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「それでですね、聞いてくださいよ~、ミサトさん。」
エメラルドの聖女様の護衛の方の話は続く。
最初は、聖女様を取り巻く環境だったりしたのが、だんだん、センターの愚痴に変わっていった。
― 相当・・・ストレスが溜まっているんだな、これ。
転移者の方たちのケアが私たちの仕事じゃなかったかしら?
でも、今は聖女様待ちだし、急ぎの仕事があるわけでもないし、いいのか?
・・・・うん、いいことにしよう。
「はっ、すみません。つい話し過ぎちゃいました。あの、このことはケヴィン様やエリィ様には・・・」
― ははは・・・そうね、そうよね。
これバラしちゃったら、もっと過酷な辺境に飛ばされそうだもんね。
「大丈夫ですよ。ここだけの話にしておきます。それにしても、天界のお仕事もかなり大変なんですね。」
普段、キラキラしたエリィ様やケリーさんやケヴィン様としか接点がない私には、想像もつかない過酷なブラック環境だった。
「ええ・・・どの組織でも下っ端は大変ですよね。」
遠くを見つめながら、護衛の方が呟いた。
― ああ、わかるわぁ~。
下っ端だからって余計な仕事押し付けられて、ロクな指示もしないくせに遅いとか言われて、上司の思うような出来じゃなかった時の、あのネチっこい説教といったら・・・。
「私も、前の世界ではそんなことばかりでしたね・・・。」
「ミサトさんも同じような苦労をされてきたんですね・・・。」
そんな傷の舐め合いをしていると、調剤スペースのドアが開く音が聞こえた。
「そろそろ時間のようですね。今日はありがとうございました。私もだいぶスッキリしました。」
先ほどまでの親しみやすい態度から、キリっとした真面目な表情に切り替わると、スッと立ち上がり、調剤室へと向かった。
「お疲れさまでした。すぐ戻られますか?」
護衛の方が調剤室から出てきた聖女様に恭しく声をかける。
「はい。リュウ先生からいろいろ教えていただきました。急ぎ戻って殿下に報告しなくては。」
― お、おおう・・・以前とはエライ違いだ。
リュウ先生のことなんて、眼中にないじゃない。
「かしこまりました。それではリュウ先生、ミサトさん、私どもはこれで失礼します。」
「あっ、お待ちください。これはいつものハーブティーです。皆様でお飲みください。」
いつもは性別に合わせて1種類だけ渡しているが、今日は特別に2種類のハーブティーを護衛の方に渡す。
護衛の方がそれを受け取り、聖女様が「お気遣いありがとうございます、ミサトさん。」と答えてくれた。
どうやら、聖女様の中で私は生き返ったようだ。
「そういえば、ケヴィン様から言伝を預かっております。例の勇者様ですが、外に出るための協力を依頼され、神殿はそれを受け入れた、と。そう言えばわかるから、ということでした。それでは、私どもはこれで。」
聖女様と護衛の方が三室を出て行った途端、光に包まれてスッと消えて行った。
よほど急いでお帰りになりたかったらしい。
そんなことより、ケヴィン様の言伝って、あの勇者様のことだよね。
なんのために外に・・・って、彼女さんに会うため・・・だよね、やっぱり。
「あ~・・・疲れた。ミサ、コーヒー淹れてくれないか?」
リュウ先生の言葉に、ハッと我に返る。
― やべ、すっかり存在を忘れてた!
「リュウ先生、お疲れさまでした。今回は・・・ずいぶんとあっさりでしたね。」
「だから心配ないって言っただろう?生活環境は過酷みたいだが、聖女様の欲しいものが全てそこにあるんだ。余所見してるヒマなんてないだろうさ。」
「あ~・・・やっぱりそうでしたか。それより、勇者様が・・・。」
「ああ、そのようだな。彼女に会いに行ったのか、様子を見るだけなのか、どっちかな。祝勝会まで時間もないことだし、どうするのかな。」
勇者様、無茶しないといいけど・・・。




