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「あ?ケヴィンじゃねーの。ここになんの用だよ。」
「そういうアズこそ、なぜ三室に?」
「なぜって、リュウに呼ばれたからに決まってんだろ。どこぞの聖女が、明日どっか行くんだろ。」
「やはりそうでしたか。レイさんが教会にいらっしゃったので、おかしいなと思ったのです。リュウ先生、あの聖女様は我々天界が関わっている方です。それならそうと、こちらに言っていただかないと。」
― リュウ先生、ケヴィン様に話を通してなかったのか。
『しばらく無視してやれ』って、リュウ先生までそうすることないじゃないの。
「これは失礼しました。先日ミサが相談したはずですが、門前払いされたそうで。安易にあなた方を頼るべきではないと思いまして、私の判断でアズ様に来ていただいたのですが。」
「そ、それはですね。少々行き違いが・・・」
「あぁ?なんだよ、どういうこった。」
リュウ先生の淡々とした説明に、アズ師匠も反応した。
― うわぁ・・・三つ巴とはこういうことを言うのだろうか。
いや、この場合は三すくみになるのか?
どちらにしても、このピリピリとした雰囲気の中で、明日の話し合いがまともにできるのかしら。
私、もう担当じゃないんだし、この場から失礼してもいいよね・・・。
その雰囲気にいたたまれなくなった私は、そっとその場を離れようと後ずさりする。
すると、アズ師匠が立ち上がり、私の腕をぐっとつかんだ。
「ミサト、ちょっとこっちに来い。どういうことか説明しろ。」
師匠はそう言うと、私を引っ張って隣の診療室へと私を引きずるように連行した。
「はい、一から報告。俺様にわかるように、5分で全部説明しろ。」
― 5分て!
私は頭をフル回転させて、これまでの経緯を説明する。
生命の危険が迫った聖女様を天界主導で保護したところから、昨日の顛末まで。
かなり捲ったけれど、5分以上かかってしまった。
でも、事細かに説明していたら、深夜までかかったと思うので、許してほしい。
「はあ、なるほどね。ケヴィンに追い返されたミサトが空回った結果、俺様が呼ばれたってワケだな。」
― ぐ・・・痛いところを・・・すべてその通りでございます。
「ぐぅぅ・・・。はい、その通りデス。」
「その時、どうして俺様に頼らなかった?」
「・・・・・・頼ろうかと思いましたが・・・。それが甘えだって指摘されたのかと思いまして。私が担当ならなおさら、まずは自分でどうにかしないと、と・・・。」
「はぁ~~~~、あのなぁ、お前だって聖女のこと言えないのわかってるか?」
「ハイ・・・・・・スミマセン。」
「そんなお願いで、俺様が塩対応するとでも思ったか?」
「いえ、まったく。」
「だろー?だったらな、こじれる前に最初から俺様を頼れ。これ言うの何回目だ?次にこんなことしたら、ゲンコツだからな!」
「はい・・・うぅ、すみません。ありがとうございます。」
― アズ師匠、お父さんみたい・・・あ、だめだ、泣きたくなってきた。
アズ師匠は、私の頭をポンポンと優しく叩くと、ニカッと笑って、
「お前の仇は俺様がとってやるから安心しろ。リュウもキレてるようだしなぁ。ヒヒッ。」
と、大変物騒なことを仰られた。
そのセリフで、こみ上げていた涙もスッと引っ込む。
「あ、あのアズ師匠・・・」
「そうだなぁ、ミサトちゃんはまっすぐお家に帰りなさい。もう担当じゃないんだし、別にいなくてもいいだろ。」
「だからって、さすがにそれは・・・」
「素直に俺様に頼らなったオシオキだ。はい、帰った帰った~。」
私はアズ師匠にグイグイと背中を押され、三室から追い出された。
抵抗したものの、アズ師匠に力で敵うわけがない。
しかも中からカギまで閉められる始末。
扉を叩いて叫んでみたが、反応もないので、仕方なく一人で自室に帰ることにした。
あの密室でいったい何が起こっていたのか・・・夜遅くに帰って来たリュウ先生は、その全容をとうとう教えてくれなかった。
そして翌日、聖女様は新しい国へと出発された。




