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リュウ先生に手を引かれ、自室へと帰る。
今日はもともとリュウ先生は残業で、私の夕食はケーキだったので、買い物にも行っていない。
というわけで、ありあわせのもので簡単に夕食を作ることにした。
デザートのケーキも待っているので、いつもより軽めの夕食である。
「あの聖女様になにを言われた?」
食後のハーブティーを飲みながら、ほっと一息ついたところでリュウ先生が質問してきた。
「実はですね・・・」
そこで、前日のケヴィン様とのくだりから説明をする。
聖女様とのやり取りも、なるべく感情を抑えて、事実だけを伝えようと努めたが、うまく話せたかは自信がない。
きっと、言葉の端々に刺々しい感情が出ちゃっていたことだろう。
「そう・・・伝わってなかったとは思わなかった。」
がっくりと肩を落としたリュウ先生であった。
「きっと、同じ指輪をする習慣を知らなかったんだと思います。でも、それにしては頑なで、どうしようもなくて、つい・・・」
「ミサと俺のことは言っても構わないよ。隠してるわけじゃないから。」
「えっ・・・言ってもいいんですか?プライベートなことなのに?」
「同じ指輪つけてるんだぞ?それでわかる人たちもいる。それも一つの目的だし。」
― 確かにそう言われてたっけ・・・。
そういえば、指輪を付け始めてから、時間を過ぎてからのお誘いって激減したかも。
特にリュウ先生が。
「そうなると、明後日の見送りの際にはアズにも来てもらったほうがいいな。」
「やっぱり、手を煩わせることになっちゃいますね。これからどうしたらいいですか?引き続き私が担当しても?」
「ん~、彼女はもう患者の扱いではないから、面接は必要なし、でいいんじゃないかな。定期的に通いはするだろうから、俺が指導者として担当することになるし。」
― あー、ですよねー、また来るんだよねー。それに明日も来るんだよねー。
「明日もこれからも、彼女とはプライベートで接することはしない。それにアズがなんとかしてくれるさ。」
― そうだろうか・・・明日が最後だからって、泣き落としにかかるんじゃないだろうか。
はぁ~、とため息をついた私を見て、リュウ先生がフッと笑った。
「いよいよの時は、俺も最終手段に出る。だから、心配するな。」
― 最終手段?それって、前に行っていた睡眠薬でも使うの?
それなら、一度はお付き合いするってことじゃないのかしら。
「最終手段って、どういうものか聞いても?」
「いくらミサでも、こればかりは女性には言えない。ま、そんな感じ。」
― どんな感じ!
リュウ先生のことだから、相当ヒドイことを言うのでは・・・ここは触れないほうが賢明かも。
以前、二室のオシオキ部屋で見た光景を思い出した。
「聖女様、どうしてあんなに頑ななんでしょうか。」
「思い込みが激しい性格なのかもな。『そうなのかも』が『そうだ』って思うタイプかもしれない。ある意味前向きとも取れるか・・・しかし、悪意がないぶん、一番厄介だな。」
「なるほど・・・。真面目な方だし、責任感もあるし、間違ったことはしてないですね。ただ、話を聞かないだけで。」
「そういうことだな。まさかここまでとは思ってなかったけど。」
「リュウ先生でも、女性のことを全てわかるわけじゃないんですね。」
「当たり前だろ。人をなんだと思ってるんだよ、まったく。」
「え~、百戦錬磨の猛者?」
「なんだそれ。どこ猛獣だよ。ああ、誰かさん限定で襲い掛かるから、あながち間違いじゃないかもな。」
「わー、なにそれー、こわーい。」
リュウ先生に全てを吐き出して、胸のつかえがスッと消えた。
さすがは頼れる旦那様である。
今夜はスイーツ祭りをしなくても大丈夫そうだ。
でも、せっかく買ってきたので、リュウ先生と仲良くシェアして食べることにした。
「ああ、あとジジィ神官は、当分の間無視してやれ。天界の力が必要な時はケリーを頼れば事足りる。」
最後に、適切な?アドバイスが付け加えられた。




