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「勇者様は、大変な偉業を成し遂げられました。お金は正当な報酬です。それに、自分が贅沢するためのお金じゃないでしょう?目が眩んだなんて、そんなことはないと思います。」
― 次は私の番!と意気込んでみたものの、この後、どう続けたものか。
彼女さんに、会おうともがかなかったのは事実だ。
少しの間なら待ってくれてるはず、とか心のどこかで思ってたのかもしれない。
さすがに、そこはフォローできない。
「ミサトさん・・・。」
「彼女さんのことは、もう少し考えようがあったかもですが、その前に、あなたは国の、そこに住んでいる人たちの期待に応え、立派に責務を全うされました。そのことまで否定しないでくださいね。」
「・・・あ、ありがとう、ござい・・・。」
― 全部人任せにして、食い逃げしてたヤツと比べたら、月とすっぽんだ。
いやいや、比べること自体おこがましいくらいだ。
勇者様は、俯いたまま肩を震わせていた。
命の危険と隣り合わせの日常から解放され、ようやく安心して眠れるようになったのに、今度はまた別の責任を背負わされるのは、かなり堪えていると思う。
真っ直ぐで人の好さそうな勇者様なら尚更、ドライに取捨選択できないのだろう。
リュウ先生と違って。
私は、冷めてしまったハーブティを淹れ直し、そっとタオルを差し出す。
勇者様が落ち着くまで、何も言わずに待つことにした。
しばらくタオルに顔をうずめていた勇者様が、ゴシゴシとこすった後、顔を上げた。まだ少し目の周りが赤い。
「はぁ~・・・お恥ずかしいところを見せてしまい、すみませんでした。」
「いいえ。ここはそういう場所ですから気にしないでください。私たちは勇者様の住む世界とは、まったく関わりがありません。言いたくても言えない文句があったら、遠慮しないで吐き出してくださいね。」
「ははっ。その時はお願いします。」
勇者様は、少しスッキリとした表情になっていた。
「リュウ先生、彼女の今の状況はわかりますか?」
リュウ先生は、少し間をおいてから、ルカ君とミカ君の調査結果を伝えた。
「縁談・・・貴族の次男・・・。ああ、あいつか。」
「知っている男性か?」
「彼女の幼馴染だと思います。家同士の付き合いもあるって・・・そっか・・・そういうことか。」
― お一人で納得しているようだけど・・・って、また、あらぬ方向に突っ走ろうとしてない?大丈夫?
「勇者様?そういうことって、どういうことですか?」
「彼女の親御さんが俺との結婚を反対した理由の一つは、それかなって。なら・・・。」
― あああ、やっぱり~!!
彼女さんの気持ちは置いてけぼりにして、また一人で勝手に決めようとしてる~。
「・・・彼女を諦めるのか?彼女の気持ちも聞いてないのに。」
「リュウ先生に指摘されて、自分の考えの甘さに気付きました。だから、このまま彼女の前から消えます。縁談の相手が幼馴染なら、きっと全てがうまくいく。」
― それなら、ちゃんと会って終わらせたほうがスッキリしない?
「彼女さんには会わないのですか?」
「・・・それは・・・。少し考えます。」
「褒章の話は受けるのか?」
「断ったら反逆罪になりそうだし、それは嫌だな。」
「・・・一つ伝えておく。君の相手の王女様だが、かなり不遇な扱いを受けているそうだ。」
「・・・えっ?」
― 勇者様、そういうのに疎いって言ってたもんね、知らなかったんだね。
「王女様の結婚には、かなり政略的な思惑が含まれているようだね。王家の駒にされていることは間違いない。褒章の話を受けるのなら、王女様には辛くあたらないほうがいいと思う。これは、私からのアドバイスだ。愛情はなくても、君なら人を大切にすることはできるだろう?」
「・・・リュウ先生。」
「なんだい?」
「全て・・・全部終わったら、ヤケ酒に付き合ってもらえませんか。」
「・・・私たちが転移者である君たちとは、プライベートで関わることはない。」
― リュウ先生、それはあまりにも冷たすぎない?
「・・・やっぱり、そうですよね。」
「ヤケ酒には付き合わないが、祝い酒なら付き合うよ。」
「え・・・それって・・・」
「勇者様、覚悟してくださいね?リュウ先生はすごーくお酒が強いですから。それと、二日酔いに効くお薬は、この世のものとは思えない味ですからね。」
「はい、はい・・・ありがとうございます。俺、ちょっと頑張ります。」
こうして二度目の面接が終わり、素直じゃないリュウ先生と勇者様の背中を見送った。




