決断である。
彼女さんの縁談が、いよいよ決まろうとしている時に、街に出たのだ。
心配にならないはずがない。
「ルカとミカから報告が来てないから、行方不明にはなってないと思うが・・・。祝勝会とやらが終わっても来ないようなら、こっちから声をかけてみるか。」
リュウ先生も、けっこう心配しているみたいだ。
『センターに面接に来なさい』なんて、滅多に言わないのに。
「わかりました。ではケヴィン様にお願いしてきますね。」
「頼む。俺は二室に監視の強化を依頼してくる。」
というわけで、私はケヴィン様のを尋ねるため、教会に来ている。
「ミサトさん、いらっしゃい。今日はどうしました?」
今日もまた、ケヴィン様のキラキラは眩しい、眩しすぎる。
「またお願いがあって来ました。いつもいつも申し訳ございません。」
― 今日のお願いも、甘えじゃないよね。
面接に来ない勇者様に言伝をお願いするのは、天界経由でないとできないもん。
以前なら『ちょっと様子を見に』って、気軽に行けたんだろうけど。
むしろ行きたいんだけど。
「そんな、他人行儀なことはナシですよ。私とミサトさんの仲じゃないですか。」
― ええっと、どのような仲でしょう?
いろんな意味で怖くてツッコめず、笑って誤魔化すことにする。
「あ、あはは。ありがとうございます。先日お願いした勇者様ですが、祝勝会が終わって落ち着いたら、センターに来るよう言伝をお願いしてもいいでしょうか。」
「そのくらいお安い御用ですよ。それだけですか?他に私ができることはありませんか?」
― そんな期待に満ちた顔をされましても・・・なにもないんだけどな。
「い、いえ、今日はこれだけです。」
「えええ、そうなんですか?それは残念です・・・。」
― あああ、キラキラ具合がどんどん減って・・・、私にどうしろと!
「あ、そういえば、先日聖女様が袋いっぱいに植物を持って、三室に見えられました。かなり過酷な環境のようですが、頑張られているみたいですね。」
シュンとしたケヴィン様を放っておけず、エメラルドの聖女様の話を振った私である。
・・・だって、これしかネタがないんだもの!




