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翌日、エメラルドの聖女様の最後のご指導の日となった。
いったん新しい国へと行ってから、定期的にリュウ先生のもとへ通うことになるだろう。
リュウ先生は、ああ言ってくれたものの、実際に顔を見てしまうと、また先日のことがムクムクと思い出されそうで自信がない。
胸のあたりが少しモヤモヤするのは、ケーキの食べ過ぎだけではない、と思う。
昨日と同じく、天界の方に伴われて聖女様が三室にやってきた。
「おはようございます。今日もよろしくお願いします。」
ぺこりと頭を下げて、礼儀正しい、いつもの挨拶をされた。
レイ君と私も、同じように挨拶を返す。
レイ君が聖女様を調剤室へと案内し、今日のスタートである。
レイ君に昨夜のことを聞いたところ、どうやらアズ師匠のお店には行かなかったらしい。
新しい国へ行くとなって、準備やらなにやらで忙しかったのだろう、と思うことにする。
リュウ先生は、レイ君にアズ師匠の召喚を依頼した。
明日のお見送りの時に立ち会ってもらうためである。
そして、時は過ぎ、特に変わったこともなく、最後のご指導も終わりを迎えた。
いろいろと構えていた私にとっては、少々肩透かしをくらった感があったが、何事もなく終わるのならそれに越したことはない。
しかし、ここからが本番・・・さて、聖女様はどうするつもりだろうか。
調剤室からリュウ先生と聖女様が出てきた。
「「お疲れさまでした。」」
レイ君と私が、聖女様に一礼をする。
聖女様は、ぺこりと頭を下げた。
「聖女様、一週間大変お疲れさまでした。明日出発とのこと、落ち着いたらまたご連絡ください。」
「リュウ先生、ありがとうございました!近いうちにまたご指導よろしくお願いします。」
「わかりました。それでは、レイ君、聖女様を教会まで送って行って。私はこれから明日の打ち合わせがあるので、ここで失礼しますね。」
「ええ~、そうなんですか~。なんか残念です。せっかくお近づきになれたと思ったのに。」
― やっぱり変わってなかったか。
でも、先日より圧が弱まっている感じがする。
「それでは、僕が送りますね。聖女様、今日はお店に行きます?サービスしちゃいますよ!」
「ん~、明日出発なので、今日は大人しくしてます。次のお楽しみにとっておきますね。」
「えー、それは残念!次は絶対ですよ。それじゃあ行きましょうか。」
レイ君にエスコートされた聖女様は、嬉しそうな顔をして三室から出て行った。
― あれ、私には挨拶もないのかい!
・・・・・・ま、いいけどね、慣れてるし。
二人の背中を見送っている私の頭の上に、リュウ先生の手がポンと置かれた。
「リュウ先生、お疲れさまでした。あの・・・どうでしたか?」
「最終手段は発動しなかったよ。昨日、ジジィ神官になにか吹き込まれたのかもな。」
「そうでしたか。なら良かった。・・・私、いないことにされてたみたいですけど。」
「まぁ、そうむくれるなって。さて、そろそろアズが来る頃かな。」
「・・・・・・・・なんか納得できませんが、はい。」
朝とは別の意味で、モヤモヤしてしまった私であった。
しばらくすると、「来たぞー」とアズ師匠が三室にやってきた。
「よう、久しぶりだな。なぁ~、そろそろ女子会復活させね?」
「いらっしゃいませ。師匠、執務室とお部屋が大変なことになってるんじゃないでしょうね~。」
「そ、そんなわけねーだろ。ちゃんとミサトとの約束は守ってるぞ!」
― あ~やしい~。こりゃあ、相当混沌な部屋になってるとみた!
「本当ですか~?じゃあ、こっそり抜き打ち検査に行こうかな。」
「お、おう!いつでも来いや。受けて立つぞ!」
久しぶりのアズ師匠との会話に、モヤモヤもどこかに飛んでいくようだ。
「んんっ!お忙しいところわざわざ申し訳ありませんね。早速打ち合わせしたいのですが!」
「おーおー、男の嫉妬は見苦しいぞ、リュウ。それで、今回はどんな感じだよ。」
「そうですね・・・」
「ちょっと待ってください。」
打ち合わせが始まろうというとき、三室のドアを開ける音がして、調剤室にケヴィン様が現れた。




