いざ、勝負
昼休みということもあり、訓練場には誰もいなかった。
「ハンデはいるか?」
「いえ、大丈夫です」
「そうか。それじゃあ始めるか」
「はい、よろしくお願いします」
俺たちは互いに十分な距離をとり、剣を構えた。佐川さんが剣を抜いた瞬間、俺は本能的に下手に相手の間合いに飛び込めば殺されると感じた。
俺はいつでも対応出来るように踵を浮かして、相手の些細な動きも見逃すまいと瞬きもせず相手を見つめ続ける。
数分後
(目が乾燥してきたな、瞬き1回ぐらい大丈夫だよね)
えい!瞬き
目を開けると
・・・!?佐川さんは俺の後方に回り込んでいて、横から日本刀が差し迫っていた。
考える間もなく俺は、反射的に片手剣を間に入れて何とか受け止めようとする。しかし、無理な姿勢で相手の攻撃を受けたためか、俺は数メートル後ろまで吹っとぶ。数回転がったところで止まり、腰に痛みを感じた。しかし今回みたいな機会を逃したら、次はいつめぐってくるか分からないと足を踏ん張り、立ち上がろうとする。だが、立ち上がれず俺の意識はそこで途絶えてしまう。
んっ!俺は見知らぬ部屋で目を覚ました。見渡してみると、そこは冷蔵庫とテーブル、クローゼット、そしてベッドがいくつかあるだけのシンプルな部屋だった。テーブルの上に少し荷物があるだけで、人が住んでいるには見えない。医務室みたいなところか。おそらく佐川さんが運んでくれたのだろう。
そういえば今は何時だろうかと確認しようとしたら、つけていたはずの腕時計がないことに気が付いた。あれ?他にも携帯端末とか家の鍵がない。俺はそこに並べてあったスリッパをはいてあたりを見渡すと俺の貴重品は、丁寧にテーブルの上に並べられていた。
確かに、端末や鍵がポケットに入れたままだと寝心地が悪いもんな気を使ってくれたんだろう。
ん?おかしい?訓練生用の制服が近くに丁寧に折りたたんでおいてある。ついでに男物の下着も
何か体がスースーする。
俺は自分の様子を下から確認する。うん、戦闘で打ったところはあざも出来ておらず、痛みもない。MFAの治癒魔法師のレベルの高さが伺える。いいことだ。
って、全く良くねえ。今自分は真っ裸だった。
誰も来ないうちに早く服を着ようと思い、服を手に取る。そしたら、タグが付いていた。
まさか、汚れたからって全部新品を用意したのか。
そんなことまでしてくれなくていいのにと思いながら、タグを切るためにハサミを探していると外から何人かの女性の声がした。
「だから、手加減しなって言ったじゃん。」
「いやハンデはいらないと彼が言うからな、つい」
「後輩相手に大人気ない、さつきは真面目すぎる。その子は見栄を張っただけだと思うけど、さつきはちゃんと実力を見極めるべき」
俺は焦る。どうしよう、どうしよう。
鍵を差し込み、開錠する音がする。ガチャ
ベッドに戻ってタオルケットをかけようと決め、走って戻ろうとする。しかし、普段スリッパを履き慣れてないからか俺は突っかかって転んでしまう。
こんなことになるなら、スリッパをはかなければよかった。ちょうどベッドを降りたところに、丁寧にスリッパは並べられていた。普段使っていなくても誰かが気遣って置いておいてくれたと思うと、はかないという選択肢は俺にはなかった。
扉が開き、誰かが覗き込んでくる。
俺は終わったと諦めムードに入ったのだった。




