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それから週に1回、勇者候補君たちが交互に指導を受けにやって来た。
黒髪の闇の勇者君は、キャロルさんの剣の指導の後、リュウ先生の空手の指導を受ける。
二室に行くときに、見慣れない道具を持っていたリュウ先生。
黒い四角いもので、ちょっと大きめのリュックに見えなくもない。
それがなにか聞いてみたところ、『ミット』というものだった。
殴る蹴るを受けるための道具で、クッションみたいなもの?らしい。
・・・・・・なぜ、日本の空手に使う道具が、ここにあるのだろうか。
どう考えたって、一般的なものじゃないのに。
対して金髪の光の勇者君は、実技指導がない日は、図書室に入り浸っているらしいことがわかった。
向こうの世界での生活には支障がないのだろうか。
毎日のようにセンターに来ているのは、闇の勇者君も知っているはずだが、同行してないようだ。
私はといえば、実技指導が終わった後、少しだけ会話をする程度である。
まだ始まったばかりだし、今は実技指導の時間を多くとったほうがいいと思ったからだ。
・・・面接を避けているわけじゃないですからね、一応、念のため。
闇の勇者君は、私が出したミント水を美味しそうに飲んでくれて、必ず「すいません、おかわりいただけますか。」と恥ずかしそうに申し出てくれる。
リュウ先生とキャロルさんのトンデモ考察を聞かなければ、『素直で可愛らしい子だな』で微笑ましく思っていたのに、それが私を懐柔している態度だと思うと、かなり残念な気持ちになった。
だがしかし、私もいい大人である。
そんな気持ちを態度に出してはいけない。
逆に御しやすいカモだと油断して、なにかポロっと本音を言ってくれるかもしれない。
そう気持ちを切り替えて、『な~んもわかりませんよ~』みたいな顔して対応している。
・・・うまく誤魔化せているかは、正直自信はないけれど。
本当のところ、彼の絞り出すように言ったあの言葉を信じたい気持ちもある。
光の勇者君が入り浸りになっていると聞いて、真っ先にリュウ先生にお願いしたのは、ハーブティーのキャンディ化であった。
以前、ソーマ君が来た時に作りかけた、あれ。
ハーブティーを淹れるには、水を用意してお湯を沸かさないといけない。
多分、おそらく、いや、絶対、面倒くさくてやらないだろう。
そんな時間がもったいないと、水で済ますに違いない。
なんなら、水すら飲まないかもしれない。
即席で作ってもらったキャンディは、正直微妙な味だったが、食にも無頓着そうな彼なら、きっと食べてくれると思う。
それが、ゴハンの代わりにならないことを祈るばかりだ。
そうしてしばらく様子を見ること1か月余り、2か月目に入ったタイミングで、少し長めに面接時間を設けることにした。
最初は、やっぱり闇の勇者君である。
そして、今日から私が主導となって面接をすることになる。
「今日からは、私が担当になりますね。リュウ先生とキャロル先生は実技指導なので、私は生活指導です。よろしくお願いしますね。」
「そうなんですね。生活指導って、教師みたいですね。」
「前の世界では、学園に通っていたと聞きました。医務室とか保健室とかありました?」
「騎士を養成する学園でしたから、当然ありました。」
「なら、私は保健室の先生ということで。あっ、食堂のおばちゃんでもいいですよ。『もっと食べないともたないよ!』って、お節介な感じの。」
「ははっ。ミサト先生は面白いこと言うんですね。生活指導って言うから、構えちゃいました。」
相変わらず、打てば響くような答えである。
「ゴホン。では、指導を始めます。ゴハンはちゃんと三食食べてますか?ケガとか痛みをガマンしていませんか?あと、あのハーブティーはちゃんと飲んでいますか?」
「わ、本当に生活指導じゃないですか。母親みたいだな!」
「ん~、そこは、『お姉ちゃんみたいだな』って言ってほしいところですね。」
「あっ、つい。・・・すみません。」
私の隣で、呆れているような気配を感じるが、気にしない気にしない。
抱えているものを吐き出してもらうには、時間がなさすぎる。
今回は、お節介おばちゃん風でいこうと決めた私である。




