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「君は、なぜ一番に彼女に会いに行かなかったのか、と聞いている。」
「そ、それは・・・王に報告するのが当然だと思って・・・。そしたら、もう王宮から出られなくなって・・・。」
リュウ先生の質問に、勇者様は必死に答えを探しているようだ。
「私が君なら、そんな報告より先に彼女に会いに行く。そして彼女を連れて王都を離れる。王宮なんてところには二度と行かない。面倒ごとに巻き込まれるに決まっているからね。」
「・・・・・・。」
「褒章の話は、王都に入る前に知らされていたんだろう?」
「王都に入る前に、褒章は用意してあるから、と。希望があれば叶える、と。」
「君は何を望んだのかな。」
「彼女に、指輪をプレゼントしたくて、お金を・・・。それで指輪を買ってプロポーズに行こうと、しました。仲間たちとも、冗談交じりに褒章の話はしてました。これだけ大変な目にあったんだから、なにか貰わないと割に合わないよなって。だから・・・てっきり・・・。」
― 命をかけて討伐してきたんだもの、お金くらい望んだってバチは当たらないし、それは正当な報酬だ。
そのお金が、領地と爵位と王女様に代わるなんて、夢にも思わなかっただろう。
「万が一拘束されて王宮に無理やり連れて行かれても、私ならすぐに抜け出して彼女に会いに行くよ。時間がたてばたつほど自分の首が締まるだけだからね。」
「・・・・・・どうやって。」
「君を召喚したのは神殿だろう?ここに来られるということは、神殿なら自由に行けるということだ。なら、そこの責任者にかけあって、どうやっても出る。」
― リュウ先生の屁理屈なら、面倒くさくなって言うこと聞いちゃうかもだけど、勇者様には・・・難しいだろうな。
「彼女の商会は、君のいる国だけで商売しているのか?」
「あ、いえ・・・辺境と辺境を越えた隣の国にも支店があると聞いています。」
「それなら、拠点を隣国に移すよう両親を説得する。この国を捨てさせるよ。」
― リュウ先生なら・・・以下省略。
申し訳ないけど、勇者様はそこまで考えが及ばない、と思う。
先の先まで読める方なら、ここまで拗らせないもの。
でも、もしかしたら、勇者様がいの一番に彼女さんに会いに行っていたら、ご両親がそういう決断をしてくれたかもしれないな、なんてふと思った。
「・・・俺は、そこまで思いつかない、です。商会に迷惑をかけると思ったら、それだけしか・・・。」
「だから、仕方ない質問だと言っただろう?私と君は違う人間だ。そして。私は君より少しばかり人生経験があるから先を読めるだけだよ。」
― いやいや、人生経験があったって、そこまで頭回りませんから。
現に私だって『好きな人のためなら身を引きます』しか思い浮かばなかったからね?
「先週、我々は協力すると言ったね。神殿には、ここのスタッフがいる。神殿を動かせば彼女に会いに行けたんだ。でも、君は悩んで動けなかった。その間にも外堀は埋められていく。自分の思いを果たすのは、どんどん難しくなっていくよ。」
― そうよねぇ・・・彼女さんにもメリットのある縁談が既にいっているだろうし。
勇者様から音沙汰がないうえに、王女様との結婚が噂で聞こえてくれば、どう思うか。
ヘタしたら、彼女さんが悪者扱いされちゃうよね、冗談じゃないよね。
失意の中、誠実な人に誠実な言葉で優しくされたら、コロッといっちゃうかもしれないよね。
「・・・俺は、俺は、間違っていたんでしょうか。金に目が眩んで順番を間違えてしまったのか・・・。」
勇者様は、頭を抱えて項垂れてしまった。
― そろそろ、フォローが必要かな。
次は、私のフォロータイムである。




