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最初の面接を行ってからちょうど一週間後、勇者様がまた面接にやって来た。
明らかに憔悴した表情で、目の下にはうっすらクマまである。
よほど悩まれていて、ロクに眠れていないのが見てとれた。
「勇者様、大丈夫ですか?顔色が良くないみたいですけど。」
診療室に案内しながら、声をかける。
「あんまり大丈夫じゃないみたいです。」
― だよね、その顔じゃあね。
大きな決断をしなければいけないんだもの、いっぱい考えちゃうよね。
ソファーに座っても、ずっと下を向いている勇者様だった。
「その様子じゃ、睡眠をとれてないようだね。食事は?きちんと食べてるか?」
あまりの憔悴っぷりに、リュウ先生も厳しいことは言えない様子だった。
「どうでしょうか。あまり味を感じないので・・・。」
― これは・・・思ったより重症だぞ。
「そうか。睡眠と食事はきちんと取ったほうがいいんだが、今は難しそうだね。だが、君が倒れてしまったら元も子もないからね。少しずつでもいいから、なにか口にしたほうがいい。」
「わかってます。わかってますが・・・。」
そのまま、黙り込んでしまった勇者様である。
リュウ先生も私も、黙ったまま勇者様の次の言葉を待つ。
「俺、これからどうしたら・・・。」
しばらく待っていると、勇者様がボソッと呟いた。
「どうしたら、とは?君の心は決まったのか?」
勇者様は静かに首を横に振る。
「彼女は・・・彼女の家族はとても仲が良くて・・・家も大事にしていて、身分はそのとおりだけど仕事にも誇りを持っていて・・・。親御さんもすごくいい人たちで・・・。」
「そう。じゃあ、彼女は家族思いの素敵な女性なんだね。」
「はい。俺は前の世界でも、家族って呼べる人がいなかったから、すごく眩しく見えて・・・。自分も彼女とこんな暖かい家庭を作りたいって、そう思いました。でも・・・。」
そこで、また言葉が途切れる。
― 彼女と仲睦まじい家庭を作りたいけど、ご両親揃って幸せになりたいんだよね。
反対されて一緒になるより、みんなに祝福されて一緒になるほうが、いいもんね。
「でも?」
「俺が、彼女を選べば、彼女の家は・・・。彼女の親御さんは・・・。それに、苦労して大きくした商会が・・・。従業員の人たちもいい人ばかりで。」
「君と彼女の結婚のこと、ご両親は承諾しているのかな。」
「最初は反対されました。討伐に行くのはいいが失敗すれば死んでしまう。そんな男に娘はやれないと。無事に帰ってきたら考えてやる、と。」
「親としては当然だね。私が親の立場でも同じ答えをしたと思うよ。万が一君が命を落としてしまえば、彼女は未亡人だ。結婚歴のある女性が、円満な再婚など望めない世界もあるからね。」
― 別に不貞を働いたわけじゃないし、それは杞憂なのでは?
と思ったが、世界が違えば価値観も変わるから、なんとも言えない。
また勇者様は黙り込んでしまった。
そして、ふっと顔を上げて、思いつめた表情でリュウ先生を見る。
「・・・こんなこと、聞いても仕方ないと思うけど・・・。リュウ先生が俺の立場だったら、どうしますか。」
― それは・・・私が怖くて聞けなかったやつだ。
勇者様のその質問に、私の胸がドクンと跳ねた。
リュウ先生は、しっかりと勇者様の視線を受け止め、真っ直ぐ向き合っている。
「そうだな。本当に仕方ない質問だな。」
「うっ・・・。」
リュウ先生の一言は、まるで私にも向けられているみたいで、グサッと刺さる。
リュウ先生は続ける。
「君の話を聞いた後だから、なんとでも言えるよね、ってのはナシだ。それに、君にとってはかなり耳の痛い話になるよ?それでも良ければ。」
「・・・はい、わかってます。お願いします。」
リュウ先生の目が、スッと細められた。
「君は、討伐から帰ってきて、何故すぐに彼女に会いに行かなかった?」
リュウ先生の、現実直面パートが始まった。




