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リュウ先生から容赦ない指摘を受けて、ぎゅっと手を握って俯いている闇の勇者君。
これを、ここから、どう立ち直ってもらって、またここに来てもらうかを、グルグル考えている私。
そして、そんな彼を厳しい表情で見つめているリュウ先生。
闇の勇者君を見て、思ったことが一つ。
彼は、本当はどうしたいんだろう?どうなってほしいんだろう?
実は、平和主義者だったりして、討伐なんか必要ないと思っているとか?
私は、意を決して聞いてみた。
「・・・あなたは、本当はどうしたいのかな。」
「・・・え?」
「魔王討伐のメンバーに選ばれたい?それとも、親友が選ばれてほしい?」
「それは・・・」
「決まり事だから仕方なくやるのかな。リュウ先生が言っていることは、そういうことじゃないかな。もし、心のどこかで『討伐には行きたくない』って思っていたら、無理しなくてもいいと思うの。だって、自分の命に関わることだもの。それは決して恥ずかしいことじゃないと、私は思います。」
― 私だったら、そんな危険なこと、絶対断ってるよ!!
自慢して言うことじゃないけど。
「僕は・・・あいつは・・・本当に凄いヤツなんです。僕が頑張ってようやくできることでも、あいつは、一度目にしただけで、自分のモノにできる。」
― キャロルさんが言っていた、『天才型』ってやつだね。
「今までも、あいつには勝てたことがありません。だから・・・今回もきっと選ばれるのはあいつで・・・。」
闇の勇者君は、苦しそうに、途切れ途切れに言葉を繋いでいる。
私もリュウ先生も、邪魔しないように、短い相槌を打ちながら、次の言葉を待つ。
「でも・・・だから、僕は・・・一度でいいから、勝ちたい、と思います。」
最後は絞り出すように、かすれた声だった。
「そう・・・。よくわかった。君は金髪の子に勝ちたいんだね。」
しばらくの沈黙の後、リュウ先生が闇の勇者君に問いかけた。
「はい。メンバーとか関係なく、勝ちたい、です。」
「御前試合で、全力で戦って討伐には行けないようなケガを負っても?」
「・・・はい。きっとこれが最後になると思うので。」
彼は、うなだれたまま、少し苦しそうな表情をして、ずっと手を握りしめていた。
― そっか・・・闇の勇者君は、ただ光の勇者君に勝ちたかったのか。
自分だけキャロルさん以外の特訓を受けて、なお負けたとなれば、ショック倍増だよね。
ますます実力の差をつきつけらるだけだもの。
しかも、負けたのに討伐メンバーに選ばれちゃったら、それこそ病んじゃうよ!
「このセンターでは、転移者が求めるものには極力応えるようにしている。そして、ここには魔法が得意な種族もいる。君が知識と技術を求めるのなら、それに応える用意はある。」
「・・・・・・それって・・・。」
リュウ先生の言葉に、闇の勇者君は顔を上げる。
「ただし、センターは中立であり公平だ。金髪の子が求めてきたら当然応える。その取捨選択は、自分でやらないと意味がない。時間もない中で、いらない技術を習得するヒマなんてないだろう?」
「はい。リュウ先生の言う通りです。」
「一週間、よく考えるといい。相手に勝つために自分に必要な技術はなにか。この短期間で使えるようにするにはどうしたらいいか。もう、自分がやるべきことは、わかるね?」
「・・・はい。ご指導ありがとうございました。今は・・・自分のことに集中します。」
「要望があれば教会を通して伝えて。用意しておくよ。」
「そうだ、これは、寝る前に飲んでくださいね。気持ちが落ち着きますから。」
私は、ハーブティーの袋を渡した。
もちろん、光の勇者君にも渡す予定のものだ。
「お二人とも・・・今日はありがとうございました。また来週もよろしくお願いします。」
私たちに向かって、深く一礼をして闇の勇者君は帰っていった。




