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すっかり冷めてしまった紅茶を前に、私は途方に暮れている。
リュウ先生がお付き合いしない理由に納得できないのは、私の説明が悪いのか?
私が、『リュウ先生は私のモノだから、近寄らないでくれる?』って言えば収まるんだろうか。
センターのスタッフの立場で、患者さんにそれを言っていいんだろうか。
・・・もう言っちゃってる気もするけど。
聖女様は、自分の使命やお仕事には、真摯に向き合っていたのは、これまでの話からも伝わる。
女神様に選ばれた存在であり、それに相応しくあろうと頑張ってこられた。
敬虔で、慎ましやかな『理想の聖女像』を押し付けられて、窮屈な思いもしてきたんだろう。
すべてにおいて、自分は選ばれて当然、とか思っていたのかな。
まあ、歴代の聖女様の記録を辿れば、そう思うのも無理ないか。
だから、王子様やリュウ先生が、彼女の気持ちに応えないのは周りのせい、になっているのかも。
となると、足元掬われようが、担当を外されようが、『夫に近づかないで!』と言ったほうが、聖女様も納得できるだろうし、手っ取り早い。
一番悪手な気がするけど、わかってもらうためには仕方ない、よし。
いよいよの時には、アズ師匠がいる。
言うだけ言って、どうにもならない時には、アズ師匠を頼ろう。
できれば、自分たちで解決したかったけどな。
私は覚悟を決めて、聖女様の次の言葉を待つことにした。
「ミサトさんの言うことはわかりました。」
― よかった、わかってくれた。
「自分で言うのもなんですけど、私、これまで無理をして頑張ってきました。」
「そうですね。お役目に真摯に向き合って、国のために力を尽くしていらっしゃいましたね。」
― それはよくよくわかっていますよ。
だから、女神様だってセンターの方たちだって、ザマァしたんだものね。
「自分から望んだわけじゃないけど、そういうものだからって全てを受け入れました。殿下と一緒になって将来の国母になることもです。」
― うんうん、ナニソレ設定のやつだね。
「幸い、殿下は聡明で、国民からも支持の高い方で、私に対しても優しく接してくださいました。」
― ほう、国民からも人気ということは、性格も見た目もイケメン様ということですね。
ちなみに、王子様情報を聞いたのは初めてである。
「そうだったのですね。」
「でも・・・もともと婚約者であった方に邪魔をされました。殿下との仲を引き裂いたのは私だと言われました。私のせいじゃないのに。」
「そうですよね。国の慣例に従ったことですもんね。」
「そのせいで、殿下もその方を優先せざるを得なくなりました。身分の高い貴族ですから、無碍にはできなかったんだと思います。私といるより、ご令嬢といる時間のほうが長かった。」
― ・・・それは、本当にそれだけの事情だったのかしら。
「結局・・・ミサトさんもそのご令嬢と同じってことですよね。」
― やっぱりわかってなかった!
・・・あれ?聖女様から見れば、同じなのか?
好きな人がお誘いに応じないのは、そこに『モトカノ、妻』という邪魔者がいるから。
邪魔者さえいなければ、お目当ての男性は、聖女様のお誘いに応えるはず・・・なのか?
・・・・・・ちょっと待って、こんがらがってきた。
その昔、会社の倉庫でテキトーに放り込まれて眠っていた延長コードを思い出した。
引っ張り出したのはいいが、絡まっていて、ほどくのに大変だったあの延長コード。
― もうだめだ・・・面倒くさい・・・。
先ほどの決意を実行しようとした時であった。
「ああ、こんなところにいらしたのですね。探しましたよ、聖女様。」
とびっきりのキラッキラの笑顔で、ケヴィン様が降臨された。




