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闇の勇者君と一つの席を争うことを問われて、光の勇者君はすぐに答えを出せなかった。
これまでも、模擬戦とかあっただろうけど、今回は重みが全然違う。
何か月も何年も離れることになるし、ヘタしたら一生会えなくなってしまうかもしれない。
すぐに答えられるものではないんだろう。
「・・・特には。いずれは別々の道を行くでしょうから。」
「そう?2人とも選ばれるような道は探さないの?」
「・・・・・は?」
「討伐メンバーに剣士が2人いてもおかしくないよね。なんで1人なんだろうってずっと疑問だったんだよ。」
― そうそう、私も疑問だった!
戦いのことはわからないから、そういうものなんだ~で蓋しちゃったけど。
「旅の費用もかかるだろうし、討伐に失敗した時のことを考えてのことじゃないですか。よくわかりません。興味もないし。」
「ああ、なるほどね。後発隊も視野に入れてるってことか。」
― 魔王の居城までどのくらいの距離かわからないけど、ずーっと野宿ってわけにはいかないもんね。
宿屋や食料のことを考えたら、1人2人じゃないだろうし、けっこうお金がかかるのか。
・・・そういえば、飲食代踏み倒していた勇者様がいたっけ・・・。
「もし、君が負けたら、その後のことは考えてる?」
「どうかな。負けるとは思わないです。」
「へぇ、やっぱり自信があるみたいだね。」
「でも、選ばれるのは僕じゃないと思います。」
― それもわかってるんだ・・・どこまで勘のいい子なんだろう。
「なぜそう思うのかな。」
「周りが僕についてこれないから。連携取れないんじゃないかな。」
― す、すごい自信だ。
「君から歩み寄ろうとは思わないの?」
「弱い人たちに合わせてたら、勝てる戦いも負けます。僕みたいなやつはソロのほうが合ってる。自分のことはわかってるつもりです。」
― 本当に一人で討伐に行って、一人で倒しちゃうんじゃないのかしら!
でも・・・人を拒絶している感じがするのは気のせいかな。
その才能のせいで、やっかみも受けそうだし、嫌な思いもいっぱいしてきたのかな。
「君もいろいろ大変そうだね。そこまでわかってて、御前試合には出るの?」
― リュウ先生には、天才君の気持ちがわかるんだろうね、きっと。
それが原因で、日本であんなことになったんだろうし。
「どうでしょう。まだ決めてません。」
― ・・・・・・え?決めてないって・・・じゃあ、なぜ指導を受け入れたの?
もし、その試合を棄権したら、闇の勇者君の思いはどうなるの?
「御前試合は、出なくてもいいものなんですか?」
たまらず口をはさんでしまった私である。
『いたのか』というような表情をして、彼は私のほうに顔を向けた。
「あっ、いきなりごめんなさいね。少し驚いちゃって。」
「ああ、いえ。選ばれることもないのに無駄だな、と思っていたところなので。」
「じゃあ、なぜここに?」
「今後、ソロでやっていくためです。エンチャント、回復、最低限のことは自分でできるように。」
― エンチャントって、なに?
質問したかったが、今はそこじゃない気がしたので、黙ることにした。
「・・・君、まさかとは思うけど、魔王に一人で立ち向かおうとしてないだろうね。」
「それも面白そうですけどね。さすがにそこまで奢ってません。」
― ・・・本当に?
自分の力がどこまで通用するのか、試そうとしてない?
光の勇者君は、御前試合を放棄しそうに感じる。
そうなると、闇の勇者君の思いは叶わないことになる。
マリアさんが感じた2人の距離感は、とても離れていて交わるところがないように思えた。




