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御前試合が迫った勇者候補君たちは、どんな思いで過ごしているのだろう。
光の勇者君は、闇の勇者君に、試合を辞退することを伝えたのだろうか。
仕事の合間にも、ふとそんなことを考えてしまっている。
最後の指導と面接の日が待ち遠しいような、来てほしくないような。
落ち着かない気持ちの中で、日々を過ごしながら過ごしていたのだが・・・。
翌日に闇の勇者君の面接を控えていた水曜日の午後、三室のドアが開いた。
― あれ?今日の午後は、面接の予定も入ってなかったはず。
あれは、アズ師匠の開け方じゃない・・・誰かしら?
不思議に思って受付に行くと、そこにいたのは光の勇者君だった。
いつも表情を崩さない彼が、珍しく焦った顔をしている。
「ど、どうしたの?今日は面接の予定はなかったはずだけど・・・。」
「突然すいません。あいつ・・・ここに来てませんか?」
― あいつって、闇の勇者君のこと、だよね。
「あいつって・・・あなたの友人のこと?」
「ええ、そうです。」
「ここには、指導の日以外一度も来たことがないよ。・・・なにかあったの?」
「チッ。いえ、それならいいです。それじゃ。」
「ちょっと待って。いったいなにがあったの?理由を聞かせて。状況次第では力になれるかもしれないから。こっちに来て。」
― これは只事ではない。
何事にも動じない光の勇者君の焦りようと、その舌打ちは、相当マズイことが起こってるに違いない。
そう思った私は、光の勇者君の腕を取り、強引に調剤室に連れて行った。
私が光の勇者君とともに入ってきたことに、リュウ先生も驚いていた。
「今日は指導の日じゃないはずだが・・・どうした?」
「ね、こういう時には、大人を頼っていいんだよ。それに、このセンターは、あなたたちを助けるための場所なの。だから、一人で抱え込まないで、事情を話してくれないかな。まずは座って。」
「・・・・・・」
光の勇者君は、とうとう観念したのか、ソファーに座った。
私は急ぎ、いつものミント水を彼に出す。
「まずは、これを飲んで落ち着いて。ゆっくりでいいから、なにがあったのか教えて。」
光の勇者君は、ミント水を一気飲みした後、ふぅっと息を吐いた。
「・・・あいつが、どこにもいないんです。」
「どこにもいないって・・・自分の部屋にも、王宮にも、騎士団にもいないってこと?」
光の勇者君は黙って頷いた。
「いつから姿が見えなくなったの?」
「昨日からです。時間になっても任務に来なかったんです。今まで一度だって遅刻したことも欠席したこともないからおかしいと思って部屋に迎えに行ったんですが、もぬけの殻で。それで、心当たりは探したんですが、どこにもいなくて。」
― 闇の勇者君が、仕事をサボって逃げ出したの?
優等生を絵に描いたような、あの彼が!?
二の句が継げない私に代わり、リュウ先生が話しかける。
「いなくなるまでに、なにがあった。君が試合を辞退することは話したのか?」
光の勇者君は、首を横に振った。
「いえ。話すのは、最後の日と決めてましたから。」
「なら、ほかに原因があったということか。思い当たることは?」
「・・・実は、御前試合がなくなったんです。」
― ・・・・・・はぁ?
「試合がなくなった?討伐は諦めたってことか?」
「違います。正確には、試合がなくなったのは、僕たち剣士だけ。他のメンバーは行われます。」
「・・・・・・王命か。」
リュウ先生の言葉に、光の勇者君が頷いた。
― 王命って、王様が直々に剣士を指名したってことだよね。
その王様の命令で、御前試合が行われるんだったよね?なのに、なぜ今更?
「君の友人が姿を消したってことは、その王命のせいだけじゃないな。話せるか?」
「はい。実は・・・」
光の勇者君は、その日あった出来事をポツリポツリ話し始めた。




