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本日の聖女様たちへのご指導が終わり、ピンクの聖女様がレイ君にエスコートされ、アズ師匠のお店へと出かけていった。
「ミサトさぁん!今日はごちそうさまでしたぁ。また来週も来ますねっ!」と、可愛らしく手を振ってくれて、その笑顔についついホッコリしてしまった。
来週は、違うものを差し入れしようかな~、なんて思ってしまう私は、やっぱりチョロイのかもしれない。
レイ君と聖女様と入れ替わりに、天界の方がリュウ先生を訪ねてきた。
きっと、エメラルドの聖女様の旅立ちの日が決まったことを報告しに来たのだろう。
天界の方が三室を出ていかれた時、「ウチの拗らせ上司がご迷惑をおかけしました。申し訳ありませんでした。」と私に挨拶をしていった。
― 拗らせ上司?なんだそれ?
天界の方の言っている意味がさっぱりわからなかったが、ケヴィン様についてもいろいろと思うところがあるので、今は考えたくない。
就業時間を知らせるベルが鳴ったので、軽く片付けて帰り支度をする。
おっと、せっかくのケーキを忘れちゃいけない。
― 今夜の私の相棒・・・家ではもっと優しく食べるからね!
ミーティングルームに置きっぱなしにしていたケーキの箱を携えて帰ろうとした私を、リュウ先生が診療室で待っていた。
「帰ろうか。」
「帰るって、リュウ先生、夜のお仕事は?」
「1日2日残業しなくても回るくらいの仕事はしてる。当たり前だろ。」
日々の仕事をこなすのに精一杯で、明日の余裕なんてない私とは大違いである。
「え、でも・・・」
「本人が大丈夫って言ってるんだから大丈夫だよ。・・・それにしても、ミサ、お前どんだけ買ってきてんだよ。」
リュウ先生が、いつもより大きいケーキの箱を見つめている。
― あ・・・・・・バレちゃった。
「いやぁ、その、あはは~。見てたら食べたくなっちゃって~。」
「それ、今夜の夕食にするつもりだったんだな。で?何個食べたの?」
― げ、バレてらぁ。
「いやいや、まだ食べてませんよ?夕食後のお楽しみにと思って。」
「へぇ~。お楽しみに、ねぇ?その数を、夕食後に。それで?何個食べた?」
「・・・・・・2個です。」
「残りは3個ってところかな、ミサトさん。それ、夕食後に食べるの?本当に?」
― どうしてそれを!ぐぬぬ・・・。
「ミサトさん、ストレスに比例してケーキの数が増えますからね。今日は7個か・・・。なにがあった?」
ピンクの聖女様にお出ししたケーキが2個、ミーティングルームで見るも無残に食べられたケーキが2個、箱の中には3個残っている・・・正確に言い当てられた。
「・・・別に、なにもありません。自分の不甲斐なさにちょっとムカついてるだけです。」
ケヴィン様に塩対応されて、自分でどうにかしようとしてさらに事態を悪化させた挙句、結局ケヴィン様に助けられたこと。
途中から面倒くさくなって、『もう、どうでもいいや』と感情的になってしまったこと。
これでは、転移者の方のケアをする立場として、かなりいただけない。
しかも、担当は自分なのに!!
それよりなにより、エメラルドの聖女様との、あれやこれやも相まって、ムカつくし、虚しいし、悲しいしで、かなりグチャグチャになっていた。
「そうか。じゃあ、帰ってからゆっくり聞く。任せっぱなしにしてごめんな。ほら、帰ろう。」
― まさか、リュウ先生・・・仕事より私を優先してくれたんじゃ・・・。
嬉しいやら申し訳ないやら情けないやらで、グチャグチャだったのが、さらにグチャグチャになって、収拾がつかなくなってきた。
なにか、胸のあたりからこみあげてくるものがあったが、お腹に力を入れ、ごくんと飲みこむ。
リュウ先生は、俯いてしまった私の手からケーキの箱を取り、もう一方の手で、ぐっと私の手を掴んだ。
そして、リュウ先生に手を引かれ、家に帰った。




