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三室で面接の予定だった闇の勇者君は、二室へとまた戻り、今度はリュウ先生の手ほどきを受けることになった。
私たち三人を出迎えたキャロルさんは、『ふふ、やっぱりね』と言わんばかりの顔をしていた。
そんなキャロルさんに、チラッと一瞥をくれたリュウ先生であった。
オシオキ部屋の二人を、キャロルさんと私がミーティングルームで見ている。
『地味だよ』とリュウ先生が言った通り、ほぼその場を動かない。
基本となる立ち方、構え方、拳の出し方などを丁寧に教えているようだ。
「へぇ~、体術ってあんな感じなんだ。サトはあれって見たことある?」
キャロルさんは興味深そうに見ている。
空手は、日本ではメジャーなスポーツの一つだ。
やったことはないけど、もちろんテレビで見たことはある。
「私はやったことはないけど、見たことはありますよ。道場もたくさんあって、子供の時から通っている人もいました。」
「小さい頃からなんて、凄いな!僕もリュウに教えてもらおうかな~。面白そう。」
― 本格的に興味持っちゃった!
キャロルさんが殴る蹴る・・・いやぁ~、それはだめぇ!
あ、でも、空手って、試合だけじゃなくて、踊りみたいな技を競う部門もあったはず。
ちらっとしか見たことないけど、キャロルさんの長い手足だったら、すごく映えそう!!
「キャロルさんが、秀才型だって言った意味、少しわかった気がします。」
「ふふ、そう?正直なところ、あの子の剣の才はあれ以上伸びないからね。だからといって弱いわけじゃないよ?本人がそれを一番わかっているから、別のもので補おうと必死なんだろうね。」
「金髪の子は、まだ伸びしろがあるんですか?」
「うん、あるよ。あっちの子はまだまだ強くなる。金髪の子の才能と黒髪の子の気質があれば、勇者どころか英雄にもなれたかもね。ほんと、残念だよ。」
「金髪君の性格が変われば、選ばれるのは金髪君になるんでしょうか。」
「どうだろうね。持って生まれた気質なんてそうそう変わるものじゃない。それに、選ぶのは僕たちじゃないから、実際どっちになるかはわからないよね。」
そんなことを話しているうちに、リュウ先生のご指導が終わったようだ。
「あ、終わったね。三室に戻るのも時間がもったいないから、ここで面接しちゃって。僕は失礼するから。」
キャロルさんはそう言うと、ミーティングルームから出て行った。
「お疲れさまでした。リュウ先生の指導はどうでしたか?」
「はい!とても勉強になりました。呼吸の仕方も姿勢の保ち方も全然違くて・・・。体術って凄い技術なんですね。」
― 地味だからってバカにすることもなく、なにかを見出そうとするその姿勢は、100点満点の優等生だな~。
「私たちの国で、武道と呼ばれる種類の一つだよ。心技体、すべての修練をすることが目的だ。礼節を学ぶために、幼い頃から道場に通わせることもあるからね。」
「ブドウ?初めて聞きました。一つっていうことは、ほかにも?」
「そうだね。確か、9種類くらいあったはず。私はその中の一つしか知らないから、他の武道は教えられないけどね。」
― そんなにあるんだ!
えっと、柔道、剣道、合気道、空手道と・・・あ、弓道とかも含まれるのかな?『道』が入ってるし!
残念ながら、そういうのに無縁な私にはそのくらいの知識しかないのである。
「9種類も!凄いな・・・幼い頃からそんな訓練を受けているなんて。」
「もちろん、全員じゃありませんよ?現に、私なんか武道とは無縁ですから。」
「え?リュウ先生とミサト先生は、同じ国から?僕たちのように?」
「同時にというわけじゃないですけどね。同じ世界からこちらに来て、このセンターで出会いました。」
「そんな偶然ってあるんですね。奇跡みたいだ。あ、それで・・・」
闇の勇者君の目線が、私たちの左手に移った。




