704
光の勇者君は、ドラゴン討伐より闇の勇者君に会うことを優先した。
彼は、今の状況を冷静に判断できていて、感情に任せて無謀な行動に出るようには感じられない。
「今いる場所で、我慢できなくなったらまずここに来なさい。彼のように一人で突っ走らないこと。それと、これまで通り定期的に面接は行いたいが、いいかな。」
「わかりました。あの・・・その際にまた実技のほうも指導してもらえますか。」
「いいよ。キャロル先生にはそう伝えておく。1か月に1回の面接に戻るが、必要があれば回数を増やす。遠慮せずに来るといいよ。」
「はい、ありがとうございます。よろしくお願いします。」
― 良かった、光の勇者君は、真っ直ぐ前を見ているようだ。
なら、私も私の仕事をしなくちゃ。
「私からもいいですか?」
「・・・なんでしょうか。」
― その微妙な間はなにかしら。
「これから、自分の生活管理は自分でやらないといけません。それも忘れないでくださいね。」
「・・・・あー、はい、ソウデスネ。」
― 途端にやる気なさそうな返事しなくてもいいじゃないの。
「三食食べて、しっかり睡眠をとる。そして、任務と訓練は遅刻しないように顔を出す。お休みするときにはきちんと上司に伝える。最後に・・・」
「あー、飴は1日3個まで、寝る前にこのお茶を飲めって言うんでしょう?はいはい、わかってます。」
― だ~か~ら~、『はい』が一つ余計だっての。
「わかっているなら、いいですけどね?これ、とりあえず1か月分ですから。ちゃんと量は守って食べてくださいね。」
私は、ドンと、飴の入った大きなビンを目の前に置いた。
「・・・・・・」
「今回は少し甘くしてもらいましたから。一度に食べ過ぎると太りますからね。」
「えー・・・、まじっすか。」
― だって、そうでもしないと、ゴハン代わりに食べちゃうでしょ!
「食べ過ぎたら訓練で消費するから、別にいいです。」
「あのねぇ、そういうことじゃなくて・・・」
「これがなくなったら、また来ます。」
「え・・・」
「仕方ないので、その時またミサト先生の小言聞きます。それでいいですか。」
― なに、その言い方。
まるで、私の小言聞くために来るって聞こえるじゃん。
・・・・・・こいつめ、わざとじゃなかったら、天然の人たらしだな!
くぅ~、その手に乗るかっての。
そんな嬉しいこと言われたって、甘い顔しないんだからね!
「小言を言われたくなかったら、しーっかり自己管理してくださいね?それと、私の小言を聞きたくなったら、飴がなくなる前でもいいから来てください。」
「はいはい、そうします。その時はヨロシクオネガイシマス。」
光の勇者君は、最後までやる気のない返事だったけど、ちょっとだけ私に笑顔を向けてくれた。
その後、これからの予定を再確認し、光の勇者君との面接を終えた。
「良かったな、ミサ。」
「え?ああ、彼がヤケを起こさなくて本当に安心しました。マイペースだけどしっかりした子ですね。」
「それもそうだが、ミサト先生も頼りにされてるようじゃないか。」
「ええ~?そうですかねぇ?あんなやる気のない返事で・・・でも、悪い気分じゃないです。次は言いすぎないよう気をつけなきゃ。」
「そうだな。口うるさい母親はウザイだけだからなぁ。たまには甘やかしてやらないとな。」
「もうっ!リュウ先生までひどいな!・・・2人は会えるでしょうか。」
「さあ、どうだろうな。会えるといいけどな。」
「そうですね・・・。」
闇の勇者君が魔族側の使者になって、光の勇者君が人間側の使者になって、そして魔族と人間が共存する世界にならないかな。
光の勇者君の背中を見送りながら、そんな期待をしてしまう私であった。




