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闇の勇者君はヤケになったのか、一人で魔物の森に踏み込み、さらに魔族のエライ人に助けられ、無事でいることが判明した。
最悪の事態にならなくて、本当に安心したが、問題はここからだ。
「そ、それで、彼は今どうしているんですか?」
「まだそこにいたな。それほど深い傷は追ってないらしいぞ。」
「よ、良かった・・・。リュウ先生、どうしますか?王宮に帰っても居場所はないだろうし、一旦、センターで受け入れますか?」
「そうだな。それが一番か。アズさん、こちらに連れてくることは可能ですか?」
「どうだろうなぁ。そいつの考えを聞いてからにしたほうがいいんじゃね?」
― え?
「それはどういうことですか?え?だって、一人で討伐しに向かったんじゃ・・・」
「ん~・・・、なんかなぁ、聞いた話だとそうでもねぇみてぇだぞ。そもそも討伐に行ったわけじゃないらしいからな。」
― 討伐が目的じゃない?それじゃなんで危険な森に足を踏み入れたの?
「・・・・・・まさか、寝返るつもりだった・・・のか?」
― は?寝返るって、人間を裏切って魔族の仲間になろうとしてたってこと?
「俺様も、本人から直接聞いたわけじゃねぇから、本当かどうかわかんねぇけどな。少なくとも、帰る気がねぇのは確かだろうさ。」
「「・・・・・・」」
― 望まれて召喚されたのに、あんな扱い受けてそうなっちゃうのは、わかる。
だからって敵方に寝返って、人間の生活を脅かそうものなら、二室案件になる。
人間が一方的に魔族の世界を蹂躙しているわけではなく、被害を受けてるのは事実だもの。
でも、転移者の決断は尊重しなくてはならない。
それに・・・光の勇者君には、なんて言えばいいんだ。
「・・・彼に会えますか。」
「さあな。でもまあ、魔族のヤツを通してコンタクトは取ってやる。だが、あんま期待すんなよ。」
― アズ師匠がそう言うくらいだから、きっと闇の勇者君は頑ななんだろう。
唯一の安心材料は、その魔族の方が穏健派で、人間を敵対視していないことだ。
その方のところにいれば、彼の安全は守られる・・・と思いたい。
「あとなぁ、魔族同士の争いに巻き込まれたくなかったら、余計な手出しはしないほうがいいって言ってたぞ。」
なんとも不吉な言葉を残して、アズ師匠は三室から出て行かれた。
しん、と静まり返った三室は、なんともいえない重たい空気である。
リュウ先生も私も、しばらく言葉を発することができずにいた。
「・・・リュウ先生、どうしましょう。」
「まずは、あいつの本心を聞かないと、どうにもできないな。」
「見つかったことを、なんて言えば・・・」
「よりによって、魔王の子供のところかよ・・・。あいつ、なんで最初にここに来ないかな。」
はぁ~、と深いため息とともに天を仰いだリュウ先生であった。
「すみません。私がもう少し踏み込んでいれば・・・。」
ここに来なかったのは、闇の勇者君の中で、センターは頼りにならないと判断されたも同じだ。
もう少し時間があれば・・・は、言い訳だ。
信頼関係を築けなかった、私のせいだ。
「ミサのせいじゃない。俺のほうが長く関わっていたんだ。教え子の不祥事は指導者の責任だ。」
「そんな・・・。それじゃあ、今回は私たちの責任ってことで。」
リュウ先生は、私を見て苦笑いをした。
「ああ、そうだな。でもまだ手遅れじゃない。」
「そうですね。まずはどうにかして、彼と話をしないと。見つかったことはどう説明しますか?」
「さすがに魔族のもとに匿われているのは言えないな。深手を負って動けないくらいにしておこう。こちらで居場所は把握しているから心配ない、と。」
リュウ先生は、教会を通じて光の勇者君に伝言をお願いした。
ついでに、魔王討伐を考え直したほうがいいことも報告している。
教会(というか天界)は、神のお告げとして王様に進言したとのことだが、具体的な時期についてはまだ決まっていないようだ。
被害が出ているのは事実で、延期はしても中止する気はないらしい。
そんな中、アズ師匠から連絡があった。
「会ってもいいってよ。ただし、あっちで、だそうだ。」




