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優し気な微笑みが消えたセレス様は、やはり魔族の方だということを再確認させられた。
圧倒されるようなそのオーラは、ルキウス様や真面目な時のアズ師匠と同じもの。
こちらの言葉を一つでも間違えれば、首が飛ぶような緊張感だ。
自然と、すっと背筋が伸びる。
「そう身構えなくてもいいよ。なにも君たちを責めるつもりじゃないんだから。」
セレス様は、闇の勇者君から事情を聞いたのだろう。
『責める』という言葉は、彼を追い詰めた人たちを良くは思ってない証拠だ。
「彼に会わせていただけますか。」
リュウ先生がセレス様に問いかける。
「うん、構わないよ。構わないけど先に謝っておくね。」
― 謝る?闇の勇者君を助けていただいて、感謝こそすれ謝罪されることなんてないはず。
「・・・セレス、てめぇ、なにかしやがったな。」
「だってぇ、全然面白くないんだもーん。だから、チョチョッと、ね?」
― チョチョッとって、なに!!
「私はね、人間の感情が大好物なんだよ。恐怖、嫉妬、羨望・・・。奥に隠している人間の感情ほど面白いものはない。あの子は巧妙に隠していたからねぇ~。それをちょっと引き出しただけ。うんうん、私好みの可愛いボウヤだったよ~。」
― ニコニコしながら、ずいぶんと恐ろしいことを仰ってませんか・・・?
確か、穏健派の方っていってましたよね?
セレス様は、ずいっと私たちのほうに身を乗り出してくる。
「あぁ、君たちもなかなか興味深いねぇ。なにを抱えているんだろうねぇ。とっても美味しそうだ。」
― やっぱり食うんかい!
感情を食われちゃった人間はどうなるの?生気を吸われて、抜け殻みたいになっちゃうの?
「おい、揶揄うのはそれくらいにしとけ。こいつらは俺の庇護下にある。手ェ出したら、たとえお前でも容赦しねぇぞ。」
「ふふ、わかってるよ。ああ、心配しなくてもいいよ。最後まで手は出してないから、あの子は元気だよ。ただ、ちょっと生き易くしてあげただけ。」
― 最後まで手を出したら、ど、どうなってしまうの!!
これで穏健派って・・・この世界の魔族の方の基準は、私とはだいぶ違うようだ。
「それじゃあ、あの子の部屋に案内するよ。まだ傷は完全に癒えたわけじゃないからね。大事をとって休ませているんだよ。私は人間と違って寛大だからね。」
自分で言うのかい!とツッコミたいが、怖くてつっこめない。
セレス様に続き、闇の勇者君が休んでいる部屋へと向かう。
「失礼するよ。君にお客様だ。入っていもいいかな。」
セレス様がドアをノックし、声をかけた。
すると、中から「どうぞ。」と闇の勇者君の声がした。
― よかった、元気そうだ。
セレス様に続き、私たちが中に入ると、闇の勇者君はベッドに座って本を読んでいた。
「リュウ先生、ミサト先生・・・どうして。」
闇の勇者君は、私たちが来ることを知らされてなかったのだろうか。
会ってもいいって言ってたじゃない・・・って、まさか・・・。
セレス様を見ると、「サプライズ大成功」とばかりに、ペロッと舌を出していた。
― あ~のねぇ~・・・ほんっとにこの方は・・・。
「ははっ。私は下でアズと遊んでいるから、ゆっくり話すといいよ。」
と、手をヒラヒラとさせて、スキップしながら出て行かれたセレス様だった。
「君の友人から話は聞いた。いろいろ大変だったな。」
「いなくなったって聞いて心配しました。ケガは大丈夫?」
「ええ、このとおり。立たせたままでは申し訳ないので、あちらに座ってください。」
闇の勇者君はベッドから降りようとした。
「私たちなら大丈夫。無理はしないで寝ていていいよ。」
「もう動けます。それほどひどいケガじゃないから大丈夫ですよ。」
闇の勇者君とともに、品のいいアンティーク調のソファーに座る。
セレス様はああ言っていたけれど、彼の受け答えはあまり変わったようには感じられなかった。




