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「でも、それってリュウ先生が可哀想。」
― はて、可哀想とは?
転移者の方との向き合い方にルールはないし、それぞれのやり方がある。
リュウ先生が自分で決めたことなんだから、文句を言われる筋合いはないのでは?
「可哀想、ですか?」
「そうよ。リュウ先生にだって恋愛の自由はあるはず。それなのに、ここに面接に来る人だからって気持ちに蓋をしてるってことでしょう?」
― それって、まるで転移者の方を好きになる前提じゃないのさ~。
「そう言われてましても、リュウ先生が決めていることだし、それに対して外野が意見するものではないと思いますよ。聖女様は、リュウ先生からなにか聞いてないのですか?」
「・・・『大切に思う女性がいる』って。」
― ほっ、ちゃんと聞いていたか。
「リュウ先生がそう言うなら、やっぱり難しいんじゃないかな。」
「でも、そういう台詞って、言い訳に使うことが多いじゃない。だから信じてない。」
― ずいぶんと都合のいい捉え方ですな!
言い訳だとして、聖女様のお誘いは受けませんって意志表示は全面無視かいっ。
「言い訳だって決めつけるのはどうでしょう。本当のことだとは思わないのですか?」
「だって、そんな人センターにいるわけないじゃない。」
― いるよ、目の前に!私だよ、私!!
はぁ~・・・これはハッキリ言ったほうがいいかなぁ。
「ミサトさんは、その女性が誰か知ってるんですか?」
「知ってるもなにも・・・それは私のことですね。」
― ああ、言っちゃった。
「・・・はあ?あり得ない。つくならもっとマシな嘘ついてください。」
― あり得ないって、ヒドイなぁ・・・地味に傷つくんですけど。
いやいや、ここで感情的になったら、相手の思う壺だ。
事実だけを、感情を交えずに、淡々と伝えなくては・・・頑張れ、私。
私は、聖女様の前に左手に嵌っている指輪を見せる。
「嘘じゃありませんよ。これと同じものをリュウ先生もつけているのはご存じですよね。私たちの国では結婚している夫婦は同じ指に同じ指輪をつける習慣があるんです。ですから・・・」
「え、じゃあなに?ミサトさんのせいで、リュウ先生と会えないってこと?」
「・・・プライベートではそうなりますね。お互い、そう決めてますから。」
― 時間外に対応する場合は同行するけど、これは言わないほうがいいだろう。
『じゃあ一緒に3人で!』とかなんとか言われそうだ。
「それって、あんまりじゃない?リュウ先生に自由がないってことじゃん。」
― 話が通じない、困った!
「それは、私たちが話し合って決めたことですよ、聖女様。」
「でも、それってミサトさんの嫉妬からくるものでしょう?」
― だから、お互い様だって言ってんだけどな。
二人でそうしよう、って決めたんだから、外野が口出すことじゃないっての。
「リュウ先生は、面接に来る方とはプライベートでは会わない方針で、加えて、お互い大切に思う人がいるから、プライベートでお付き合いすることはしない。これは、リュウ先生と私と二人で話し合って決めたことです。どちらかが一方的に押し付けたものではないんですよ、聖女様。」
― 頼む、これで伝わってくれ!もう、血管切れそう!!
・・・まさか、この調子で公爵令嬢様と渡り合ってきたんだろうか。
石を投げたくなったご令嬢の気持ちが、少しわかってしまった私も、断罪される側なんだろうか。




