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キャロルさんの固有スキル『威光』が発動された二室のミーティングルーム。
私たちに向けられているものではないので、顔を上げていられるが、空気は重い。
― 容赦ないその言い方、まるでリュウ先生だ。
リュウ先生が女性になったら、あんな感じなんだろうなぁ。
・・・って、あれ?現実をつきつけるのは、リュウ先生の役目じゃなかったっけ?
キャロルさんがそれをやっちゃったら、リュウ先生の出番は・・・?
「まあまあ、キャロル君、そのくらいにしたまえ。」
マイケル先生の穏やかな口調に、ふっと空気が軽くなる。
さすがは人界のトップ、このくらいでは全く動じないらしい。
「君たちのいる国では、女性が剣を持って戦うことがないのかな?」
「え、ええ。その通りです。」
闇の勇者君がやっとという感じで答えた。
「そうかそうか。どうだろう、今から彼女と手合わせしてみないかい?それなら君たちも納得できるだろう?」
「・・・わかりました。それでいいか?」
「ああ。仕方ないね。」
闇の勇者君に問われた光の勇者君も、マイケル先生の提案に頷いた。
「君たちは魔法を使うの?」
「はい。僕は水と闇の魔法。こいつは火と光の魔法です。」
キャロルさんの質問に答えるのは、闇の勇者君である。
― 魔法って、見た目にも影響されるのかしら?
と思うくらい、見た目どおりの属性である。
「そう。君たちも知っている通り、ここでは魔法は使えない。だから純粋な剣技を見せてもらうね。それじゃ場所を移そうか。一人ずつおいで。」
そう言って、今度はフッと挑戦的な笑みを浮かべたキャロルさんが、颯爽とミーティングルームから出て行った。
その一挙手一投足が、いちいち美しくてカッコイイ。
これは性別なんて関係ない、惚れてしまう。
手合わせの場所は、あのオシオキ部屋である。
いつもとは違い、キャロルさんの玉座も机も何もない、ただの四角い部屋になっていた。
まずは、闇の勇者君である。
手合わせのルールを確認した後、二人の打ち合いが始まった。
力強く剣を振るう勇者君と、それを受け流すキャロルさん。
もちろん、真剣ではなく、模擬用の木製の剣である。
「・・・凄い。」
その様子を食い入るように見つめていた光の勇者君が、ポロリと呟いた。
― ほう、やっぱり凄いのか~。
剣道とかフェンシングとか、やったこともないので技術の凄さはまったくわからないが、キャロルさんに余裕があるのは、わかる。
ケリーさんが呼び捨てを許可するくらいだから、相当なんだろう。
5分もしないうちに、カランと音が響いた。
闇の勇者君の剣が、その手から落ちた音だった。
闇の勇者君は深く一礼をして、オシオキ部屋から出て行く。
それを見ていた光の勇者君の表情がぐっと引き締まり、ミーティングルームから出て行った。
「お疲れさまでした。どうでしたか?」
入れ替わりにミーティングルームに入って来た闇の勇者君に話しかけてみる。
体も温まって、緊張もほぐれたことだろうし、私が担当になるかもしれないので、いい機会だと思った。
「凄かったです。僕なんて全然相手にならなかった。ずっと遊ばれていました。・・・世界は広いんですね。失礼なことを言っちゃったな。」
私の問いかけにも、素直に答えてくれて、最後は、ちょっと若者らしいところまで垣間見せてくれた。
― うんうん、いい子や~。これなら、なんとかやっていけるかもしれない!
光の勇者君は、かれこれ5分以上打ち合いを続けている。
「・・・やっぱりあいつは凄いな。僕より長く打ち合ってる。さすがだな。」
闇の勇者君が、少し悔しそうな、寂しそうな、なんとも言えない表情で呟いた。
― 2人は親友だけど、少し力の差があるのか。
その力の差が、そのまま2人の距離感になっているのかもしれない。
討伐メンバーに選ばれ、のちに『勇者』と呼ばれるのは光の勇者君のほうになるのかな。
10分近くたった時、カランと音がして、光の勇者君の手から剣が落ちた。




