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英雄と呼ばれる最強魔法師  作者: ヨッシー
入学編
19/25

上には上がいる

「入るぞ」


 顔を覗かせたのは担任の葛城だった。葛城は外にいる人たちに待っていろと指示を出して、部屋に入ってきた。


 葛城はテーブルの下にある引き出しからハサミを取り出し、手際よくタグを切っていく。切り終わるとハサミを元の場所に戻し、服を差し出してくる。


「服を着て、少し休んだら家に帰るんだぞ」


 彼はそう言って出て行った。



 俺は渡された服を着て、貴重品も身につけてからドアを開いた。ドアの前に立っていたのは、佐川さんと有馬さんだった。

 

 佐川さんは廊下だということも気にせず、頭を下げながら謝ってきた。


「さっきはすまなかった」


 俺はそんなところを他の隊員に見られたらと思い、ひとまず部屋に入ってもらうことにした。


「いいんですよ、佐川さんは謝らなくて。悪いのは僕の方です。ハンデをいらないと言ったのは僕なんですから」


「そうか。まあ、君がそう言うのならそういうことにしておこう。一応服は汚れていたから、クリーニングしてもらっておいた」


「わざわざありがとうございます。有馬さんも、非番の日なのにすみません」


「ううん、気にしなくていいよ。さっちんが困った顔をして、私の部屋に来たときはどうしようかと思ったけどね」



「ところで、ここはいったいどこなんですか?」


 俺の疑問には佐川さんが答えてくれた。


「ここは正規隊員が当直の時に使う部屋だ。医務室に連れてってもよかったけど、背中を少し打って気を失っていただけだから、そこまで大事にしなくてもいいかなと思って君をあすかと一緒にここに運んだんだ」


「そうだったんですか。いろいろありがとうございました」


「こっちこそ付き合わせて悪かったな。背中の治療はしておいた。担任の葛城さんにも事情は伝えておいたから、今日のところはもう帰ってもいいと思うぞ」


「はい、先ほど本人からも帰宅するように言われました」


「そうか、じゃあ気を付けて帰れよ」


 

 俺は部屋を出て素直に家に帰ることにした。


 俺は佐川さんとの対峙で一つ分かったことがあった。それは魔法の基本とも言える身体強化を俺がなめていたことだ。俺は魔法を誰かに教わった経験もなく、我流で今までやってきたので魔法構築に無駄があるのかもしれない。


 間違いなくあの時、佐川さんは身体強化しか使っていなかった。それでも俺は対応が遅れて気を失ってしまった。上には上がいる。


 これからも強い相手と戦えることに俺は武者震いが隠せなかった。



 黒川カイが帰った後、佐川と有馬は訓練生が無事帰ったのを見届けたので自分たちも帰ることにした。有馬がアメをなめながら携帯端末をいじっていると隣にいる佐川がぼやいた。


「あの黒川っていう一年、将来相当強くなるぞ」


「どうして?話を聞く限り、さっちんの一撃で気を失ったんでしょ」


「いや、実はちょっと違うんだ。彼はおそらく私が身体強化を使って攻撃したと思っているようだけど、あの時私は二つ魔法を使っていたんだ。一番最初に使ったのは私の得意魔法アクアブラインド」


アクアブラインド。水魔法の一つ。使用者の見える範囲で水滴や水たまりが存在する場合、自分が今いる場所からそこに瞬間移動できるという魔法だ。


「まず彼が瞬きをしたと同時にアクアブラインドを発動して、彼の後方に回り込んで魔法も何もかけずに剣を首のところで止めて終わりにしようと思ったんだけど、剣で彼がそれを防いだんだ」


「ええっー!?今までアクアブラインド止められたことないんじゃなかったの?」


「ああ。いままで戦ってきた強者にもいつ仕掛けられるかは勘や読みで分かる者もいたが、出どころまでは分からなくて今まで初見で私の剣を受け止められたのは、私の覚えている限りひとりだけだ」


「しかし偶然か狙ってかは分からないが、今日私の剣は彼に止められた。私はその時何が起こったのか一瞬理解できなかった。でも次の瞬間私は彼が訓練生だということも忘れて剣が交わった状態で身体強化を使っていたんだ。そして、次に気が付いた時には剣を薙ぎ払っいて彼が気を失っていたというのが本当のところなんだ」


「ふーん、珍しいこともあるもんだね。でもどっちでもいいや。もし彼に実力があるんだったら将来彼の面倒を見ることもあるだろうけど、B級どまりだったら関わることはこれからないからね」


 有馬はすでに帰路についた黒川に対して、冷たい言葉を残すのだった。










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