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アズ師匠から伝えられたことは、私たちに会うことは会うが、センターには足を運ばない、ということだった。
信頼関係を築けない相手だと判断したのか、もしくは彼に敵認定されたのか、なんで、どうして・・・答えの出ない疑問が、頭の中をぐるぐる巡っている。
マイケル先生を含め、どうするか相談し、ひとまず向こうの世界で彼に会うことにした。
ただし、アズ師匠の同伴が絶対条件。
一番近い隣街の教会に降り立ち、そこから魔族の隠れ家へと向かうことにした。
教会から隠れ家は、アズ師匠の転移魔法で一瞬だった。
隠れ家というからには、こじんまりとした別荘を思い描いていたが、そこにはお城みたいな大きな建物があった。
鬱蒼と茂った森に囲まれているが、そこだけぽっかりと平地が広がり、柔らかな光が差し込んでいる。
手入れされた庭ではないものの、小さな花が咲いていて、ここだけ別世界のようだった。
「リュウもミサトも、俺様から離れるなよ。勝手にうろちょろしたら、魔物の餌食になるぞ。」
― ひ、ひぃぃっ!
「こ、こんな静かなところに魔物ですか?え、どこ?」
「館の周りの森の中、こっちを伺ってる。よく見てみろ。」
アズ師匠に言われて、暗い森のほうをよくよく見てみると、なにやら赤い点々が見え隠れしている。
― そういえば、光の勇者君が『瞳が真っ赤』って言ってた・・・。
あの赤い点々は、まさか魔物の瞳とか・・・え、ちょっと、何匹いらっしゃるのかしら。
途端に恐ろしくなり、アズ師匠の腕にギューッと縋ってしまった私であった。
リュウ先生も、かなり緊張しているようで、表情が引き締まっているように見えた。
「おー、来たぞ。開けろ。」
アズ師匠が声をかけると、入り口の重厚な扉が音もなく開いた。
― この館の主である魔族の方は、どんな方なのだろうか。
全身真っ黒で、角が生えていたり、黒い翼があったり、鍵みたいなしっぽが生えていたりするのかな。
私が二次元でみた魔族の方々は、そんなビジュアルが多かった気がする。
「やあ、いらっしゃい異界の人たち。どうぞ中へ。」
― 誰、このイケメン様・・・。
少し長めのシルバーの髪が、光をうけてキラキラ輝いている。
その優し気な微笑みと立ち居振る舞いが誰かを思い出させる。
・・・・・・ああ、キャロルさんに似ているんだ。
キャロルさんが男性だったら、きっとこんな感じだ。
てか、魔族っていうより、天界の方みたいだな!この国の魔族って、みんなこんな感じなの!?
私たちは客室に通されたが、その客室もまた豪華なものであった。
「ここには客人が滅多に来ないからね。歓迎するよ。さぁ、座って。今お茶を淹れよう。」
言われるがまま、3人並んで腰かけても、まだ余裕があるソファーに座る。
― どんだけ大きいのよ、アズ師匠の部屋にあるソファーより大きいのでは?
しかし、お茶を運んできた方を見て、現実を思い知る。
所作は、アズ師匠のお店の黒服の方にそっくりだが、鱗にしっぽ・・・ト、トカゲさんだろうか。
「ふふっ。彼を見ても驚かないんだね。たいていの人間は顔を青くするのに。」
「こいつらは慣れてるんだよ。残念だったな。」
「なんだ、つまらないな。人間の恐怖に歪む顔が見たかったのにな。」
― 優しそうなお顔をしてらっしゃるのに、ずいぶんな嗜好をお持ちで・・・。
「はぁ~。お前なぁ、いい加減その悪趣味はヤメロ。嫌われるぞ。」
「えええ、それは嫌だなぁ。私はみんなと仲良くしたいだけなのに。」
― アズ師匠とずいぶんと親し気だけど、二人はお知り合いなのかしら?
えーっと、本題に入りたいんだけど、どう切り出したらいいのかな。
ヘタに口を出して機嫌損ねちゃったら、闇の勇者君に会う前に追い出されそうだし、どうしよう。
「ああ、ごめんね。自己紹介がまだだったね。私はセレス。アズとは古くからの知り合いだよ。」
「こんなツラしてても魔族だからな。油断するんじゃねぇぞ。食われるぞ。」
「やだな!アズと一緒にしないでくれるかなぁ。私は紳士なんだよ?いきなり取って食いはしないよ。」
― でも、食うんだ!
「私は、センターの人界のスタッフで、リュウといいます。専門は薬です。この度はお世話になります。」
「同じくミサトと申します。よろしくお願いいたします。」
「リュウにミサトだね。こちらこそよろしくね。今日はあの子に会いにきたんだったね。」
セレス様の顔からすっと笑顔が消え、その深紅の瞳があらわになった。




