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ケーキ店へと向かい、いつかジン様が言っていた宝石のようなケーキを眺めて、荒んだ気持ちを癒す。
各種類全て買い占めようとして、さすがにそれはマズイと思い留まり、半分くらいで勘弁してやった。
― うん、まだ理性は残っている。
しかし、ケーキ屋のご主人には、「あらあら」と苦笑いされてしまった。
また夫婦喧嘩だと思われちゃったかもしれない。
ケーキを買って、少しばかり気持ちが落ち着いた私は、そのまま三室へと戻った。
「ただいま戻りました。」
「ミサトちゃん、おかえり。どーだった・・・って、うん・・・お疲れ様。」
私の顔と大きなケーキの箱を見て、すべてを察してくれたレイ君である。
「聖女様、来てるの?」
「来てるよ。そろそろ休憩にしようと思ってて、今、お茶の準備してるとこ。」
なんてグッドタイミング。
「そうなんだ。丁度よかった。じゃあ、せっかくだからこのケーキもお出ししようか。」
1個や2個減ったところで、なんてことない数だもの。
きっと、ピンクの聖女様なら喜んで美味しそうに食べてくれるに違いない。
レイ君が休憩を告げ、ピンクの聖女様とリュウ先生が調剤スペースから出てきた。
「キャーッ、可愛いケーキがあるぅ!どうしたんですか、これぇ。」
「いつも頑張っている聖女様に、ミサトさんから差し入れだって。よかったですねー、聖女様。」
「ヤダー、ほんとにー?あーん、ミサトさんが優しい!ありがとうございますぅ~。」
ピンクの聖女様がやっぱり私に抱き着いてきた。
「いえいえ。疲れた時には甘いものが一番ですから。さ、どうぞ。」
― あぁ~、癒される~・・・どこぞの聖女様とは大違いだ。
比べちゃいけないのはわかっているが、どうか今日だけは許していただきたい。
聖女様は、本当に美味しそうにケーキを召し上がって、そしてまた鬼教官に連行されていった。
「ミサトちゃん、例の聖女様は今夜どうするって?」
ティーカップを片付けながら、レイ君が私に聞いてきた。
― あー、そういえばそうだった・・・。
ピンクの聖女様に癒され、ほっこりした気持ちが吹き飛んでいった。
「ゴハン食べてたら、ケヴィン様が迎えに来て一緒に帰ったから、どうだろう。行くとしてもお迎えはいらないんじゃない?」
「はぁ?結局ケヴィン様が迎えに来たの?」
「うん。受け入れ先の準備が整ったとかで、明後日新しい国に行くんだってさ。」
「また急だな~。それなら最初から三室に迎えに来いって話だよねー。」
― だよね、そう思うよね!
今更って思った私がおかしいわけじゃないよね。
「急に決まったみたいだし、準備とかで忙しかったんじゃないのかな。知らんけど。」
「・・・ミサトちゃん、室長センセーには黙っててあげるからさ、ミーティングルームでケーキ食べてきなよ。」
「え?帰ってから食べるからいいよ。」
「いいからいいから。美味しいうちに食べちゃいなよ。コーヒー淹れてあげるから、ね?」
― うう、レイ君が優しいよ・・・もう泣いちゃいそう。
「じゃあ、お言葉に甘えていいかな。いつもありがとうね。」
「うん、たまには素直に甘えてよ。・・・どうせ明日もあるんでしょう?」
「・・・・・・行ってきます。コーヒーよろしく。」
レイ君が淹れてくれたコーヒーを飲みながら、私はケーキを二つほどたいらげた。
可愛らしいケーキに、思いっきりフォークをぶっ刺してしまっていた。
せっかくの見た目が、見るも無残な形になってしまったのは言うまでもない。
三つ目に手をかけたところで、手が止まった。
・・・残りは、仕事が終わって自室に戻ってからにしよう。
どうせ、リュウ先生は残業で、夜遅くならないと帰ってこない。
自室に戻るまでに可愛らしいケーキを可愛らしく食べるくらいには、気持ちが落ち着くはず。
こんな気持ちでケーキを食べるなんて、ケーキに申し訳ない!!




