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まだ包帯が巻かれている闇の勇者君は、痛々しく見えたが、歩き方も普通で、しっかりとした口調で、セレス様の言った通り大丈夫そうだ。
しかし、以前の人好きのしそうな柔らかい雰囲気は消え、今は少し近寄りがたくも感じる。
「これまでのこと、話せるか?」
まずは、リュウ先生がこれまでの経緯を尋ねる。
「だいたいは聞いているでしょう?クソ王女の発言により、僕はあそこに居づらくなった。だから居場所を変えただけです。」
淡々と答える闇の勇者君。
「なぜセンターに来なかった?」
「なぜって・・・、ああ、そうか。そういう方法もあったのか。ははっ、全く思いつきませんでした。よほど視野が狭くなってたようです。」
「なぜ危険と呼ばれるこの森に入った?」
「以前、この森に入ったときに妙な印を見つけました。あれに触ればどこかに行けるかと思って。まさか、ここに飛ばされるとは思ってみませんでしたけど。」
「運良くここに来たからいいものの、命に関わるような事態になったかもしれないのに?」
「そこは耳が痛いですね。あの印が転移装置だってことは、センターの図書室で調べたので知ってましたよ。あそこの蔵書、凄いですよね。勉強になりました。」
自嘲気味に話す闇の勇者君の目は、まったく笑ってない。
これが、人を寄せ付けない、冷たい鉄のような彼が、本当の姿だというのだろうか。
「それで、これからどうするつもりだ?」
「僕は、このままセレス様につきます。騎士団にもセンターにも戻るつもりはありません。あなた方と会うのもこれで最後です。」
― 最後って、なにを言ってるの?
転移者の人がどういう決断をしようが、私たちとの関係が変わるわけじゃない。
「リュウ先生が前にも言ったけど、センターは公平で中立です。あなたの決断は尊重します。それに、どっちにつこうとも私たちの関係に変わりはありません。今まで通り、定期的にお話を聞かせに来てください。」
闇の勇者君は、コテンと首を傾げ、私を見る。
「人間の、あいつの敵となるのに?人間たちを蹂躙するかもしれないのに?」
― それは・・・。
「君は、人間に復讐したいのか?」
「う~ん・・・どうかな。もともとあんまり興味はないのでどうでもいいです。討伐メンバーに選ばれたかったのも、魔族のところに行きたかっただけなので。」
― ・・・・・は?
「それは、どういう・・・」
「どうって、言葉の通りですよ、ミサト先生。時間をかけて根回しして、ようやくってところで、とんだ邪魔が入りました。最初からこうしていれば良かったって後悔してます。時間の無駄でした。とはいえ、転移装置を見つけたのが最近だったから、仕方ないですけどね。」
闇の勇者君は、肩をすくめてみせた。
「じゃあ、友人の彼と戦いたいって言ったのは・・・」
「友人?ああ、あいつのこと。リュウ先生は気付いていると思いますが、単なる利害関係の一致です。でも一度は勝ってみたいという気持ちに嘘はありませんよ。」
― 利害関係って、光の勇者君は必死にあなたを探してたのに!
「で、でも、彼は必死にあなたを探していましたよ?それは大切な友人だと思っているからじゃないの?」
「さあ、僕はあいつじゃないから、わかりません。話は以上ですか?」
「君は・・・なぜ魔族の側につく。魔族の側でやりたいことがあるのか?」
「別に。ただ面白いと思っただけです。ほら、物語みたいで面白いでしょう?人間のために召喚された勇者が魔族に寝返っちゃったって話。」
― な・・・。
「だからと言って自ら人間に危害を加える気はありません。しかし求められたら参謀のようなことはします。タダ飯食うわけにはいきませんから。僕ね、こう見えて実技よりそっちのほうが得意なんですよね。このことはあいつに言っても構いません。言ったところであいつが変わるとは思わない。さて、話は終わりです。リュウ先生、ミサト先生、今までご指導ありがとうございました。お世話になったあなた方の手を煩わせないよう、気を付けますね。」
そして、私たちは闇の勇者君の部屋から追い出された。




